ときに菅原孝標女、清少納言、紫式部に身をなぞらえて、ときに現代に生きる自分自身として、古えのことばで詠じた全122首の短歌集。※本記事は、かとう なお氏の書籍『四季の華』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
如月 二月
2A
夕暮れのいたう霞渡るほど、つらつき、いとらうたげなる若草の若紫の髪をかきなでつつ、この尼君、
◆ねび行(ゆ)かむ 行く末(すゑ)知らぬ 初草を 見送る露ぞ 見つる先無き
【現代語訳】
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夕暮れのひどく霞が辺りに掛かる時に、お顔付きがいかにも愛らしく、若い芽吹きの感じの若紫の君の髪を掻き撫でながら、この尼君の詠んだことは、
◆これから成長して大人になる将来のことは今分からない、この幼い孫の若紫の君だけれど、頼もしい成長を見届けるはずの自分は老い先短く、この子が人と成るのを見届ける将来はないのが、とてもつらく悲しいことです。
【参考】
・『源氏物語』の「若紫の巻」から着想した本書作者の創作。若紫は未だ幼女。
・つらつき~お顔つき。
・らうたげなり~いかにも愛らしい。