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【高校野球】春優勝の胴上げ投手となった武相の右腕 三上煌貴の涙が止まらなかった理由

週刊ベースボールONLINE

ようやくチームに貢献できた安堵感



武相高の2年生右腕・三上は決勝を141球、8失点完投で胴上げ投手。暑さの中でも、スタミナ十分だった[写真=田中慎一郎]

【5月4日】
春季神奈川県大会決勝(横浜スタジアム)
武相高9-8東海大相模高

 1点リードの9回裏二死満塁。武相高・豊田圭史監督は一塁ベンチをじっと動かなかった。マウンドを、2年生に託したのである。

 背番号11の右腕・三上煌貴は意気に感じるタイプだ。最後の打者を気迫の二ゴロに仕留めた。141球の熱投、8失点完投で、42年ぶり6度目の春優勝の胴上げ投手となった。

 ピンチでも冷静だった。「バックでは仲間が助けてくれる。落ち着いて投げることができました」。武相高には2つの合言葉がある。

「9イニング勝負」

「今までやってきたことを信じて、我慢強く、武相の野球で勝つ」

 2回戦から準決勝までの5試合で登板した投手は、エース番号を着けた右腕・仲間球児朗(3年)と4回戦と準々決勝で完投した左腕・八木隼俊(2年)のみ。三上は「秋もベンチに入れさせてもらいましたが、チャンスがなくて、この1試合、このマウンドに立ちたかった」と、相当な意気込みだった。昨秋の県大会で背番号1を着けながら、登板したのは初戦(2回戦)で先発したのみ。今春の登板機会を、心待ちにしていたのである。


球種はストレート、スライダー、フォークの3種類。制球力が抜群[写真=田中慎一郎]

 12安打を浴びながらも、とにかく、粘った。最速を聞くと「分かりません」と返答。球速で押すタイプではなく、コーナーに丁寧にボールを集める。変化球はカーブとフォークのみだが、コンビネーションが抜群。この日の四死球は故意四球を含めて2。結果的に無駄な走者を出さなかったことが、功を奏した。

 昨秋の体重は62キロ。同秋の公式戦敗退以降、冬場は「ひたすら食べました」。練習中の補食でもおにぎりを食べて、空腹の時間を作らないように工夫した。この春は70キロとなり、体重増がボールの質につながった。


クーリングダウンでは涙。さまざまな思いがこみ上げてきた[写真=田中慎一郎]

 歓喜の幕切れ、試合後の整列を終え、三上は一度ベンチに下がったが、再び、クーリングダウンのキャッチボールのため、出てきた。

 涙が止まらなかった。達成感と歓喜。ようやくチームに貢献できた安堵感。投手出身の豊田監督は「(準決勝では)次の日の調整のため、ブルペンで投げさせていました。素晴らしいピッチングで、たいしたもんです。八木、仲間を含めて今大会は投手陣が踏ん張りました」と目を細めた。今春は背番号11。もちろん、夏はエース番号の再奪取を固く誓う。

文=岡本朋祐
 
   

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