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「LINEマンガ」大ヒット中の国産webtoon『神血の救世主』原作・ネーム担当の江藤俊司氏に聞く、創作秘話

Real Sound

江藤:主人公だけじゃなく、いろいろなキャラを好きになってもらえる作品にしようと、初期にリリース予定だった話数が終わったあたりから意識するようにしました。キャラを丁寧に作るのは、昔からの横読みマンガの伝統ですよね。例えば、比良坂蓮爾(ひらさか・れんじ)は1話の段階からできる奴という感じを出して、最強のプレイヤーとして描きました。対して、22話では戦闘以外は何もできないという弱点を重点的に描いて親しみを持てるようにしました。

――そして、内容も少年マンガの王道的な展開ですよね。

江藤:主人公の新1年生が入学してきたら、上級生にめちゃくちゃ強い上級生がいて、相手を倒しながら進んでいくという、いわゆるヤンキーマンガのメソッドも取り入れています。そういった点は他のwebtoonの作品と違うので、新鮮味をもって読まれたのかもしれません。

■コメント欄を活用する方法

――先行配信されている「LINEマンガ」の特徴といえば、最後についているコメント欄が挙げられます。江藤先生はコメントをチェックしていますか。

江藤:『神血』に寄せられたすべてのコメントには目を通していますし、SNSでエゴサーチもしています(笑)。僕は1話の中に、キャラ、ドラマ、サービスなどをいかに配合するかと考えるのですが、『神血』だと透晴をいじめていた佐渡がいなくなる回は、厚めにドラマを創ったらコメント欄での反応が良くて手応えを感じました。キャラのセリフのこういうところが良かったとか、具体的な反応をしっかり見るようにしています。

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――読者の反応は創作の糧になると思いますが、なかにはネガティブな意見が寄せられることも多いのではないでしょうか。

江藤:無料公開されているときは露出が増えるので、普段より様々な、時には辛辣なコメントを頂くこともあります。でも、僕はそっちのほうがいいんです。一番困るのはリアクションがないことですから、肯定も否定もどちらも大歓迎です。否定的な意見を目にすると辛いと感じる作家さんもいらっしゃいますが、僕の場合は作品を自分と同一の人格だと思っていないので、ある種距離を置いた対応ができるのかも知れません。

■縦読みマンガの市場は拡大していくのか

――縦読みマンガのシェアは年々拡大していますよね。『神血』のヒットで、ますます市場が活気づき、横読みから縦読みにシフトしていく可能性はあり得そうです。

江藤:横読みも縦読みも両方やった立場から言うと、僕は両者が共存していくと思っています。もちろん、可処分所得や時間の奪い合いはあるかもしれませんが、スクロールして読んでいくwebtoonは横読みとは読後感が異なるので、まったく別のメディアだと思っています。

――なるほど。横読みと縦読みの両方を知る江藤先生が見て、webtoonのメリット、デメリットはどんな点だと思いますか。

江藤:webtoonはどうしてもスマートフォンのサイズに依存し、スペースに制約があります。同時に大量のキャラが出たり、視線を複雑に移動させるバトルマンガは構造上難しいですね。したがって、群像劇のような作品にはあまり向かないと思います。ただ、余白を長くして心情をじっくり描くとか、テンポのコントロールが横読みに比べるとしやすいメリットはありますね。

――視線誘導の仕方が、横読みはS字ラインでコマを読んでいくのが基本ですが、縦読みは上から下にスクロールするような感じですね。

江藤:僕は視認性と可読性が大事だと考えているので、読者にいかにストレスをかけないか、かなり意識して作品を作っています。『神血』も最初と比べると、表現の仕方が変わっていると思いますよ。今も、一画面にどれだけの情報量を入れれば読者が読みやすく感じてくれるのかと、模索を続けています。まだwebtoonは横読みのマンガよりも成熟していない分、表現の革命が起こる可能性は大いにあるとみています。

■webtoonの未来はどうなっていくのか

――とはいえ、従来のマンガファンには、まだwebtoonに抵抗がある人は多いと思います。

江藤:webtoonが登場したときは、若い読者が早く順応した印象があります。ずっと横読みに慣れていた読者からは、賛否両論の反応がありましたよね。ただ、今誰もが使っているSNSも、出たときには賛否ありましたが、いまでは当たり前になっています。同様に、webtoonに抵抗感を抱く人はまだ多いかもしれませんが、徐々に受け入れられていくと思います。

――そういう意味で、江藤先生は日本のwebtoonの開拓者になり得るわけですよね。

江藤:新しいことに挑戦させていただく機会に恵まれ、本当にありがたいと思っています。2021年のタイミングで、ナンバーナインに誘ってもらって良かったと思っていますし、そして今、『神血』で培ってきたノウハウをさまざまに取り込んで、『俺だけ最強超越者~全世界のチート師匠に認められた~』を作っています。試行錯誤を重ねて指針が定まってきたように思うので、今後はスタジオの柱になる作品を2~3本出すことが目標です。そして、日本発のwebtoonのひとつの指針を示したいですね。

――最後に、webtoonの可能性をどのように見ていますか。

江藤:演出面などで誰もやったことがない手法を発明できたら最高だな、と思います。今以上にめちゃくちゃ読みやすい演出が生まれたら、読者の裾野が広がっていくと思うんですよ。そして、webtoonのマンガ家になりたいと若い人たちから憧れられるような作品を作れたらいいなと思ってます。

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