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『シティーハンター』はなぜ愛されるのか? Netflix版で描かれる“はじまりの物語”に注目!

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Netflix映画『シティーハンター』©北条司/コアミックス 1985

 北条司の伝説的漫画『シティーハンター』。いよいよ日本初となるスタッフ・キャストによる実写版が、4月25日からNetflix映画として独占配信される。

参考:安藤政信×森田望智の槇村兄妹2ショットも 鈴木亮平主演『シティーハンター』新カット公開

 1985年より『週刊少年ジャンプ』で連載開始となった『シティーハンター』の主人公・冴羽獠は、主に美女の依頼を受け、トラブル処理を請け負う街のスイーパー(始末屋)、通称シティーハンター。裏社会に精通し、驚異的な身体能力と抜群の射撃の腕で、法で裁けぬ悪を討つプロフェッショナルだが、その一方で女性にだらしないプレイボーイの顔も持つ。ハードボイルドからコメディまで振り幅の大きな作風が人気を博し、『キン肉マン』、『北斗の拳』、『ドラゴンボール』と並んで80年代ジャンプ黄金期を牽引した人気漫画だ。これらの連載時期の『週刊少年ジャンプ』が、発行部数500万部を突破していたのだから、いかに凄いパワーを持っていたかが分かるだろう。

 連載開始からわずか2年後の1987年には早くもアニメ化を果たし、テレビシリーズは好評のうちに『シティーハンター ‘91』まで足かけ4年の放送となった。小比類巻かほるが歌った初代オープニングテーマ「City Hunter~愛よ消えないで~」は、放送当時オリコンチャート8位を記録。さらにTM NETWORKによるエンディングテーマ「Get Wild」は累計22万枚を売り上げ、2017年には日本レコード協会によりダブル・プラチナ(有料配信25万DLでランクインする「プラチナ」の2倍!)に認定される凄まじい勢いで、今や『シティーハンター』の顔といっても過言ではない歌だ。『シティーハンター3』(1989年)のオープニングテーマ「RUNNING TO HORIZON」は、ヒットメーカー小室哲哉のソロデビューシングルであり、こちらもオリコンチャート1位を記録するなど、音楽業界でも偉業を打ち立てている。当時、テレビアニメを観ていなかった方々も、シリーズを彩った楽曲の数々はどこかで聴いていたかもしれない。今なお本作が高い人気を誇っている要因として、こうした80年代の音楽シーンを席巻した主題歌が、当時の人々の思い出に紐づけられているせいもあるだろう。

 テレビアニメの放送期間中と終了直後も含め、劇場用作品とテレビスペシャルが数本制作され、近年も完全新作映画『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』(2019年)、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』(2023年)が公開されるなど、まさに昭和から令和にまたがる幅広い人気を得ている。『新宿プライベート・アイズ』は、テレビシリーズ制作当時のスタッフとキャストが再結集した新作映画としてファンの期待値も高く、興行収入15.3億円の大ヒットとなった。同年に公開された山崎貴監督の『ルパン三世 THE FIRST』の興行収入が11.6億円(これもアニメ映画では十分な好成績)だったことを考えると、約20年ぶりに復活した『シティーハンター』のコンテンツ力は、令和になってもなお強いといえる。それだけ時代が冴羽獠を求めているのだろう。

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 いつまでも衰えない人気を背景に、フランスで実写版映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年)が製作され、日本でも全国公開された。子どもの頃から『シティーハンター』の大ファンというフィリップ・ラショー監督の熱烈なラブコールで作られただけあって、登場人物の原作再現度は見事のひとこと。日本語吹替版は本家アニメ版のキャストを含めたベテラン声優陣で固め、日本上映版はエンディング曲に「Get Wild」を使うなど、多くの観客から支持を集めて大成功を収めた。それでいながら、過去に1度も日本国内でテレビ、映画を問わず実写作品が作られなかったのは不思議なほどだが、この度のNetflix映画は、まさに満を持しての感がある。

 Netflix映画で冴羽獠を演じるのは、俳優人生を賭けて憧れのキャラクターに挑んだ鈴木亮平。数々のガンアクションでカッコよく決める獠は当然として、スケベでみっともない獠にも全身全霊で取り組んでいる。鈴木亮平は自身の代表作として『HK/変態仮面』(2013年)を挙げているが、ほぼ全裸に近い変態仮面を演じた鈴木を信じろ! おバカでかっこいい獠ちゃんを、全力で行くぞ!! 詳細は観てのお楽しみだ。安藤政信が演じる槇村秀幸は、元・刑事ならではの優れた直観と観察力で獠の相棒を務め、野上冴子役の木村文乃も、獠と付かず離れずの協力関係にある警視庁の切れ者ぶりを発揮する。

 さて、気になる本編の方だが、シティーハンターへの依頼の暗号“XYZ”と共に「妹を探してください」と書かれた伝言板をもとに、獠は行方をくらました有名コスプレイヤーくるみの捜索を引き受ける。槇村は妹の香の誕生日を祝うため待ち合わせ場所に向かうが、そこで悲劇が起きてしまう……。Netflix映画『シティーハンター』が、これまでの映像化作品と異なるのは、「槇村香がいかにして冴羽獠とバディの関係を築いて行くか」を描く、原作でもアニメでも描かれたことがない“はじまりの物語”という点。本作は、旧来からの熱心なファンには興味深く、初見の人も予備知識なしで楽しめるだろう。そして、槇村香を演じる森田望智は、兄への想いを獠に打ち明けるエモーショナルな芝居が実に見事だ。

 今回の実写版は「コスプレイベント」「SNS」「新宿の家出少女」といった現代的要素を随所に散りばめつつ、さらにもうひとつ、特筆すべき点がある。事件の背後に「エンジェルダスト」が絡んでいることだ。原作既読組は当然として、2023年の劇場用アニメを観た人もピンと来る、『シティーハンター』の世界と深い関わりを持つ禁断の麻薬の名がエンジェルダストである。そして華村あすかが演じるゲストヒロイン・くるみは、この薬の鍵を握る重要人物とだけ言っておこう。

 原作者の北条が「海外のファンの方たちが、新宿じゃなきゃダメだっていう理由が分かった気がしましたね」と完成作品にコメントしているように、本作は新宿の地元商店街、行政関係者、警視庁・新宿署など各関係者の全面協力のもと、歌舞伎町を中心に大規模なロケーションを行い、新宿の街が舞台である『シティーハンター』の世界観をたっぷり表現している。やさぐれた刑事役がハマる杉本哲太や、新宿一帯を仕切る阿久津組の組長・橋爪功などのベテラン陣に加え、有名コスメブランドの社長役の水崎綾女に、その部下の片山萌美と女優たちも華を添え、物語を大いに盛り上げる。

 アニメと原作を読み込んで制作に臨んだ佐藤祐市監督や、『シティーハンター』の大ファンという谷本峰アクション監督のこだわりが発揮された銃撃戦は尻上がりに激しさを増し、「人気アニメの実写映画はちょっとなぁ……」と日頃は敬遠する人を、きっと釘付けにするだろう。「もしも現代にシティーハンターが本当にいたら?」を念頭に、主演・鈴木亮平をはじめ、とんでもないほどの原作愛を持つ人々が集まって本気の映像化に取り組んだNetflix映画『シティーハンター』。TM NETWORKによるお馴染みのエンディングテーマ「Get Wild Continual」のイントロがどのタイミングで流れてくるかも含め、熱烈なファンも、この機会に初めて触れる人も、是非観ていただきたい。

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