主将として喜びを口に
東大との開幕カードを制し、試合後、田中監督[右]と主将・宗山[左]は「1勝」のポーズを見せた(写真＝矢野寿明
【4月20日】東京六大学リーグ戦(神宮)
明大21－2東大(明大1勝)
明大は今春、ホーム＆ビジターのユニフォームを導入した。一塁ベンチではお馴染みのアイボリーを着用し、三塁ベンチのカードではグレーが44年ぶりに復刻された。
スポーツ用品店を経営する野球部OBから提案があり、今年1月の明治大学野球部OB会「駿台倶楽部」、東京六大学野球連盟の承認を経ての採用となった。前回のグレーは、かつて明大を計37年率いた島岡吉郎元監督の考案。前年まで総監督だったが、大学創立100周年を控えた1980年に復帰。春の開幕前の米国遠征をグレーのユニフォームで実施し、現地のオープン戦で結果を残した。縁起を担ぐのが御大の性格で「これで行くぞ！」と、リーグ戦でも継続。同春のリーグ優勝、全日本大学選手権も制した。1年限定で翌81年にはアイボリーに戻した。東京六大学では1960年代、連盟活性化を目的に、ビジターユニフォームを採用した例がある。
三塁ベンチを使用した東大1回戦で初お披露目。明大が21対2で先勝した。主将・宗山塁(4年・広陵高)は喜びを口にした。
「自分たちの代の初めての勝利ですし、選手たちも神宮でいつも通りの動きをしてくれた。まだ、10勝の中の1勝だと思うので、これから一戦一戦、戦っていきたいと思います」
2回表の明大の攻撃は14得点のビッグイニング。宗山は1イニングで2本の適時打を放った。写真は第3打席のタイムリー[写真＝矢野寿明]
不動の「三番・遊撃」で1試合フル出場。6打数2安打2打点とチームの勝利に貢献した。守りでも軽快な動きを見せ、周囲を安心させている。
「今季絶望」の淵から、驚異的な回復を見せた。2024年の対外試合初戦となった2月29日のオープン戦(対明治安田生命)で、右肩付近に死球を受けた。井端弘和監督が指揮する侍ジャパントップチームに招集されており、欧州代表との強化試合(3月6、7日)へ向けて、コンディションを上げている最中のアクシデントだった。侍ジャパンに合流し、5日の公式練習にも参加したが、その後の診断により右肩甲骨骨折が判明。強化試合を欠場し、帰京した後に、再度、診察を受けると、同じ診断結果で「全治3カ月」となった。
田中監督は「戦力として、考えていない」と、戦力構想から外し、今春の出場は難しいと見られていた。田中監督は明かす。
「苦しい時期があったと思うんですけど、本人の努力、個人差もあるので、まさかこうなるとは思っていなかった。日が経つにつれて、現実的に『開幕から行けるか……』と、日に日に感じていました」。電気治療などを続け、ドクター、トレーナーとも相談しながら、慎重に調整を重ね、オープン戦で実戦復帰。リーグ戦出場までの目安として「30打席」を消化し、この日の東大1回戦を迎えている。
ベンチワークからの学び
不動の「三番・遊撃」でフル出場。守備機会も軽快にこなし、骨折した右肩甲骨の影響は感じられなかった[写真＝矢野寿明]
戦線を離脱した期間も、宗山はチームに全帯同。オープン戦もベンチ入りし、遠征試合にも同行した。明大のチームリーダーとして、自ら判断。この時間が、貴重だったという。
「自分の100パーセントのプレーはできなくても、自分の場合は、他の選手とは違う立ち位置にいる。ゲームに出られなくても、自分がいることで、やれることはある。野球以外のところで、チームを支えていかないといけない、力になりたいと思いました」
ベンチワークから多くを学び、吸収した。
「選手の良いところ、悪いところが見えてきましたし、それが、今につながっている。個人的にも自分の動き、体を見直す良い機会になりましたし、個人としても、チームとしいても、今まで見えてこなかったことが見えた」
この日の2安打で、リーグ戦通算96安打。歴代1位の明大・高山俊(オイシックス新潟)の持つ131安打への挑戦も再び、歩み出した。離脱期間で、打撃もレベルアップしたという。
「右腕が使えなかったので、それ以外、下半身の動き、冬場からやってきたチームとしての打撃を、個人としても見直しながら、ケガ明けでも同じような取り組みをしてきました。自分の体の動きとしては、見直す期間があった分、良くなったかなと思います」
東京六大学のキャプテンナンバーは背番号「10」。宗山は明大入学以降、丸山和郁(ヤクルト)、村松開人(中日)、上田希由翔(ロッテ)と3人の主将を見てきた。「いずれは引っ張っていく覚悟を持っていました。それは年々、強くなっていた」と、満を持しての就任。「それぞれの年代にカラーがある。主将が一番理解して、この代の良さを引き出すことが大事になってきます」と自覚十分だ。
「4年生を中心にチームをまとめていって、まずは年間目標である『4冠』(春、秋のリーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会優勝)を狙うで、まずは、この春のリーグ戦で優勝する。強いチーム、応援されるチームにしていくのが目指すところです。プレーはもちろん、それ以外のところでも明治らしく、自分が周りへの声掛けをやっていきたいです」
伝統の「人間力野球」の継承。安定した寮生活、学校生活の上で、日々の活動がある。背番号10の背中は、日増しに大きくなっていくはずだ。宗山はスカウト戦線においても注目度ナンバーワンで、早くも「宗山ドラフト」と言われている。グレーのユニフォームで幸先の良い2024年シーズンのスタートを切った明大。一挙手一投足から目が離せない。
