〈餃子を食べるときの口の中というのはこういう感じじゃないか〉と冗談混じりに言いつつ、絵の中の文字や色の並びの味わいを楽しむ「料理的鑑賞」をしてみる。精神分析家のジャック・ラカンが「不快かつ快」の状態であることを指した「享楽」の概念を当てはめ、わかろうとすることへの裏切りを楽しむ作品の一種と位置付ける。汚れたような色彩を多用するのはなぜか、戦争との関連性や作風など作者個人に着目してみる。
著者の思索は、『Summer Rental + 1』の秘密を探る推理物のようにも読める。そして何より、一つの作品が鑑賞者の自由な解釈により変身を重ねながら、後世に残っていく。その過程を目撃しているような感覚にもなる。