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「体験格差」大人になったらどんな影響がある? 全国調査が明らかにした“ヤバい実態”

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■厳しいひとり親世帯の実情

  そんな状況でも特に厳しい状況にいるのがひとり親の世帯、それも母親がひとりで子供を育てているシングルマザーの世帯である。本書では不安定で低賃金な雇用に振り回され、夫のDVや昨今の物価高に苦しめられている子持ちのシングルマザーたちへのインタビューも掲載されており、その厳しい実態には「これ、さすがになんとかならんのか……!」と、やりきれない気持ちに。地元に映画館がなかった程度で文句を垂れてたのが、なんだか申し訳なくなってくる。

  最後には「体験の格差」を是正するための提言、そしてそのための実際の取り組みの例が掲載されている。子育てをしていて地元の子供達との間に自然と接点ができていることもあり、「大したスキルはないけれど、自分も地元の子供たちに何か体験を提供できないか」と考え込んでしまった。それほどまでに、本書の内容は重い。なんせ、地元に映画館がなかった程度のことすら、後々まで引きずるのだ。やりたいことを我慢せざるを得なかったという経験が、子供たちにどのような影響を与えるのか。想像するだに悲しく、そして格差が格差を再生産していくことが恐ろしい。

 いわゆる「親ガチャ」や「文化資本の有無」など、ネットでは感情的に語られがちなトピックをフォローした本でもあり、そういった点に注目した読み方もできる分、読んでいてつらくなる人もいるかもしれない。しかし、あくまで本書は実地調査に基づいて書かれたものであり、筆致は至って冷静だ。子供の育ち方や文化資本とは何かを考える上で、議論の出発点として必読の一冊と言えるだろう。

(文=)

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