top_line

気持ちいい!サクサク進む爽快パズルゲーム
「ガーデンテイルズ」はここからプレイ!

『虎に翼』平岩紙は淡々とした表情に全てを込める 笑顔の裏で燃える梅子の“闘志”

Real Sound

『虎に翼』写真提供=NHK

 大学は自らが選んだ分野について、それまで以上に専門的なことを学ぶことができるところだ。朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)の寅子(伊藤沙莉)たちはできたばかりの明律大学女子部法科で法律について学んでいる。また、そこに通わなければ出会わなかったような人たちと友人になることができるのも大学のおもしろさのひとつだろう。寅子が仲良くなった梅子(平岩紙)もそれを象徴するようなひとりである。

参考:『虎に翼』土居志央梨が表情に忍ばせる繊細な演技

 梅子は寅子の学年で一番年上の学生。プールに行ってびしょ濡れの髪で登校してきた寅子の世話を焼いたり、留学生である香淑(ハ・ヨンス)を気にかけたりと周囲に目を配り、フォローを欠かさない。だが、寅子の苦手な「スンッ」とした諦めムードを醸し出しがちなのも梅子である。それもそのはず。梅子には弁護士の夫と3人の息子がいる。梅子は、一度は、世間でいうところの「女の幸せ」を手にしている。きっと「スンッ」とした“あの感じ”を身につけてきたのだろう。しかし、一念発起して明律大学女子部へやってきた梅子。年頃は異なるだろうが、「3人の子どもがいる」という点では寅子の母・はる(石田ゆり子)と同じである。女子が大学に通うのも珍しかった時代に、母親でありながら再び学生になるという梅子の選択は、さらに珍しいものだったのではないだろうか。優しく笑うその顔に、静かなる闘志が宿っている。

 梅子を演じているのは平岩紙。平岩が朝ドラに出演するのは本作が4度目となる。様々な映画やドラマでバイプレイヤーとして活躍する平岩の演技は、なんだかいつも淡々としている。でもそれが味気ない、ということはにならない。淡々さの中に何かしらの「メッセージ」が含まれているのだ。

 それがよく表れているのが朝ドラ『とと姉ちゃん』(2016年度前期/NHK総合)で平岩が演じた森田照代だ。照代は祖母の家を追い出された常子(高畑充希)たちが住み込みで働くことになった老舗仕出弁当店・森田屋の奥さんだった。慣れない仕事であまり役に立たなかったと自覚し、恐縮しきりの常子たちに、照代はお茶を出すなど優しく接するが、笑顔を見せながら出てくるのは「早く慣れてくださいね」という言葉だけ。何が起きても気丈さを見せていた常子もさすがに内心、「笑顔が怖い」と思わずにはいられなかったよう。これは淡々さが「圧」になっているといえるだろう。

広告の後にも続きます

 男女が逆転した江戸パラレルワールドを描いた『大奥』Season2(2023年/NHK総合)では、和宮(岸井ゆきの)の母である勧行院を演じた平岩。和宮は弟の身代わりとして家茂(志田彩良)のもとに降嫁し、勧行院もそれを承知で男装をして大奥入りをしたのだが、次第に京に残した息子が心配になり、乱心するようになってしまう。勧行院は突然、金魚鉢を割ったかと思えば、「帰して……わたしを京に帰してえ!」と和宮に訴えるのだ。激昂しているわけでもなく、冷静にも見えるその表情からは何を考えているかはよく分からないのに、目だけには殺気があった。和宮を、息子と自分を引き離す「敵」として見ている目だ。その異様な淡々さから勧行院の「本気」が伝わってくる。このように平岩が武器としている淡々さには、色々な側面と強度があるのだ。

 『虎に翼』で平岩が演じている梅子は、今のところ、自分より若い人たちを心配し、いつでも優しいみんなの姉のような存在だ。のほほんとしている梅子の姿を、苛立ったよね(土居志央梨)は「主婦の暇つぶし」と形容したが、梅子は暇つぶし程度で大学に入れる立場でもなければ、それを許してくれるような大らかな時代でもない。彼女だって並々ならぬ意思を持って、大学にいるのだ。回想では、夫や学生帽を被った息子に蔑まれる梅子の姿がちらりと映し出されている。きっと梅子の淡々さは「したたかさ」の表れだ。友人たちの生い立ちや今の立場を知りつつある寅子たち。梅子の“本当の姿”を知る時もきっと近いだろう。
(文=久保田ひかる)

 
   

ランキング(テレビ)

ジャンル