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『虎に翼』が描くのは男女の違いではなく制度そのもの “轟”戸塚純貴の突出したバランス

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 よしながふみの男女逆転『大奥』もそうだが、男女を逆転させたことで、女性が次第に男性の行ってきた強権をふりかざしたり権力闘争を行いはじめたりもして、問題は、男女の違いではなく、制度そのものなのだということがわかるようなことと少し似たアプローチを行おうとしているのではないだろうか。

 屈み女と反り男の具体例は、梅子と夫・大庭(飯田基祐)であろう。弁護士としては優秀そうな大庭だが、梅子を見下した言動をとり彼女の尊厳を奪っている。梅子が離婚を密かに計画し、そのためにも学んでいるが、その野心を見せず腰を低くして夫のふるまいを受け入れているように見せている。

 胸を張っている男性のなかにも前例にいっさいとらわれていない者もいた。轟である。バンカラないでたちで彼は一見居丈高だが、フラットな考え方をしていて、寅子たちに好意的。大庭が梅子をばかにした発言にも不満そうな顔をしていた。

 轟だけが、花岡の女性への態度はほかの男性たちの手前、偽悪的に振る舞っているだけだと見破っていた。同郷で昔から花岡を知っているからこそ、昔はそうじゃなかったのにと思って苛立っていたのだ。女性蔑視発言を「撤回しろ」「撤回しろ」と執拗に責めたのは、女性蔑視発言ももちろんだが、おまえはそういうことを言うやつじゃないという気持ちであったのだなあと感じる。

 轟の良さは、男性・女性と分けて考えず、あくまで人間として尊敬できるかできないかというものさしを持っていることだ。『虎に翼』では男性が一見優秀な人は尊大で、話のわかる人はやや頼りなく、帯に短したすきに流し的な人物が多いが、轟のようにバランスがとれた人物が現れてホッとした。

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 直言の贈賄容疑――共亜事件によって、人間の本質があぶりだされそうだ。そのとき、法はどのような力を発揮するのか続きが楽しみでならない。

(文=木俣冬)

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