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ロレックスが新作を発表。「中古相場に与える影響」を腕時計投資家が分析

日刊SPA!

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。
 4月9日にロレックスが今年の新作を発表。とうことで、今回は今年の新作と、それが相場に与える影響を解説したいと思います。

◆新作発表の歴史

 ロレックスに限らず、多くの腕時計ブランドは毎年3月頃に『新作』を発表する傾向があります。これは、かつて開催されていた「バーゼルワールド」の影響だといえます。バーゼルワールドは、2020年まで開催されていた時計の見本市イベントだったのですが、以前は、多くの腕時計ブランドがバーゼルで新作を発表するという流れがあったのです。

 リシュモングループなど、「バーゼル」に参加しないという腕時計ブランドがありましたが、そちらはSIHHという見本市に参加。かつてSIHHは毎年2月頃の開催だったため、いずれにせよ2月3月といった時期が『新作腕時計』が発表される時期に変わりありませんでした。

 インターネットが普及してからも、しばらくの間、一般的な時計ファンが「今年の新作」を知るのはリアルタイムではありませんでした。それら新作をまとめた時計雑誌が、毎年5月頃に発売される傾向があったのですが、それを見てようやく「その年の新作を知る」という流れがあったのです。なぜそうだったかというと、昔はロレックスといった有名時計ブランドがネットでの発表に消極的だったからです。

 しかし、2010年代になると状況は一変。新作は各ブランドの公式サイトで発表されるようになったわけで、「バーゼルワールド」も消滅してしまったのです。

 そして今や、ロレックスの新作発表は、アップルの新作発表並の注目度となっており、WEBで公開される情報を多くの人が待ち望んでいるといえます。

◆今年の新作発表

 今年、ロレックスから発表された新作をざっくり説明すると以下の通り。

・黒ベゼルの「GMTマスター2」 型番:126710GRNR
・K18素材の「ディープシー」 型番:136668LB
・プラチナ素材の「1980」 型番:52506

 以上が基本的な新モデルだといえ、その他にデイトナのダイヤ装着モデル(126589RBR等)が発表されています。

 また、デイデイトも新作として発表されたのですが、型番自体は以前から存在。新しいカラーの文字盤がデビューしたといった規模であります。

 昨年、2023の新作発表ではデイトナの全てのモデルがフルモデルチェンジされるなどしたことを考慮すると、今年の新作発表は地味だといえるかと思います。

 とはいえ、新作発表は毎年「派手」というわけでもないため、今年のような規模の新作ラインナップは、あくまで正常だといえるでしょう。

 また、今年の新作発表のタイミングで「シードゥエラー ディープシー」が、「シードゥエラー」から独立。単に「ディープシー」というモデル名に変わりました。その結果、文字盤上からも「SEA-DWELLER」の文字が消え、単に「DEEPSEA」だけに変更。特に、136660の黒文字盤のは「DEEPSEA」の表記部分が変更されたため、雰囲気が変わったといえます。

◆新作発表時に発覚するもう1つのこと

 さて、新作発表時に「判明」することがもう1つあるのですが、それが「生産終了」になったモデルであります。現在では、ロレックスの公式サイトから消滅するということが、すなわち「生産終了」を意味することになっているわけですが、今年消滅したのが「ヨットマスター2」であります。

「ヨットマスター2」は、2007年に登場したスポーツ系モデルの最高峰で、当時のロレックスとしては唯一、複雑機構(=レガッタクロノグラフ)が搭載されたモデルであります。ヨットマスター2登場まで、ロレックスはあえて複雑機構モデルを用意しないといった印象があったため、ヨットマスター2が登場したときは衝撃的だったといえます。

 また、ヨットマスター2はデビュー時に、イエローゴールドとホワイトゴールドのみの展開。ステンレスはラインナップされておらず、超高級なロレックスというイメージとなっていました。

 ちなみに、ヨットマスター(1)もデビュー時には、イエローゴールドモデルしかラインナップされていなかったわけで、「ヨットマスター」というシリーズは、最高級スポーツモデルといった役割を担っていたといえます。

 しかし、近頃のヨットマスター系のラインナップは、必ずしも「最高級」というわけではなく、かつてのようにK18のみのラインナップでもありません。ただ、定価の観点でヨットマスター2は、最も高値(同じ素材同士の比較において)といった傾向がありました。

 とはいえ、デイトナに用意されるような「シェル」や「ダイヤ」といった高級素材文字盤の展開もなく、また、プラチナ素材のモデルも最後までラインナップされず。2015年頃まで、ヨットマスター2の中古相場は「高値」といった雰囲気があったものの、近頃では「WGモデルが、K18素材の中古相場としては異例なほど安価」となるなど、ヨットマスター2への注目度が以前よりも低くなっているといった状況があったといえます。

 そして、ヨットマスター2は、今年後継モデルが出ることなく、シリーズが廃止となったわけです。

◆生産終了発覚で高値となるか?

 生産終了となると「中古相場が一気に高くなる」という現象が起こる場合があります。例えば、2017年にシードゥエラーの126600が発表された際、生産終了になった116600は一気に相場が上昇しました。

 116600は、2014年に登場した6桁世代のシードゥエラーであるわけですが、「ディープシー」と「サブマリーナー」の中間といったキャラクターであるため、生産終了前時点では、特に相場が高いといった傾向はありません。しかし、2014年のデビューから3年程度の期間で生産終了になったことから、2017年に生産終了となった際、一気に相場が上昇したのです。

 しかし、その一方で相場が上昇しないという場合もあります。先程もお伝えしたように、去年の新作発表ではデイトナが一斉モデルチェンジを実施したわけですが、その際、生産終了が発覚した前モデルのデイトナは、そのほとんどが「反応しなかった」といえます。

 つまり、去年の生産終了発覚時に、116500LNといったデイトナの人気モデルの中古相場が「目立って変動する」という現象が起きなかったわけですが、デイトナほどの人気モデルでも、こういった「無反応」ということがあるのです。

 また、去年の新作発表時では、ミルガウスの116400GVが公式サイトから消滅。その結果、「ミルガウス」はシリーズ廃止となったわけですが、これもまた「無反応」でした。

 ミルガウスは、1990年頃から2007年まで一度シリーズ廃止となった時期がありましたが、その際、「幻のモデル」といった印象で、1019といったミルガウスの中古相場がものすごく高値となっていたのです。

 そして、そういった注目度ゆえか、ミルガウスは2007年に復活。当初、116400GVは、新品実勢価格が180万円程度となるなど、当時のデイトナ相場(最も高いSSモデルだった116520黒文字盤が140万円程度)からしても、びっくりするぐらい高値となっていたわけです。

 しかし、その翌年リーマンショックが発生し相場は暴落。その後、116400GV含め、ミルガウスの相場はデイトナよりも安価となり、気づけばロレックススポーツモデルの中で下位に位置するといった様子になっていきました。

 それが、2023年に再び「シリーズ廃止」となったわけですから、ミルガウスは2006年以前と同じ状況に戻ったといえるわけです。それでも、ミルガウスの中古相場は変化することがなく、現在相場も1年前とそこまで大きく変わらないという状況になっています。

 さらに、今年シリーズ廃止が発覚した「ヨットマスター2」についても、今のところ中古相場が反応する様子はありません。

 近頃は、生産終了になったとしても「相場が一気に上昇する」といった傾向がなく、新作発表が中古相場に与える影響は以前よりも弱まっているといえる状況なのです。

◆新作が中古相場にもたらす影響

 さて、もう1つ、新作が中古相場にもたらす影響があるといえます。それは、新作発表によって注目された結果、「人気モデルの地位が入れ替わる」という点であります。

 例えば、今年の新作発表の場合、約5年ほど廃止状態となっていたGMTマスター2の「黒ベゼル」が復活したわけですが、仮にそれが注目されたならば、「過去モデル含め、黒ベゼルのGMTマスター2の中古相場が上昇」という現象が起こるわけです。

 とはいえ、黒ベゼルのGMTマスター2は今のところ「目立った注目」となっている様子がないといえるため、GMTマスター2の「人気要素」が現在王者の「青赤」から「黒」に変わるということは今のところ起こっていないといえます。

 かつては、新作発表時に「人気モデルの天変地異が起こる(例:2016年のデイトナ発表時に、人気文字盤色が黒⇒白に変化)」とか、「生産終了が発覚したモデルが急上昇する」などの現象が見られましたが、ここ3年4年ぐらいにおいては、あまりそういった現象が見られないといえます。

 とはいえ、昔も「生産終了になったのに上昇しなかった」という場合があるため、今後も、新作発表時に相場が変わらないということが続くとは限りません。

 おそらくですが、最近の新作発表時に相場変化が起こらないのは、以前は珍しかった要素(例えば、短期間で生産終了となるモデル)が珍しくなくなったといった事情があるように思います。ただ、状況はいきなり変わるということもあるため、今後の新作発表では「相場が一変」とか「人気モデルが変わる」といったことが起こっても不思議でないでしょう。

◆短命モデルだからこそ、希少価値が付くことも

 最後に補足ですが、2021年以降においても、「生産終了」で上昇したモデルがあります。それが、デイトナのメテオライト文字盤(2021年登場版)であるわけですが、こちらはデビューから2年での生産終了となりました。こういった“短命モデル”は、今やロレックスでは珍しくないわけですが、「メテオライト文字盤」という高級要素と希少性が『生産終了で高値』ということをもたらしたのだと思います。

 また、昨年の新作発表から約3ヶ月後の2023年6月に発表されたデイトナのスペシャルモデル、126529LNが今年の新作発表時に「生産終了」がアナウンス。126529LNはスペシャルモデルだけあって、生産終了発覚前の中古相場は3500万円といった水準でしたが、わずか9ヶ月程度の“超・短命なスペシャルモデル”となったため、おそらく相場が上昇すると予測できます。

 こういった特別感が強いモデルの一部では、2021年以降も「生産終了」による相場上昇が稀に起きている様子があるといえます。<文/斉藤由貴生>

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―



【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある
 
   

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