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高山一実×西野七瀬のおじいちゃん役に衝撃! 『トラペジウム』が辿り着いた“光”の景色

Real Sound

『トラペジウム』©2024「トラペジウム」製作委員会

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は『アイカツ!』『ラブライブ!』『プリティーリズム・レインボーライフ』といったアイドルアニメにどハマりしてきた佐藤が『トラペジウム』をプッシュします。

参考:羊宮妃那、高山一実原作映画『トラペジウム』出演決定 初の劇場版アニメ声優に

「人間って光るんだって」

 “アイドル”を題材にしたアニメーションにおいて、キャッチコピーは最も重要な役割を持っているように思う。本作は、元乃木坂46のメンバーである高山一実による同名小説が原作。アイドルを目指す女子高生・東ゆうが地元の東西南北からメンバーを集め、4人組アイドルグループとして奮闘していく物語だ。

 自身もアイドルとして第一線で活躍していた人物の言葉だからか、「はじめてアイドルを見たときに思ったの、人間って光るんだって」のセリフが出てきた時の衝撃がすごい。これは本物のアイドルにしか見れない景色を肌で感じ、自分自身もその光を追い求めていたであろう高山にしか表現できない感覚だ。そして、「アイドルが放つ輝き」をテーマにした本作が、もっとも観客を世界観に引き込むシーンでもある。実際、作中ではこの“光”の演出にこだわりを感じる部分が多々あった。乃木坂46の公式YouTubeチャンネル「乃木坂工事中」にて公開された、メンバーの井上和と賀喜遥香が「CloverWorks」に潜入するという企画においても、本作のプロデューサーが「光の演出を意識して監督は作っている」と語っており納得。主人公が追い求めるアイドル像と直面するアイドルの闇、そしてこのキャッチコピーの3点を照らし合わせながら観てみると、より作品を楽しめるように思う。

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 タイトルの『トラペジウム』は、オリオン星雲の中にある4つの重星を指している。さらにこの星が不等辺四辺形をしており、どの2つの辺も平行でない四角形だというのがミソ。作品を視聴した後にタイトルに込められた意味について考えてみると、主人公・ゆうが結成したアイドルグループ「東西南北」のメンバーそれぞれが向き合う葛藤やすれ違いの演出の下敷きとして、「トラペジウム」が効果的に使用されているのが分かる。 また、本作には原作者である高山と乃木坂46の出身である西野七瀬が声優として参加しているのも見どころ。乃木坂46時代から“たかせまる”の愛称で親しまれていた高山と西野。そんな2人が演じているのが、まさかのおじいさん役だというのもなかなか面白い。

 アニプレックス公式YouTubeチャンネルで公開された、たかせまるコンビのアフレコ映像では、2人がおじいさん役を演じることになった経緯が語られている。高山は「グループ時代にどちらがおばあちゃんっぽくフレーズを言えるか2人で競っており、なーちゃん(西野)がすごく上手だったと思い出した」とコメントしている通り、予習なしの状態で本作を観た筆者は2人が声優として参加していることに気付かなかった。これから本作を観るという方も、2人がどこのシーンで登場するかに注目しながら観てほしい。

 ここで原作小説についても触れておきたい。雑誌『ダ・ヴィンチ』で2016年5月号から2018年9月号まで連載されていた同名小説。2018年には単行本化されており、翻訳本としても韓国・台湾版、中国語簡体字版も発売、累計発行部数は約30万部とベストセラーを記録している。元々“連載”として展開されていた作品だからか、映画ではやや強引に思える展開や省略されている部分があったかなという印象も。だが、やはり現役トップアイドルが書いた作品だけあって、“アイドルを目指す若者”の解像度の高さをすごく感じた。
 
 キラキラと輝く世界に憧れた主人公が、アイドルになって初めて気が付くキラキラしているように“見せている”アイドルの現実。アイドルに憧れ、夢を実現し、現実を見てきた高山にしか辿り着けない景色がそこにあった。本作は、夢を追い続ける全ての人にまっすぐ届く物語だ。
(文=佐藤アーシャマリア)

 
   

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