「自動車メーカー以外が販売した車」は、かつて無印良品が販売した日産K11マーチがベースの「ムジカー1000」や、通販ブランドのディノスが販売したスバル レックスや日産K10マーチのオリジナル仕様「ディノスレックス」「ディノスマーチ」などがあります。

しかし、それらは全て「自動車メーカーに依頼して自社限定販売用に作ってもらった特別仕様車」であり、厳密な意味では自動車メーカーの車そのもの。

しかし、中には技術的な実証実験目的などで、少なくとも量産車は作っていない企業や団体が開発、場合によっては完成まで仕上げるケースも。今回はその中からいくつかの例を紹介します。

エリーカ(2004年・慶應義塾大学院電気自動車研究室など)

インホイールモーター式8輪駆動EV「エリーカ」(画像引用元:慶應義塾大学SFC大前研究室)

まだ未来の可能性に過ぎなかった近代的バッテリーEVの技術を飛躍的に高める目的で、慶應義塾大学を中心とした複数の企業体が「KAZ」(2001年)の成功を元に、より高性能と実用的を求めて開発された車です。

基本的には、各車輪へ組み込むというサイズの制約上、技術的に出力不足が避けられないインホイールモーター。その数を増やして高出力を得るため、KAZ同様のインホイールモーター8輪駆動車です。

370km/hに達する最高速で、当時のポルシェ911ターボすら凌駕する加速性能でEVの可能性を証明しました。一方で技術的ハードルをクリアする以前は奇怪で高コストにならざるをえない、インホイールモーター車の限界を示したともいえます。

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SIM-HAL(2014年・SIM-Driveなど)

SIM-Drive先行開発車第4号「SIM-HAL」(画像引用元:タジマコーポレーション公式HP内「SIM-Drive公式サイト」)

SIM-HALの開発には、市販に至らなかったエリーカの技術を元に、インホイールモーター式EVの研究開発のため設立された企業、SIM-DRIVEを中心に、複数の企業が参加しました。一連の試作EVで最後となった、4番目の先行開発車です。

新開発の超軽量・高効率インホイールモーターを独立制御する4輪EVで、高性能と安定性の両立を実現。また、見る者にインパクトを与えるデザインを特徴としています。

技術実証用コンセプトカーに留まっていた従来の先行開発車に比べ、格段に市販車レベルへ近づいていました。

エリーカ同様、結局は市販へ至りませんでしたが、SIM-Driveの技術は事業継承したタジマコーポレーションのSIM-Drive事業部へ受け継がれています。