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結婚、仕事に悩むアラサー男女のリアルとは? 中国発のリーガルドラマ『マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則〜』

キネマ旬報WEB

中国発のスタイリッシュなリーガルドラマ『マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則〜』のDVD-BOX3が2024年5月8日にリリースされた。本作は『SUITS/スーツ』『グッド・ワイフ』のようにセレブをクライアントにする弁護士を主人公にして現代の中国社会を切り取ったキャッチーな作品。結婚や仕事に希望が持てないと感じる若い世代が増え少子化傾向にあるのは中国社会も同じ。今のアラサー男女はどんな生き方を理想的だと捉えているのか。ラブコメタッチのお仕事ドラマにリアルな社会的テーマを描きこんで国内外で大ヒットした話題作をひも解いていこう。

 

やり手の女性弁護士と元エリート男性が恋に落ちるまで

ドラマの舞台は近代的な高層ビルが建ち並びネオンが煌びやかな夜景を演出する一方、歴史ある西洋建築がレトロなおしゃれさを醸し出す大都市・上海。ハイブランドファッションで身を固めた34歳のヒロイン・秦施は、財閥やセレブをクライアントにする大手法律事務所の離婚弁護士だ。その事務所の代表を務める夫婦が開いた結婚アニバーサリー・パーティーには華やかな正装の人々が集まり、パートナー弁護士になる野心を抱く秦施も営業活動に余念がない。ところが、そんな彼女に想定外のハプニングが起こる。秦施がまだ誰にも紹介していない写真だけの夫、陽華が会場に現れたのだ。

実は秦施は独身なのに既婚のふりをして現在の事務所に就職し、夫も子供も海外にいるという設定でデスクにはネットで見つけた赤の他人の陽華の写真を合成したニセの夫婦写真を飾っていた。その嘘はこの2年間バレずにいたが、本物の陽華が偶然現れたことで秦施は窮地に。突然、陽華にキスしてその場をうまく取り繕った秦施は、陽華にこっそり事情を白状する。もちろん彼から“離婚”の公表を要求されるが、なんとか3日待ってもらう合意を取り付ける。

一方、28歳で実家に引きこもる独身の陽華がパーティー会場にやってきたのは、母親に押し付けられたお見合いのためだった。結局、お見合いをすっぽかしてしまった彼は翌日、母親を騙すためにSNSで“レンタル彼女”を募集する。すると、それに応じて待ち合わせ場所にやってきたのは秦施だった……。

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楽しいラブコメ&現代人の生き方を問うリーガルドラマ

本作の主人公・秦施と陽華は現代中国のアラサー世代を象徴したキャラクターだ。秦施が既婚者と偽っているのは、独身女性は結婚や出産をするかもしれない不確定要素があることを理由に敬遠されてしまい、出世が望めないと恩師から説得されたため。もちろん、職場に嘘をつくことには大きな迷いと葛藤があったが、今では仕事で成功するために必要な代償だと割り切っている。一方、陽華は優秀な成績で一流大学を卒業して金融マンとして働いていたがある出来事から退職。エリートたちの出世競争からドロップアウトしてほどほどの収入で自由に生きることを選んだ、近年中国で増えているという“寝そべり族”だ。そんな自慢の息子の凋落に焦りを隠せない母親は結婚さえすれば社会復帰してくれるはずだと考え次々とお見合いをセッティングするが、それにウンザリした陽華は自分の自由を守るため親に嘘をつくことにする。

こうして物語は、利害関係が一致した秦施と陽華がカップルのふりをして同居生活を送るという王道のラブコメ展開へ。ただし、仕事に忙しい秦施に代わって家にいる陽華が“お嫁くん”として家事を担当することになるのが今時の設定で、2人がいつしか本当の恋に落ちていくロマンスが繰り広げられることになる。

なお、このカップルが価値観の違いで喧嘩したり理不尽な社会に対する不満を共有したりする姿は、日本人の私たちにとっても頷けるポイントが多く、誤解やすれ違いを重ねながらも互いにいい影響を与え合って切磋琢磨していく彼らに共感できるはず。さらに、弁護士として口八丁手八丁で生き抜いてきた秦施が女性として真摯にセクハラ案件に立ち向かうことで新たな気づきを得たり、陽華が逃げていた過去の問題と向き合うことで自分の生き方を見つめ直したりする成長ストーリーも見応え十分。現代人の生き方を問う人間ドラマをじっくりと味わうことができる。

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