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世田谷美術館で「民藝 MINGEI」展 柳宗悦「生活展」から “これからの民藝スタイル” まで

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 約100年前に思想家の柳宗悦が解いた民衆的工芸=「民藝」。世田谷区砧公園の世田谷美術館にて企画展「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」が開催中だ。

 昨夏に大阪中之島美術館からスタートし、福島、広島に続く4会場目となる「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」。民藝について「衣・食・住」をテーマにひも解き、暮らしで用いられてきた美しい民藝の品々約150点を展示。東京会場から、一部の染織品などの展示替えが行われている。

 さらに今に続く民藝の産地を訪ね、その作り手と受け継がれる手仕事を紹介。2022年夏までセレクトショップ「BEAMS」のディレクターとして活躍し、現在の民藝ブームに大きな役割を果たしたテリー・エリス氏、北村恵子氏(現・MOGI Folk Art ディレクター)による、現代のライフスタイルと民藝を融合したインスタレーションも見どころ。

 同展を監修した美術史家の森谷美保氏は「企画そのものは2017年から始まっているが、その後思いがけずさまざまな民藝展が開催された。民藝はいろいろな形で取り上げられたが、コロナ禍を経て生活を見直すタイミングもあったと思う。そんな中で改めて民藝展をどう構築するかと考えた時に柳の視点は入れつつ、いかに私たちの暮らしの身近に民藝があるのかをより視覚化して見ていただこうと作り上げた」と説明。

 会場は3章に分けて構成し、第I章「1941年生活展―柳宗悦によるライフスタイル提案」は、1941年(昭和16年)に柳が日本民藝館で開催した「生活展」の展示空間を再現したもの。モデルルームのような展示は当時は珍しく画期的だったといい、濱田庄司の《藍鉄絵紅茶器》など、実際に柳の自宅で使われていた品も展示されている。当時は展示品のチェアに座ることもできたという。

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 第Ⅱ章「暮らしのなかの民藝―美しいデザイン」は、柳らが集めた民藝の品々を「衣・食・住」に分類。「衣」エリアの《剣酢漿草(けんかたばみ)大紋山道文様被衣(かつぎ)》は、苧麻(ちょま)地に草花の刺しゅうを施した古い衣類を染め直し、被衣に仕立てた再生衣料。後身頃の白抜き部分にあえて鮮やかな花の刺しゅうを残すなど、細やかな手仕事をぜひ間近で見てほしい。「食」エリアには生活用品や台所用品、食器などを集め、「住」エリアでは初展示となる照明器具などにも注目だ。

1940年頃、羽前庄内(山形)の《刺子足袋》

 第Ⅲ章「ひろがる民藝―これまでとこれから」では柳没後の民藝運動の広がりを特集。最初に書籍『世界の民藝』(1972年、朝日新聞社)から、芹沢銈介美術館収蔵の世界各地の民藝品を展示。メキシコの《入れ子土鍋》では「あたかも玉ねぎの断面を見るようなおもしろさがある」との解説文を添えるなど、独自の視点からその魅力を紹介している。

 続いて「民藝の産地―作り手といま」で5ヵ所の産地と作り手の現在を取材、最後に「Mixed MINGEI Style by MOGI」でテリー・エリス氏、北村恵子氏が “これからの民藝スタイル” を提案。エリス氏が「生活の中で使いながら楽しむものという民藝のコンセプトを中心にしつつ、民藝から生まれたアーティストの仕事を混ぜることを意識した」というさまざまなスタイルをミックスした空間は大いに刺激を受けそうだ。

 併設された特設ショップには全国から選りすぐった民藝品がそろう。「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」は世田谷美術館 1階・2階展示室にて6月30日まで。開場時間は10時~18時(入場は17時30分まで)、月曜休館(ただし5月6日は開館、7日は休館)。

坂本工窯と坂本浩二窯の小鹿田焼[大分]

イギリス、18世紀後半-19世紀後半の《スリップウェア角皿》 首里(沖縄)、19-20世紀前半の《流水に桜河骨文紅型着物》 サンブラス島(パナマ)、20世紀後半の《双魚文上着裂(モラ)》 柴田恵氏作の鳥越竹細工[岩手] 小谷栄次氏作の倉敷ガラス[岡山]

「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」 【URL】https://mingei-kurashi.exhibit.jp/

 
   

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