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「守備が好きじゃなかった」サンチョがパリSG戦で見せた“成熟した姿”。マンUでは鳴かず飛ばずもドルトムントで躍動【現地発コラム】

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「守備が好きじゃなかった」サンチョがパリSG戦で見せた“成熟した姿”。マンUでは鳴かず飛ばずもドルトムントで躍動【現地発コラム】(C)SOCCER DIGEST Web
 どの選手がどのクラブに合うかはそれぞれだろう。クラブにはクラブのDNAがあり、アイデンティティがある。環境も求められるものも全く違う中で、自分らしさを見失わずに順応するのは簡単なことではない。

 例えばイングランド代表歴のあるFWジェイドン・サンチョはその才能を高く評価されながらも、イメージ通りにブレイクスルーをすることができないでいる。

 2017-18シーズン、マンチェスター・シティからドルトムントへ移籍してきたサンチョは4シーズンで137試合に出場し、50得点をマーク。その軽やかなドリブルと豪快にゴールネットを揺らす得点力、そして物おじしない少しやんちゃな性格をファンは愛した。20-21シーズンにはDFBカップ優勝にも貢献している。

 だが、プレミアリーグの強豪マンチェスター・ユナイテッドへの移籍で、世界的なスター選手になるというプランが現実のものとなることはなかった。まるでハマらず、苦しい時間を過ごす日々。そんなサンチョに救いの手を差し伸べたのがドルトムントだ。
 
 レンタル移籍で戻った古巣でまたかつての輝きを取り戻しつつある。ドルトムントのホームで行われたパリ・サンジェルマンとのチャンピオンズリーグ準決勝・第1レグ(1-0)でも、何度も果敢な仕掛けを披露した。
【動画】パリSGを沈める! ドルトムントFWの鮮烈弾
『opta』の統計によると、この試合でサンチョは12回のドリブル突破を記録。CL準決勝でのデータとしては、2008年4月のマンチェスター・ユナイテッド戦で当時バルセロナでプレーしていたリオネル・メッシが記録した16回に次ぐものだという。

 躍動感あるサンチョのプレーを見ながら思い出した話がある。元マインツ監督でドルトムントU-23監督時代にサンチョを指導していたヤン・ジーベルトの言葉だ。

「サンチョは17歳でまず育成選手として獲得されたが、当時すでに“ワンダーボーイ”みたいな感じで取り上げられていたんだ。若手選手にとっては簡単な環境じゃない。そうした選手にはこちらの想像以上の重荷が両肩にのしかかっているという事実を知ることが大切だし、そうした負担をとりのぞくのが必要になる」
 
 選手それぞれに背景がある。どこで生まれ、どんな両親のもとで、どんな環境でどのように育ってきたのかがまるで違う。センシブルな選手も少なくはない。そこを理解しようとする存在が周りにいるかどうかがとても大事なファクターとなる。

「例えば、ジェイドンはどこから来たのか? どんなリズムで暮らしているのか? 彼にとっての動力源となるものはなんなのか? それを考慮しなければならない。指導者としてエンパティをもって向き合い、彼という人間を理解しようとする。選手が指導者への信頼を感じてくれたら、地に足をつけて取り組むことにもつながるし、それぞれが自分のキャリアに挑戦していく中で助けになることができると思うんだ」

 熱を込めて語るジーベルトは、《サンチョにおけるサッカーへの動力源》について次のように話してくれた。

「ジェイドンはプレーへの喜びを持った選手だ。プレーすることを愛している選手だ。プレーインテリジェンスがあって、ボールをもって様々なプレーをすることができる。でも守備をすることは好きじゃなかった。何度も説明したよ。『いい守備ができるようになったら、もっといい攻撃ができるようになるんだ』って。『守備をすることには意味があるんだよ』というふうに話したんだ。でも、もし僕らが『ジェイドン、守備はしなきゃダメなんだ!』『守備をしないなら起用しないぞ!』というトーンで迫っていたら、彼はやる気を失っていただろう」
 
 いつまでも子どものままではいられない。いつまでも周りに守ってもらってばかりでは、そこから先の道を切り開くのは難しいかもしれない。プロ選手としてチームの戦術的規律を守れないのでは、チーム全体に迷惑が掛かってしまう。でも選手が抱えている心の悩みに耳を傾けることは、お互いにとってコミュニケーションを取るうえで欠かせない。ドルトムントにはそれがあった。

「いろんな選手がいるんだ。守備が好きな選手もいる。ボールを奪い取るのに喜びを感じる選手がいる。選手それぞれをインディビジュアルに見なきゃだめだ」

 そんなジーベルトの教えはサンチョの中に残っているはずだ。パリ戦でサンチョは何度も守備にも走った。ボール奪取をして、チャンスにつなげたシーンもあった。足を止めそうになる場面もあったが、すぐに心の弱さを振り切ってまた走り出した。パリ戦だけではなく、今後ずっとそうした成熟した姿を見せてほしいものだ。

取材・文●中野吉之伴

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