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タクシー車内で大合唱!? 運転手が見た、“ニッポンを謳歌する”外国人観光客たちのリアルな姿

日刊SPA!

 今、日本各地で多くの外国人観光客の姿を見かける。東京でタクシードライバーをしている筆者もそれは同じで、お客さんとして乗せる機会が格段に増えている。コロナ禍が明け、大幅に訪日客が増えたこと。面倒な言葉のやり取りなしで迎車地と目的地を指示できるタクシーアプリの普及。圧倒的な円安が背景にある。
 では、日本を訪れる外国人旅行客はどのような特徴があるのか? 日々、彼らと接しているタクシードライバーの立場から見える姿をご紹介しよう。

◆とにかく荷物がデカくて重い

 ほぼ全ての外国人観光客に共通しているのは、大量の荷物を持っていること。日本人が海外に出る時より確実に大きく、人間ひとり入れそうな巨大なスーツケース+登山用バックパックあたりはお約束。ドライバーがラゲージスペースに積み込もうとしても、あまりの重さに腰に負担がかかる。そういう時は、作り笑いで「heavy?」と言葉をかけると、みんなニコニコしながら手伝ってくれるからありがたい。

 これまで最大の量だったのは、某全国チェーンホテルからひとりで乗ってきたちょっとオタクっぽい感じの小太りな30代男性。彼と巨大なスーツケース2個+段ボール2個+バックパックでフル積載の状態になった。目的地は蒲田のホテルだったので、翌日早朝の羽田発で帰国する予定だったようだ。

◆大所帯でわいわい楽しみ、車内で合唱

 意外な場所から外国人旅行者が乗ってくることもある。冬のある日、荒川区の小さなビルに呼ばれた時は、中から10人の外国人旅行者がぞろぞろ。民泊的な使い方をしていたようで、そこには大量の荷物も並んでいた。

 結局、4台のタクシーが集められ、パズルのように人と荷物を各車に振り分けるのに約15分。日本人なら急かされるだろうけど、彼らは待っている間も陽気。筆者の車には男女4人が乗り、指定された行先は東京駅。念のため、新幹線に乗るのか聞くと「Yes Kyoto」と元気な答え。では八重洲中央口だねと、車列を組んで走り出すと、雪がちらつき始めた。

 すると、助手席に乗っていた女性(おそらく30代)が感傷的になったのか、「Good-bye Tokyo」とつぶやき、何やら英語で歌い始め、他の3人もそれに同調。東京駅に着く直前まで歌声は続いたのであった。

◆合羽橋で買った和包丁を出して…

 浅草に外国人観光客を送り終えると、すぐにアプリの配車依頼が飛び込んできた。迎車地は道具街の合羽橋から。東洋系の一家4人が待っていた。目的地は六本木ヒルズの超高級ホテルだった。

 家族の会話は中国語のようで、お父さんのみ、時折筆者に英語で何か話しかけてくる。総合すると、すでに5日ほど六本木に滞在し、今日は和包丁を買いに来たらしい。そういえば、コロナ禍明けの合羽橋の外国人比率はとても高く、とくに包丁専門店は常に大入りになっている。

 このお父さん、上機嫌でニコニコしていた。ただ、よほど嬉しかったのだろう。包丁を箱から出して眺めていたのにはビックリした。お願いだから、ここでそんなものを出さないで!

◆暖房はお嫌いですか?

 お客さんに車内で快適に過ごしてもらうため、タクシードライバーは換気や温度調整に気を使う。ジャパンタクシーなら、寒い早朝には後部座席のシートヒーターをあらかじめ入れておくことがある。日本人のお客さんなら、それで何か苦情を言われることはない。温度について要望を聞いても、だいたい「大丈夫です」のひと言で終わる。

 一方の外国人旅行者は、結構自己主張が強い。しかも、なぜか昨年から今年にかけて出会った外国人旅行者たちの服装は軽装が多く、日本人がダウンを着ている中、半袖Tシャツ姿で街を闊歩している場面によく遭遇した。

 そんな彼らを車に乗せると、「シートヒーターを切ってくれ」「温度を下げてくれ」「窓を開けていいか」などの要望がよく出る。細かな要望がある時は、スマホの翻訳機能を使って画面を見せられることもあった。このような自己主張は、さすが外国人。もちろん、全然嫌味がないので、こちらも気持ちよく「Yes, sir」なのであった。

◆早朝の銀座でも楽しみを見つける

 日本人も外国人も、六本木や渋谷、新宿、上野、浅草など、有名スポットに行ってくれというお客さんが多い中、予想の斜め上行く目的地を指定する外国人観光客もいる。筆者が意外だったのは、早朝6時すぎに浅草から銀座まで乗せたカップルだった。

 こんな時間に行っても店は開いていないと伝えたところ、「街並みを楽しみたい」的な返答があった。実際、銀座の中央通りで降ろすと、彼らは気持ちよさそうに周囲を散策していた。

 これは面白い楽しみ方じゃないか。思わず自分もガラガラの銀座中央通りをのんびりドライブしてみたところ、あちこちで同じような外国人観光客が歩いていた。何とも不思議な光景だった。

◆通な目的地に「おみそれしました」

 東南アジア系の女子3人組を六本木から乗せた時のこと。目的地を尋ねたところ、まったく聞き取れない言葉が飛び出した。いや、正確にはまったく予想していなかった地名だったので、聞き逃したといったほうが正しいかも。そこで再度尋ねると、スマホの画面で示したのは「荒川区東日暮里〇〇」の地名。

 よくわからないまま目的地に着くと、そこは日暮里繊維街だった。きっとファッション大好きな女子たちだったのだろう。口々にお礼を言いながら、キラキラした目で街に飛び出して行った。正直言うと、筆者はここが問屋街だとこの時初めて知ったのでありました。勉強不足でゴメンなさいでした。

◆当たり前の挨拶が気持ちいい

 同僚の間でも外国人観光客を歓迎する声が多い。みんな笑顔で乗車時に「コニチワ」、降車時は「アリガトゴザイマシタ」と片言の日本語で挨拶してくれるからだ。よく考えれば、自身も外国に行けば同じように話しているけれど、早朝の通勤時間帯に乗せる日本人企業戦士のしかめっ面に慣れてしまうと、とても新鮮な気分になるのだった。

 もうひとつ、タクシーアプリ「GO」の機能を使い、下車後に500円ほどのチップを贈ってくれるのも外国人観光客がほとんど。とてもありがたい存在なのだった。

<TEXT/真坂野万吉>



【真坂野万吉】
フリーライター。定時制で東京を走り回っている現役の中年タクシードライバー
 
   

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