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脳死の13歳娘から腎臓提供を受けた父、複雑な心境を吐露も「あの子は私の中で生き続ける」(米)

Techinsight

病気知らずで女優になることを夢見ていた13歳のシマリア・グレンさん(Symaria Glenn)が今年2月、脳出血で亡くなった。家族はその後、シマリアさんの臓器を5人に提供することを決意。その中には数年前に人工透析を始め、腎臓が必要だった父親も含まれていた。命を繋ぐ臓器移植の話題を米ニュースメディア『USA TODAY』などが伝えた。

米フロリダ州ウェスト・パーム・ビーチに住む5児の父ショーン・グレンさん(Shawn Glenn)はここ数年、健康問題に苦しんできた。2019年に肺炎にかかり、その後腎不全と診断されたショーンさんは2020年、腎臓移植の順番待ちリストに名を連ね、子供たちには内緒で人工透析を受けてきた。

ショーンさんは、「実は腎不全と分かった時、愛する人たちから『腎臓が適合するなら協力したい』と言われてね。でも常に断ってきた。もし自分に何かあった時、周りのみんなには健康でいて欲しかったからね。それで亡くなった人から腎臓が提供されるのを待つことにしたんだよ」と明かす。

しかしながらショーンさんはすぐに、透析や病院の予約でこれまでのように働くことができなくなり、トラック運送業界での仕事を辞めざるを得なくなった。さらにアメリカでは、腎臓移植の順番待ちをしている人は10万人以上とも言われ、ショーンさんは「自分の時間が限られている」とひしひしと感じるようになった。

ところが今年1月31日、陽気で頑張り屋で健康だった娘シマリアさんに異変が起きた。シマリアさんは学校から帰宅して少しだけ宿題をすると、母ディーマ・マーティンさん(Dhima Martin)に「酷い頭痛がする」と訴え、一時は意識を失うなどして病院に運ばれた。そして同州ハリウッドのジョー・ディマジオ小児病院にヘリコプターで搬送されると、脳出血を起こしていることが判明し、容体は急激に悪化した。

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入院する前日には普通に学校に行き、放課後はバレーボールの試合に参加したそうだが、病院でのシマリアさんは脳が腫れ、すでに手の施しようがない状態だった。脳出血の原因については今でも分からないそうだが、家族は医師から脳死であることを知らされ、臓器移植について話をもちかけられると「命の贈り物ができれば」と苦渋の決断を下した。そしてショーンさんも、娘の腎臓を受け取ることに決めたのだった。

ショーンさんは娘から腎臓をもらうことは全く頭になかったそうだが、ディーマさんに「あなたの中にはいつも、あの子の一部が存在していることになるのよ」と言われ、一歩を踏み出す勇気が持てたという。

こうしてジョー・ディマジオ小児病院ではドナーに敬意を示す「見送りの儀式(オーナー・ウォーク、Honor Walk)」が行われ、家族は手術室の前でシマリアさんに最期の別れを告げた。シマリアさんが亡くなったのは2月3日のことで、6つの臓器が5人に提供された。

ショーンさんは娘の死後、24時間以内に腎臓を移植されたそうで、経過は順調だという。それでも「今も複雑な心境であることには変わりない」と明かし、次のように述べた。

「よく『腎臓が見つかってよかったね。おめでとう』と言われるんだけどね。彼らは代償の大きさを理解していないと思う。娘から腎臓の提供を受けたことに関しては、罪悪感だけでなく『自分が幸せになってはいけないのではないか…』と感じることがあるからね。」

「でも娘は私のヒーロー。今は『娘の一部が私の中で生きている』ということだけを考えて生きている。そう思うことで幸せな気持ちになるからね。」

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