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森田想インタビュー 俳優がその役を演じることで化学反応を起こすと監督が信じた『辰巳』

otocoto

――小学1年生の頃から芸能界で活動をされているのですね。

最初の頃は、小学生なので広告などが多かったですね。中学生くらいからお芝居をやれるようになりました。あの頃は照れっ子(照れ屋)でしたね。あと、テレビでドラマをもの凄く見ていたんです。それこそ『トワイライト~初恋~』(2008)は小学生の頃に観た洋画です。なので、その頃から芝居に対する興味はあったのだと思います。

――小学生ですでに洋画を見ていたとは素晴らしい!その当時、演じてみたい役とかありましたか。

それは、無かったですね。あの頃は想像出来なかったです。最初は、それこそ誰かの幼少期をたくさん演じさせて頂きました。それから段々と制服を着た役を演じるようになりました。それこそメインの方の傍に居る役とか、クラスメイト役などです。やりたい役というよりは“撮影に行きたい”という気持ちの方が強かったです。

――現場が好きだったのですか。

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現場が好きでした!次第にメインじゃないことだったり、シーンの短さで悔しいという気持ちも芽生えましたけど、最初の頃は楽しいという気持ちでやっていました。

――一番の転換期はいつですか。

子役事務所から今の事務所に移った時期、中学3年生の頃が転換期だと思っています。ちょうど映画『ソロモンの偽証』(2015)をやらせて頂いて、そこで厳しさなど全部知った感じです。やるにはしっかりと覚悟を持たないといけない、それを踏まえたうえで“やっぱりやりたい”とその時点で思ったんです。

映画『ソロモンの偽証』は、同い年の俳優でオーディションを受けて居ない人はいないくらい幅広くオーディション告知された作品だったんです。生きている全員が受けていたくらいの印象ですかね(笑)。本当に皆が受けていたんです。その中から少なからずも選ばれているから“誰にも演技で負けたくない”と思ったんです。そう思わないと演じられなかったので、性格が変わったというか、強くなったんだと思います。

――悔しくて泣いたりしたことは。

あります!悔しくて学校を休みました。

――それでも“まだやれる”と思われたのですね。

映画『ソロモンの偽証』で出会った友達とその日の撮影が終わるたびに「お前も良かったよ」「いや、お前も良かった」とお互いに褒め合っていました(笑)。今も皆で褒め合って生きています。だから心強かったです。

――成島出監督とはその後お会いしているのですか。

『ソロモンの偽証』チームでお花見をしています。その時、成島監督とはお会いしていますし、『アイスと雨音』が東京国際映画祭で選ばれた時は「おめでとう」という直筆の手紙と一緒に大きな花束を贈って下さいました。それで、「優しいです」と成島監督にメールしました(笑)。

――そう考えると本当に長い年月、芸能界でお仕事しているんですよね。ちなみに今の自分に対して満足度はどのくらいですか。

実は最近まで自分に満足していたのですが、満足しなくなってしまったので、今はZEROです。一周まわった感じです。私の芸能界でのお友達は『ソロモンの偽証』からの友達が多くてもう10年ぐらいの友達歴なんですけど、その子達と話している時に「足りなくなってきたよね」という話になったんです。大学にも行かないで、人より早く社会に出て、皆が子役からやっているので一通りやり尽くした感じがあるんです。学生モノのエキストラもやりましたし、メインキャストも出来るようになり、そしてメインキャストを支える脇の役も出来るようになりました。やり尽くしてしまったんです。だから後は違うフェーズに行かないといけない期間というか。だから今は吸収しないといけない、勉強し直さないといけないという話をしました。足りてない感じがしています。

――違うフェーズとは何ですか。

ひとつレベルを上げること。同じことをするにしても、今までと同じことをするのは駄目だという感じです。技をつけないといけないというか、次のステップに行かないといけない感じです。「全部やり尽くした」というとおこがましいかもしれませんが、本当に色々とやったので‥‥。これからも色々な役を演じるうえで、例えばキャラクターの肩書的に【学生】という役をこれからも演じていくなかで、今までとは違う戦法でやっていこうという感じです。先日、友達と会って悩みを話した時に、友達から「自分たちは一周まわってしまったから、そう思うんだよ」と言われて納得したんです。

――役者(演じる事)以外にしたいことはありますか。

「役者以外のことをしたい」という友達も居ます。でも私は映画や映像に関しては、演じることが好きなので、作る側にトライしたいとは思ってないんです。それは変りません。何て言えばいいのかな‥‥、演技をより楽しむようにしたい。例えば、これまでは脚本に書かれていることだけを演じていればいいと思っていたとしたら、自分の中の癖を足してみる、あるいは逆に消してみるなど足し引きをする期間だと思っています。社会的にプロデュースが出来るような地位になっていないですし、まだもう少し自分的には下積み期間だと思っています。

――演じることへの探究心、なんですかね。では演じること以外での楽しみは何ですか。

買い物!お洋服が好きなので(笑)。あとはお外に出ますね。友達と遊ぶのもそうですし、お外に出て買い物をしたり、お日様にあたるだけで楽しめます。それは欠かさずやらないと、わりと気分が落ちるタイプなので、撮影とかを万全に出来るように、お日様に当たるとか些細なことですが欠かさずにやっています。

東京国際映画祭の上映時のティーチインが面白かったので、あの時の様子をYouTubeで見ているという森田想さん。撮影中は皆と楽しんで演技をしていたと聞くと、和やかな現場だったことが会話からも伺えます。説明セリフもなく、彼らの過去を想像するには、会話の節々から読み取るしかない削ぎ落とした脚本から、俳優がその役を演じることで化学反応を起こすと監督が信じた映画『辰巳』。森田さん演じる【葵】についても口調や立ち振る舞いから生育環境を想像し、彼女の未来が幸せであって欲しいと願っていたのでした。

取材・文 / 伊藤さとり
撮影 / 奥野和彦

ヘアメイク:齋藤美幸
スタイリスト:入山浩章

作品情報 映画『辰巳』

裏稼業で働く孤独なヤクザの辰巳は、ある日元恋人・京子の殺害現場に遭遇する。一緒にいた京子の妹・葵とともに命からがら逃げる辰巳だったが、最愛の家族を失い、復讐を誓う葵は京子殺害の犯人を追う。葵に振り回されながらも彼女を助ける辰巳は事件の真相に迫っていくのだが‥‥。

監督・脚本:小路紘史

出演:遠藤雄弥、森田想、後藤剛範、佐藤五郎、倉本朋幸、松本亮、渡部龍平、龜田七海、足立智充、藤原季節

©⼩路紘史

公開中

公式サイト:tatsumi-movie-2024

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