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「ウンチは掃除できない!」怒れる新入社員が、社内に一斉送信した“トンデモLINE画像”――大人気記事・驚きの新入社員トップ10

日刊SPA!

4月、新入社員が今年もやってきました。そこで「驚きの新入社員」の記事の中から、反響の大きかったトップ10を発表。第9位の記事はこちら!(初公開2023年5月24日 集計期間は2018年4月~2023年12月まで 記事は取材時の状況) *  *  *

 多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、業務内容や職場環境など、人により理由はさまざまだが、せっかく就職したにもかかわらず、すぐに退職してしまう人もいる。

 スマホの画面にウンチのアップが映し出される。その画像は、新入社員の同期生からの問題提起だった。この時、あなたはどうするかー。今回は実際に起きた事例をもとに、職場で起きた問題への対処法について考えたい。

 本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。

◆事例:清掃会社の新入社員がすぐ辞めたワケ

 清掃会社(500人)に新卒として入社した男性(仮名・田上俊行、23歳)は、4月の研修で精神的に滅入ってしまった。会社が受注する清掃の仕事は、年間数百件。大半は役所や公的機関、ビル、マンション、ホール、スポーツジム、サウナの清掃だ。

 1か月間の研修では、そのうちの10件ほどを新入社員12人で対応した。人事部員や先輩社員のマンツーマン指導のもと、掃除をするのだが、しかし、あるサウナには、排水溝付近にごってりしたウンチがあった。

 田上は、耐えられなかった。怒りと不満をこらえきれないためにスマホで撮影し、同期生12人全員と人事部員、12人の配属部署の上司を含めて計25人程が参加するLINEのグループに流した。「僕は、こんなウンチを掃除しているんですよ。サウナにウンチがあるなんて衛生上、問題!」。

◆「掃除はできません」サウナに汚物が

 誰も反応しない。田上はまた書いて、「ウンチ、ウンチ……」と食い下がった。人事部員は翌日、口頭で注意をした。田上は言い返す。

「仕事を請け負っていても、ウンチを排水溝付近ですることにこそ問題がある、とサウナの運営会社に言うべきです!」

 あまりの正論に、人事部員は何も答えられない。田上は、しだいに浮いた存在になる。1か月の研修を終え、配属されたビルで1週間勤務した後、辞めた。人事部員にこう言い放った。「あんなウンチを掃除はできませんよ」……男性の送別会はなかった。

◆無断で撮影し、画像を流してもよい?

 大手士業系コンサルティングファーム・名南経営コンサルティング代表取締役副社長で、社会保険労務士法人名南経営の代表社員である大津章敬さんに取材を試みた。

 大津さんはまず、男性がLINEを使い、問題提起をしたことに着眼した。

「勤務する清掃会社と客先(サウナ運営の企業)との契約内容や清掃会社の就業規則などによって男性の行為をどう捉えるかは変わってきます。例えば客先での仕事中、無断で汚物を撮影し、清掃会社の上司や同僚に向け、画像を流したことは、契約で機密保持をうたっているならばそれに抵触している可能性があります」

◆無断で撮影し、画像を流した行為は?

 前出の大津さんが続ける。

「本来は、こういうトラブルを防ぐためには清掃会社が『客先や自社内を無断で撮影してはいけない』とルールを事前に設け、全社に周知しておくとよかったのではないかと思います。

 男性が仮に社外の人に向けて今回のような画像を流出させた場合は大きな問題であり、懲戒解雇を含め、懲戒処分になる場合があります」

◆清掃会社の本来のミッションとは

「排水溝に汚物があったことを問題視し、上司に報告をしようとしたならば、その行為そのものはまっとうだとは思います」とも大津さんは説明する。

「サウナの利用者が汚物を見つけた場合、きっと不快な印象を受けるでしょう。そのサウナを運営する会社にとっても信用を失い、大きなダメージになりかねません。男性から報告を受けた上司らがサウナを運営する会社に速やかに伝え、双方が何らかの形で協力し、再発を防ぐのは好ましいことのはず。

 清掃の会社のミッションはその場所をきれいにするだけでなく、利用する人たちが快適に使えるようにすること。そして、気分をよくしていただくことです。これらができていれば、サウナを運営する会社の利益を一層に大きくすることになります。いわゆる、顧客満足最大化です」

◆コミュニケーションのあり方に問題

 そのうえで大津さんは次のように続ける。

「男性は、このようなところまで含めて言うべきではなかったのでしょうか。顧客の立場に立ち、貢献をしようとするがために皆さんに伝えている、と言えば状況は変わったのかもしれません。この説明がないと、汚物を見て、『こんな仕事はおかしい!』と感情に任せて画像を流したと見られかねないのです。

 あるいは、LINEに汚物をいきなり流すことも、その意味では問題があるでしょう。まず、人事部員もしくは上司に口頭で伝えることができなかったのでしょうか。これら一連のコミュニケーションのあり方には問題や今後の課題があります。若くとも問題意識が旺盛な人材であるから、一層に残念な気がしました。今後、社会人として経験を積み、コミュニケーションの仕方に成熟したものがほしいですね」

◆会社と求職者の“当たり前”とは

 採用試験の際には入社後に双方の誤解をうまないためにも、従事する仕事の内容をできるだけくわしく、明確に説明することが大切だ。「そうしないと、事例のように早期退職になりかねない」と、大津さん。

「採用においては会社にとっての当たり前が、求職者の当たり前ではない場合があります。一例で言えば、知人がファミリーレストランでアルバイトをしたことがあるのですが、店内のトイレを掃除する機会が何度かあったようです。汚れがひどい時があり、滅入ってしまったと話していました。

 知人はお客さんからオーダー(注文)を取ったり、料理をテーブルに運んだりすることが仕事だと思っていたのです。ファミリーレストラン側は、トイレの掃除も仕事と考えていたのでしょうね」

◆採用時にネガティブな情報を伝えるべきか

 チェーン展開する小売店の求人広告では、こういった事例もある。

「従事する仕事の内容としてレジの対応や商品の陳列のほかに、ある店舗では『トイレの清掃あり』、ある店舗では『トイレの清掃なし』と記載してあります。もしかすると、トイレの清掃があることで不満を持ち、退職した人が過去にいたのかもしれません。

 退職理由を把握し、その部分をあらかじめ記載し、双方の誤解を防ごうとしているようにも私は感じました。それであるならば、いい試みだと思います。今回の清掃の会社にも参考になるのではないでしょうか。

 働く側からすると、採用時にはネガティブと思える情報もあらかじめ知っておいたほうがよいでしょう。一方で、採用する側はネガティブな情報を詳細に伝えると内定にしたい人が入社しなくなる可能性がありますから、その意味でのバランスは難しいところではあります。ただし、今回の汚物の件は採用時に伝えようがなかったのではないでしょうか。そもそも排水溝にあること自体がおかしいのですから、イレギュラーな出来事かと思うのです」

◆男性が浮いた存在になった理由

 そもそもなぜ、男性が浮いた存在となったのか。大津さんも「そこが気になります」と語る。

「浮いた存在となった理由には、少なくとも2つあるかと思います。1つは、LINEに画像をいきなり流すなど、やり方に問題があったから。もうひとつは、客先や自社にとって不都合なことを上司や同僚に共有しようとしたから。

 仮に後者であるならば、本来、今回のような問題は早急に上司に報告をすべきですから、男性が浮いた存在になるのは好ましくないと思います。浮いた存在にしてしまったのでは、ほかの社員たちが報告をしなくなる可能性があります。会社としては、社員が報告をしやすい雰囲気をつくることが大切なのです」

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 男性の行動には採用のあり方や研修、社内ルール、上司や人事部員の考え方、指導や育成、チームビルディング、発注と受注の関係などの問題が凝縮している。ウンチの画像をシェアするという行動の背景に目を向けると、男性は優れた資質を持っていたのかもしれない。

 社員が辞めた後、残った社員たちがその社員の言動をあげつらったり、否定したりすることで自らの立ち場や考えを正当化しようとする場合がある。だが、男性は本当に変人だったのだろうか。読者諸氏は、どのように思うだろう。

<取材・文/吉田典史>

【大津章敬(おおつあきのり)】
1994年から社会保険労務士として中小企業から大企業まで幅広く、人事労務のコンサルティングに関わる。専門は、企業の人事制度整備・ワークルール策定など人事労務環境整備。全国での講演や執筆を積極的に行い、著書に『中小企業の「人事評価・賃金制度」つくり方・見直し方(日本実業出版社)』など。全国社会保険労務士会連合会 常任理事。



【吉田典史】
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
 
   

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