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全国博物館へのクリエイター派遣に賛否 地方学芸員「予算少なくほぼワンオペ、人手を増やしてくれたら」

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photo:Dim Hou(unsplash)

■博物館にクリエイター人材を派遣

 4月12日付の読売新聞の報道によると、今年度から、文化庁は全国の博物館に対し、魅力を高められるよう支援するために専門人材を派遣するという。

  具体的な人材の例として、「展示解説の文章や映像・音声を魅力的にするライターや放送作家といったクリエイター」「博物館の資料をインターネット上などでも活用を進めるため、資料をデジタル化して保存する専門知識を持つデジタルアーキビスト」「資金を寄付などで集めるファンドレイザー」「マーケティングの専門家」を挙げている。今年度だけで50人の専門家を登録し、80館に派遣するそうだ。

 筆者はこの報道を見て、違和感をもった。博物館に必要なのはそういった人材ではなく、まず学芸員ではないだろうか。強いていえばデジタルアーキビストは必要かもしれないが、とにかく学芸員こそが博物館の要であり、マーケティングの専門家の優先順位が高いとは思えない。そして、これらの人材はいったいどのくらいの期間、派遣されるのだろうか。まさか今年度限りということはないだろうと思うが、一時的に派遣したところで博物館の魅力向上に繋がるかは疑問が残る。

■学芸員が不足している状況

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 筆者は全国各地の博物館・美術館を取材しているし、画像の借用などで関わった例を含めたら相当数の施設と関わっているが、学芸員から苦しい現状を語られる機会が増えた。特に地方の博物館の場合、人手が足りな過ぎて、専門的に研究してきた分野以外の資料の整理や解説まで、一人の学芸員が担当しなければならない例が多いのだ。

 「せめてもう一人、自分とは違うジャンルに精通した学芸員が欲しい」と話すのはある地方の博物館の学芸員である。曰く、「展示会の準備やパンフレットの作成まで一人で行わなければならないため、肝心の資料の整理が進まない」という実態があるようだ。実際、金沢21世紀美術館では2023年に11名もの学芸員が退職し、人材不足に陥っていると報じられた。ならば、文化庁が提示するような専門人材がいれば助かるのではないか。しかし、この学芸員はこう話す。

 「うちのような地方の博物館の場合、とにかく必要なのは資料の整理です。収蔵庫には寄贈されたまま、放置状態になっている資料が山ほど眠っているんですよ。僕は考古学が専門ですが、絵画、仏像などは表面的にしかわからない。それらを整理するためには、詳しい学芸員が必要なのです。それに、うちの自治体では博物館はお荷物状態で、年々予算も減らされている。地元の歴史を後世に伝えるためにという大義名分で造られたのに、完成したら放置状態。これでは何のための博物館なのでしょうか」

■博物館は何のためにあるのか

 現に、鳥取県北栄町の「北栄みらい伝承館」では、既に収集していた資料と同等未満の資料は収集しないことを決め、民俗資料の4分の1を処分している。朝日新聞の報道によると、資料の整理が進まず、収蔵品の量が増えていたためという。処分といっても廃棄するのではなく、希望者を募って譲渡する形をとっただけマシだったと思うが、そのなかには貴重な資料も含まれていたのではないかと思うと、複雑な気持ちになってしまう。

 博物館はもちろん、人に来てもらうことは大事だ。筆者のようなライターも、そういった思いで告知記事などを執筆している。しかし、博物館でもっとも大事なことは、資料を整理し、保管し、後世に伝えることであろう。この大前提を忘れてはいけないのではないか。高額な美術品だけでなく、地元の歴史を語る農具なども大切な文化財なのだ。前出の学芸員は、こう話す。

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