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幾多の困難乗り越え、スーパーGT初予選で鮮烈な輝き放ったGAINER Z。踏み出した第一歩……「真の完成形」に向けて奮闘は続く

motorsport.com 日本版

幾多の困難乗り越え、スーパーGT初予選で鮮烈な輝き放ったGAINER Z。踏み出した第一歩……「真の完成形」に向けて奮闘は続く(C)motorsport.com 日本版
 スーパーGT第2戦富士の予選、ピットアウトしていく1台の車両に大きな注目が集まった。デビューが遅れていたGAINER Zが、初めてファンの前で走行を果たしたのだ。

 今季からGT3車両のGT-Rに代わり、自社製作のZでGT300クラスに参戦することになったGAINER。詳細は後日紹介するが、彼らは関係各所との協議の結果、現在のGTA-GT300規定車両で主流となっているパイプフレームではなく、市販の量産モノコックをベースに車両を製作することになった。量産モノコックを使っての製作は時間も手間もかかるというが「人を育てられる」ことには多くのスキルを学べるというメリットもあり、決断に至ったという。

 モノづくりとして非常にチャレンジングな取り組みになったこともあり、GAINER Zのデビューは遅れた。シーズン開幕前の公式テストは欠席し、開幕戦岡山でも車両を持ち込みはしたが、走行することは叶わなかった。しかしその後岡山でシェイクダウンを実施し、ゴールデンウィークの富士に車両を持ち込むことができた。

 しかしその富士でもGAINERを苦難が待ち受けていた。搬入日に行なわれる事前車検で、車両の全幅が規定をオーバーしているという指摘を受けたのだ。

 これは過去にもGT300の複数のチームが指摘しているが、チームのファクトリーでの計測、そしてスーパーGTの車検場での計測では、その測定方法にも違いがあるため、大なり小なり誤差が生じるケースもあるという。エントラント代表でありチーフエンジニア、そして今回のZ製作を率いた福田洋介氏も、工場での測定精度に十分な自信を持った状態で車両を持ち込んだというが、「そういった誤差を見越して、寸法をそこまで攻めずに作らないといけなかったのかなとも思います」と振り返る。

 その後修正し、予選日の朝にもう一度計測したが、合格はならず。むしろ以前よりも大きくオーバーしているという結果が出たという。

「ピットの中で測ったからなのかは分かりませんが、それ以外の部分でもすごくズレが出て、『そんな数字あり得ないけど……』というような数値が出ていました」(福田エンジニア)

 結局GAINERは、午前の練習走行を欠席し、パーツを切ったり加工することで規定の全幅に合わせたという。福田エンジニア曰く、「カウルやフロアなど全て外して、切ったり削ったり穴を広げたりして、幅を詰めました」とのことだ。

 そうして晴れて車検に合格し、GAINER Zは予選に出走することができた。そしてQ1では、富田竜一郎が1分36秒484というタイムをマーク。これはA組の4番手タイムであり、Q1全体でも5番手。いきなりの登場でポールポジションも狙えるようなパフォーマンスを見せたのだ。

 その後Q2ではシフトトラブルが発生してしまい、ノータイムに。これによりGAINER Zは、規定により決勝ピットスタートとなる。なお予選後の時点ではトラブルの原因が判明しておらず、取材した18時ごろの時点では、チームのスタッフが原因を究明すべく慌ただしく作業をしていた。

 決勝に向けて苦難は続くが、それでも予選Q1で目の覚めるようなパフォーマンスを見せたGAINER。しかし福田エンジニアは「とりあえず転がって悪くはなかったので良かったな、くらいですかね」と冷静だ。予選一発のタイムだけでは、パッケージの競争力を測るのは難しいという考えもあるようだ。

「今年、レギュレーションでタイヤのセット数が削減された中で、一発のタイムが速いというのはあまりメリットがない状態になっています」

「結局はレースで強いかどうかになってきますから、この予選のタイムは『悪くなかったね』ということに過ぎません」

 GAINERは幾多の困難を乗り越えて、まず一歩目を踏み出した。ただ福田エンジニア曰く、車両はまだ“完成”していないという。

「まずは完成を目指さないといけません」

「まだこの状態は未完成です。例えばフロントにはサードダンパーが付いていますが、リヤはまだ付いていません。暫定の部品も多いので、まずは完成形に持っていきたいです」

 また来季に関してはタイヤにまつわる規定が変更されるという噂もあるが、GAINERはそういった来シーズン以降にもしっかりとパフォーマンスを発揮できるマシンを目指し、開発を進めていくという。産声を上げたばかりのGAINER Zの進化には今後も注目したい。
 
   

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