top_line

あなたの語彙力が試される!
無料ゲーム「ワードパズル」で遊ぼう

異色の映像コラージュ作「革命する大地」が迫る “ペルー軍部革命政権” の真実

シアターテイメントNEWS

1968年から75年にかけて南米ペルーで急進的な改革を推進したフアン・ベラスコ将軍率いる軍事革命政権の記憶は、2019年に映画「革命する大地」が公開されるまでは、不思議なほどに忘れ去られていた。それを一気にペルーでよみがえらせた同作が4月27日から新宿K’s cinema などで全国順次公開される。

ペルーの歴史を大きく変えた時代だったのに、何か目を背けているといったようなふうだった。その状況を一変させたのが、様々な映画の映像のつぎはぎや、革命の時代を知る人々の「降り注ぐ、怒濤の証言」で構成された本作である。農地改革、企業の国有化などの改革の実情を映像によってよみがえる様は圧巻であるが、本作を見る者が体感できるのはそれだけにとどまらない。ドキュメンタリー映像をコラージュ的につなぐ手法で、映画が持ちうる力を感じさせてくれる「怪作」にひたりきる感動の体験である。

ゴンサロ・ベナべンテ・セコ監督の「革命する大地」は2019年にペルー本国では、ふ20劇場で約9万人を動員し、同国のドキュメンタリー史上最大のヒット作となった。そして、同年のペルー映画記者協会最優秀ドキュメンタリー賞、リマ映画祭の最優秀ペルー映画賞および審査員特別賞を受賞した。

軍事クーデターで権力を握ったベラスコ政権は1969年に農地改革法を公布。スペインからの独立後も続いていた、旧態依然とした社会構造のなか、ペルー国内の広大な農地や主な企業を約40家族が支配していた「寡頭制」(スペイン語でオリガルキア)にメスを入れた。ロシアに関するニュース報道などで、少数で経済を支配する「オリガルヒ」という言葉をよく耳にするが、当時のペルーのオリガルキアはそれと比べものにならないほど社会の隅々まで根を張っていたのだ。

 

広告の後にも続きます

この映画では、ベラスコ政権の成果を示す映像や証言の一方で、負の側面や失敗を示す映像、証言も配しているのがいい。大地主が経営する大農園の中には、生産性が高く、付加価値の高い農産物を生産し、地主が小作農民たちの福利厚生に気を配っているような所もあった。かつて農園で働いていた人物が、昔は良かったと語るインタビューや、廃墟となった農園跡の映像も映し出される。

国内には、旧態依然とした大土地所有制のもとで半奴隷的状態に置かれていた先住民たちも多く、農地改革によって、彼らは解放されたのは事実だ。そういった土地も、そして近代的な農園の土地も接収され、小作農に分配された。

ユーゴスラビアの協同組合社会主義の影響のもと、多くの農園は農民の協同組合によって運営された。映画では、そういった組合の非能率や組合幹部による不正を訴える証言も出てくる。軍事政権は、地主から土地を無償で取り上げたわけではなく、証券の形で補償した。ペルーが経済危機に陥るなか、そうした証券の価値は暴落、外国企業が安値で買いあさって、後でもうけたといった話も紹介される。

ベラスコ政権は末期には、強権的な性格を強め、経済危機の深刻化から民衆のデモも起きた。そして75年、フランシスコ・モラレス将軍ら軍部内の反モラレス派のクーデターでベラスコ将軍は失脚、モラレス将軍が大統領となる。モラレス元大統領は2022年に100歳で死去しているが、本作では生前の同氏の証言も収録している。

反ベラスコ派は、それまでの改革を次々に覆していく。問題は、革命政権が収録していた記録映像が次々に破棄されたことだ。そんな中、フェデリコ・ガルシア監督はフィルムを盗み出してアルゼンチンに出国。「コンドルがうまれたところ」(1977年)を完成させた。今回、は同作の一部と、ガルシア監督の生々しい証言を見ることができる。

ベラスコ政権下では、ペルーがスペイン副王領の支配下にあった1780年に反乱を起こしたトゥパク・アマル2世を偶像化し、革命のシンボルとして利用した。

  • 1
  • 2
 
   

ランキング(エンタメ)

ジャンル