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“劇場版青山剛昌”? 『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は連載開始30年に相応しい一作

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『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』©2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が4月12日に公開された。年に1度のお祭りのように、映画館は既にコナンフィーバー。シリーズ最大のヒットとなった昨年をも上回るペースで興行収入を伸ばしている。

参考:aiko、スピッツ、東京事変、BUMP 『コナン』の主題歌が30代を狙い撃ち

 幼稚園児の頃から『名探偵コナン』の原作コミックを読んで度々悪夢にうなされた私も、気付けば30歳目前。人生をコナンと共に歩み、近年ではリアルサウンドで多くの『名探偵コナン』記事を担当している。そんな根っからのコナンフリークからの視点で最新作『100万ドルの五稜星』の内容を振り返りたいと思う。

※本記事は『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』のネタバレを含みます。

 まずは作品の軸となるミステリーの部分について。本作の脚本を担当するのは作家の大倉崇裕。ドラマ化もされた『警視庁いきもの係』シリーズを始め多くのミステリー小説を手掛け、脚本家としても『名探偵コナン』アニメシリーズはもちろん『ルパン三世』も手掛ける、現代を代表するミステリー作家だ。劇場版『名探偵コナン』シリーズでは『から紅の恋歌』『紺青の拳』『ハロウィンの花嫁』などを担当しており、コナンの世界観についても知り尽くしている。今作ではそんな大倉のミステリー作家としての資質が遺憾なく発揮された。土方歳三にまつわる刀と函館のどこかに隠された宝を巡る争奪戦に、暗号解読や殺人事件も絡み合う一筋縄ではいかないストーリー。特に前作『黒鉄の魚影』が灰原哀の拉致と奪還、組織との直接対決という部分に軸足を置いた作品であったこともあり、今回はしっかりと謎解きの要素を盛り込んでおり、「『名探偵コナン』はやっぱりミステリーだよな!」と思わせてくれる一作であった。

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 もちろん劇場版シリーズ恒例のアクションシーンも健在。アバンタイトルから平次とキッドによるバトルが描かれると、中盤には函館の街中を縦横無尽に駆け巡るカーチェイス、そして終盤には敵味方入り乱れての大立ち回り、そして平次と福城聖によるセスナ機上での言葉通り命懸けの斬り合いと、アクションシーンだけでも枚挙に暇がない。ミステリーとアクションが目まぐるしく展開する息つく間もないエンターテインメントな2時間であり、これだけでも十二分に楽しめる作品だ。

 同時に今作は『名探偵コナン』らしい王道のラブコメが描かれることも大きな特徴だ。作者の青山剛昌は『名探偵コナン』という作品を“殺人ラブコメ”と形容しており、その意味ではとても“らしい”一作であったと言える。平次と和葉にフォーカスを当て、物語の最終盤では平次から和葉への告白を描く。告白の言葉と共に主題歌であるaikoの「相思相愛」が流れ出した時、思わず涙が溢れそうになってしまった。きっと私と同じようなコナンフリークも多いことだろう。物語を通して和葉、そして平次の背中を押し続ける蘭の健気さにも胸があたたかくなるし、聖と和葉が仲睦まじく会話している時の平次の嫉妬もキュートで彼の素直さを覚える。『名探偵コナン』におけるスイートでキュンとする恋愛ものとしての一面も味わい尽くせるのがこの『100万ドルの五稜星』だ。

 そしてコナンといえばなキャラクターたちの活躍も健在だ。本作も実に様々なキャラクターが登場し、主人公であるコナン、平次、キッドの活躍ぶりは言わずもがな、本作のオリジナルキャラクターである聖は、原作コミックにも逆輸入的に登場できるポテンシャルを秘めたキャラであった。『から紅の恋歌』での本格登場以来、原作にも度々登場する大岡紅葉と伊織無我も劇場版には久しぶりの登場。本作ではコメディリリーフとして全編に渡りミステリーの緊張感を緩和させつつも、同時に要所要所でストーリーを展開させる重要な役を担っていたことが印象深い。また北海道警察の刑事として、今作のオリジナルキャラクターである川添善久に加え、西村刑事が25年振りに本格登場。彼の登場に驚いたコナンフリークも多いだろう。アニメ144−145話『上野発北斗星3号』のエピソードにただ1度だけ登場しただけの西村刑事をここでしっかり登場させる原作ファンへのサービスが嬉しいし、キャラクターを大切にする作り手の姿勢を感じる。

 そして本作は『名探偵コナン』の作者である青山剛昌の別作品である『まじっく快斗』『YAIBA』からのキャラクターが総登場。『まじっく快斗』からは怪盗キッド=黒羽快斗、そして『名探偵コナン』でもお馴染みとなった中森銀三はもちろん、その娘であり快斗の幼なじみである中森青子が劇場版『名探偵コナン』シリーズに初登場。アニメ『名探偵コナン』シリーズへの登場も僅か2度、それも『名探偵コナン』キャラクターとの接点はなかったため、実質的な初登場と言っても良いだろう。『YAIBA』からは沖田総司、そして鬼丸猛が登場。特に終盤の五稜郭での敵対組織とのバトルシーンでの活躍が印象的だ。これほどまでに『まじっく快斗』『YAIBA』からのゲストキャラが登場したのはこれが初めてであり、“劇場版青山剛昌”のような空気さえ感じる作品であった。

 そんな本作における最大のサプライズはエンドロール後に明らかとなった工藤優作と黒羽盗一、ひいてはコナン=新一とキッド=快斗の真実の関係性だろう。優作と盗一は双子であり、その息子同士である新一と快斗は従兄弟ということがここで示されたのだ。黒羽盗一はキッドの父親であり、初代怪盗キッド。とある組織に殺害されたとされ、快斗がキッドとしてビッグジュエルを狙うのはその組織への接触と仇討ちが目的。そんな中で優作と盗一が双子であること、そして現在も盗一が生きていることが示された本作は『名探偵コナン』『まじっく快斗』両作品のストーリーの根幹を揺るがす、ターニングポイントとなる作品となった。もっとも『名探偵コナン』シリーズにおいて、原作やアニメシリーズの“本筋”に係る重要な設定が先立って示されたのはこれが初めてではない。劇場版シリーズ18作目の『異次元の狙撃手』でも今回同様、原作にまつわる大きな設定が暗示され、その後の展開に大きく関わっている。今回示された設定が、今後の『名探偵コナン』『まじっく快斗』シリーズの展開にどうフィードバックされるのか、今後も目が離せない。

 前述した“劇場版 青山剛昌”的スターシステムの大胆な盛り込み、そして新一とキッドの設定の開示も含め、原作やアニメシリーズを追いかけてきたディープなファンであれば一層楽しめるのが本作最大のポイントだ。原作コミックが連載開始30年という節目となる年の作品となった『100万ドルの五稜星』が例年以上にコアファンに向けた作品となったのは、青山剛昌からファンへのご褒美だったのかもしれない。
(文=ふじもと)

 
   

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