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堂本剛でなければならない役がある 荻上直子監督作で27年ぶり映画主演の必然性

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『まる』©2024 Asmik Ace, Inc.

 堂本剛の27年ぶり映画主演の知らせを聞いて、胸が弾んだ。5月10日、堂本剛が荻上直子監督作『まる』に主演として出演することが明らかになった。本作は、部屋に帰ると床にいた1匹の蟻に導かれるように描いた○(まる)を発端に、日常が○に浸食され始める男を描く奇想天外な物語。『かもめ食堂』(2006年)、『めがね』(2007年)、『彼らが本気で編むときは、』(2017年)など素晴らしい数々の作品を手掛けてきた荻上監督だからこそ、堂本との初タッグで強烈な印象を残してくれるのではないかと期待が持てる。

参考:堂本剛、荻上直子監督作『まる』で27年ぶり映画主演

 堂本剛といえば、堂本光一とのデュオ・KinKi Kids以外にもENDLICHERI☆ENDLICHERI、剛紫、ENDRECHERIなど複数名義で活動するアーティストとして知られている。ファッションが好きで個性的な出で立ちをすることも多く、アーティスティックで天才肌なパブリックイメージを持つ。だからこそ「美大卒だがアートで身を立てられず、人気現代美術家のアシスタントをしている」という主人公に堂本剛を抜擢したいがために、荻上が約2年もの間、熱烈オファーを続けたというエピソードは大いにひざを打つ。独特のオーラを纏える人物こそが堂本剛なのだ。

 今でこそ音楽中心に活動する印象が強い堂本剛だが、1990~2000年ごろにはテレビドラマでの活躍も目立った。『金田一少年の事件簿』シリーズ(日本テレビ系)を筆頭に、『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系)、『向井荒太の動物日記 ~愛犬ロシナンテの災難~』(日本テレビ系)などが爆発的な人気を得ており、平成ドラマで大きな存在感を見せた。

 特に『金田一少年の事件簿』シリーズでは、ミステリアスな雰囲気の中、時にふざけ、時にカッコよくビシッと決める堂本剛に惚れ込んだ視聴者も多かったことと思う。本シリーズは今もなお堂本剛の後輩たちが金田一役を務めており、長く愛されるドラマシリーズとなっている。加えて『ぼくらの勇気 未満都市』では堂本光一とともに主演を務め、飄々とした性格と関西弁を喋るタケル役で作品を彩る。当時の強い人気に応え、2017年にはKinKi Kidsのデビュー20周年を記念した続編『ぼくらの勇気 未満都市2017』(日本テレビ系)がスペシャルドラマとして放送された。

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 映画においては『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』(1997年)で主演を務め、その後『ファンタスティポ』(2005年)で国分太一とのW主演、また『銀魂』(2017年)・『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018年)の高杉晋助役などを筆頭に、定期的に印象深いキャラクターを演じ話題を呼んだ。表現力豊かな堂本の芝居は、観る者を夢中にさせる魅力を持っている。また、『ファンタスティポ』のように作り込まれた美術や衣装の作品でもその世界に自然と溶け込んで存在することができる役者でもある。さらにセリフのテンポ感にも堂本剛ならではの独特のリズムが活きていることから、『33分探偵』シリーズ(フジテレビ系)ではそのセリフ回しにすっかり夢中になってしまう視聴者が多かった。だからこそ、今回『まる』では荻上の放つ独特な世界観を堂本剛がどう受け止め、表現してくれるのかが楽しみだ。

 『まる』の予告で使われた『ペール・ギュント』第1組曲「山の魔王の宮殿にて」はフリッツ・ラング監督の『M』(1931年)でも象徴的に使用された楽曲だ。この曲が醸し出す不気味な雰囲気と、堂本剛の飄々とした姿が、早くも興味を掻き立てる。堂本剛がつくる、「まる」に脅かされた世界が、人々を想像もつかない境地へといざなってくれることだろう。
(文=Nana Numoto)

 
   

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