調査の対象者は次の通りです。
- 観光関連事業者
- 自治体
- DMO
- DMC
- 観光協会
- 非営利活動法人
- 営利活動法人
新たに注目されている「高付加価値旅行」
第2回の調査では、「高付加価値旅行」が選択肢に追加され、旅行・観光関連コンテンツの新規開発で35%と最も人気がある結果となりました。広告の後にも続きます
「高付加価値旅行者層」は旅行者全体の1%程度ですが、消費額でみると全体の14%を占めています。これは、コロナ後の国内旅行やインバウンドにおいて、量よりも質を重視する方向へとシフトしていることがうかがえます。
日本政府観光局(JNTO)や行政機関、自治体なども対策の強化へ動いていることから関心が高まっているようです。
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前回と同様に関心が高い「サステナブルツーリズム(持続的な観光)」
「サステナブルツーリズム(持続可能な観光)」は28%で前回とほぼ同じ得票率のため、変わらず関心が高いコンテンツだといえます。SDGsに関する施策が世界的に注目されている今、日本政府も持続可能な観光に向けて、さまざまな取り組みや支援を行っています。そのような背景から観光庁は3月18日、宿泊施設向けに「持続可能な観光」の取組事例集を公開しました。
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日本でしか体験できない“コンテンツの多様化”を推す声も
高付加価値旅行やサステナブルツーリズムの他に、「ガストロノミー(美食・食文化)」や「アドベンチャーツーリズム」、「酒ツーリズム」への関心も引き続き高くなっています。
また自由記述の回答では、アニメツーリズムやZEN(禅)といった日本独自の文化体験への関心も見られ、今後の旅行コンテンツの多様化が期待されています。
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インバウンドにおける重点市場の変化
日本政府観光局(JNTO)が発表した3月の訪日外客数は308万1,600人であり、月間300万人超えは史上初です。国・地域別の訪日外客数を見てみると韓国・台湾・中国の3ヶ国が約半数を占めており、日本のインバウンド市場においてアジア地域の重要性が示されています。 ▲国・地域別の訪日外客数:日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計より訪日ラボ作成アジア地域の現在と将来
前回の調査に続き、インバウンド観光客の最も重要な市場として回答が多いのは台湾(45%)です。前回の38%から増加しており、さらに重要度が増しています。また前回の調査で中国は11%と回復が遅れている様子でしたが、2023年8月に海外旅行制限措置が撤廃されて以降は数値も戻りつつあります。今回の調査では25%と大幅に改善されており、中国からの訪日者数が順調に回復している様子がうかがえます。
将来的な受け入れ強化については、前回の調査と同様に韓国や香港などの東アジア、東南アジア諸国といった回答が多く見られました。
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欧米・その他地域の現在と将来
北米と欧州からのインバウンド観光客の受け入れは、前回より拡大している傾向が見られます。円安の影響を受け、欧米からのインバウンド観光客が増えたことも一因だと考えられています。また前回と同様に、回答者の46%は「今後新規にインバウンド観光客の受け入れを強化する予定の特定の国や地域がない」と回答しました。現時点では重点市場の設定をしていない、国・地域を問わないという傾向が続いているようです。
インバウンド観光客受け入れの現在と将来
第1回の調査では、インバウンド観光客受け入れの課題として、主に「人手不足・人材不足」が指摘されていました。3月の訪日外客数は300万人を突破し、今後もインバウンド観光客の増加が見込まれる中で、課題解決に向けた努力が引き続き求められています。
最大の課題「人手不足・人材不足」
前回に続き「人手不足や人材不足」がインバウンド観光客の受け入れにおける最大の課題ですが、前回より8%減少しています。ただし、それでも56%で依然として1位であり、まだまだ課題として残っています。人手不足の要因を見ると、前回と同様に「待遇の改善」が1位となりました。「労働環境の改善」の28%への減少(前回39%)をはじめ「観光業界の魅力が乏しい」「離職率が高い」などが前回より改善されています。一方で「就職希望者が少ない」は42%(前回36%)に増加し、将来的な人材不足の懸念が高まっています。
また職種を分析すると、全体的に顧客向けのサービススタッフ不足が顕著でした。インバウンド観光客の増加に伴い、「多言語対応スタッフ」(29%→40%)、通訳案内士(16%→27%)が前回より大幅に増加し、人材について多言語対応が喫緊の課題であることがうかがえます。
新たに見えてきた課題
今回注目するべき新たな課題として、「二次交通の整備不足」が挙げられます。調査結果によると、前回より9%増加しています。要因として、ライドシェア・観光型複数MaaSなどへの関心の高さとも連動していると考えられます。またそれ以外にもインバウンド観光客の受け入れ再開に際して、次のような課題が挙げられています。
- 情報発信先へのアプローチ方法の不明瞭さ
- オンライン予約の台頭
- 認知度不足
- 従事者の高齢化
第1回からの課題は改善されたのか
インバウンドの受け入れにおける課題については「解決に向かっている」と回答した事業者は22%にとどまっています。一方で「未解決のままである」と回答した事業者は64%にものぼり、前回の調査から状況の改善が見られません。すなわち64%の回答者は、過去半年間のインバウンド受け入れに関する課題が解決していない状態です。
この停滞は今後の高品質な観光地づくりに影響を及ぼす可能性があり、引き続き課題の解決が急務であるといえます。
観光立国実現のための条件とは
前回の調査と比較すると、「外国語対応スタッフの雇用」に改善が見られました。しかし、前回の調査と同様に「人手不足・人材不足」の解消が最大の難所であり、「二次交通の整備」の重要性も上がっています。またインバウンド観光客の受け入れをさらに伸長させていくにあたり、重要かつ効果的だと思われる条件として「自治体広域連」「観光DX推進」「オーバーツーリズム解消」「観光インフラ整備」など、国や自治体の取り組みに期待する声が増えています。
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観光事業者のコスト上昇について
物価の上昇などの影響で、2019年と比較してコスト上昇を価格に反映させた企業は、観光事業者全体の58%を占めています。これは前回の41%から大幅に増加しています。また前回の調査では価格に反映済みの輸送事業者は19%でしたが、今回は51%まで増加しています。
価格への反映をするに至った理由は、主に「仕入れコストの上昇」「水道光熱費の上昇」ですが、一定の減少が見られます。しかし「人件費」は微増となり、引き続き人材確保に課題があることがコスト面からもうかがえます。
第2回調査では「大阪万博」への期待値の変化も明らかに
第1回の調査では、大阪万博をきっかけにしたインバウンド観光客の誘致について考えている回答者は、全体で32%にとどまりました。一方で関西を拠点とする事業者の場合は関心度が高く、活動拠点によって意識の差が現れた結果となりました。しかし今回の調査では、関西を拠点とする事業者の関心が7%減少しており、拠点にかかわらず万博自体への関心度が減少している傾向が見られます。
また前回の調査と同様に、半数以上の回答者が大阪・関西万博を契機に日本と海外の国際交流を推進する予定や計画を特に検討していないことが明らかとなりました。
「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査」の第3回は7月に予定されており、インバウンド観光客受け入れの課題や大阪万博への関心について、今後の変化に注目です。
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