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堀田茜の“揺れ方”が気になる理由。「股をうちつけた名場面」も忘れられない

日刊SPA!

モデル、タレント、俳優――この3つの肩書から堀田茜はいったい、どれを選ぶのだろうか?
とんだ愚問だと理解しつつ、おそらく彼女は俳優を選ぶんじゃないだろうか。でも他方で、モデルからタレントに、タレントだから俳優にという着実な歩みがあるのも確か。そんなことを考えさせてくれたのが、毎週水曜日深夜24時30分から放送されている主演ドラマ『好きなオトコと別れたい』(テレビ東京系)だ。

イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、その“揺れ方”に注目しながら、本作の堀田を解説する。

◆堀田茜が気になる、その理由は…

堀田茜が気になる。その理由は、彼女が日本屈指のアクション俳優だからというと驚かれるだろうか? じゃあ今度は彼女がどうしてアクション俳優といえるのかということになるのだけれど、それはひとまず保留にして……。

主演最新作『好きなオトコと別れたい』第1話の冒頭場面に注目。30歳目前の主人公・白石郁子(堀田茜)はとことん疲れている。残業を終えた金曜日の夜。早くビールが呑みたい。でもどこかに呑みに行く元気まではない。結局はコンビニの缶ビールとささやかなツマミを頼りにするしかない。そんな人生。

侘しさすら漂う郁子のモノローグがぼそぼそもれ聞こえる帰りのバス。車内で揺られるしがない勤め人かと思うのだが、吊り革につかまっている堀田茜の揺れ具合がどうも気になる。そのわずかな動きを見て、実は彼女こそ“揺れ方の名人”ではないかとふと気づいたのだ。

◆「揺れの演技」のベースにあるのは

揺れるという運動がアクションそのもの。車内の揺れにただただ身を委ねてゆらり、ふらりする堀田は、(もしそんなものがあればの話だが)揺れ方のマナーすらきちんと踏まえているように思う。

揺れ方のマナーとは、とりとめなく揺れ続けるのではなく、わずかなスイングの動きを微調整するように控えめである状態。だからあの車内のゆらり、ふらりは、永遠の微調整が繰り返されながら、おそらくオートマチックに揺れ続けていられるもの。

他にもある。郁子にくっついているヒモ男・黒川浩次(毎熊克哉)との回想場面。店から出てきた郁子が吐きそうだといって口を押さえながら浩次にもたれかかる。ここでも堀田の身体はゆらり。でも控えめに、細心の注意を払って無闇には動かない。この抑制された揺れの演技は、ダンスを得意とする堀田の体幹や平衡感覚からきているとひとまず理解しておこう。

◆堀田茜を語る上で欠かせない『イッテQ』

揺れと平衡感覚。堀田茜を読み解く必須ワードだ。これは彼女の原点でもある。この感覚を磨いた場所がちゃんとあるからだ。アジア・アクションの代表格クンフー映画では、切磋琢磨修行に励む主人公を導く老師(師匠)が必ずいるように、堀田にも師匠がいる。

俳優(モデル)である以前に、タレントでもある彼女のことを語る上で欠かせないのが、もちろん『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)。立教大学卒業直後の2015年に初登場して以来、いわゆる出川ガールズとして身体を張ってきた。その出川哲朗の還暦企画「出川女子会INベトナム」(2024年2月4日放送回)のラストで出川を前に堀田はこう言った。

「芸能界で唯一にして最大の師匠です」

泥濘に何度も顔を浸し、泥まみれになりながらバラエティ番組の洗礼を受けてきた堀田が磨いたリアクション芸は、出川ガールズの中でも屈指の芸当を誇る。実に9年間の修行で出川直伝の伝統芸を受け継いだ堀田だが、その成果が最初に試された瞬間が、バラエティ史の語り種になっている。

◆“伝説の平均台作戦”として記憶されることに

忘れもしない名場面は、2018年放送の「デヴィ探検隊with出川ガールズinパラオ」にある。デヴィ夫人を隊長とし、副隊長の出川、隊員の河北麻友子、堀田、谷まりあの出川ガールズ一行がジャングルの奥地へ。足場が悪く、苦戦の連続だが、中でも「激ムズ川渡り」がすごかった。

目的地まではあとすこし。川を渡るために、対岸へ丸太をわたす。驚異の脚力とバイタリティで難なくわたってしまうデヴィ夫人。続く堀田が見せてくれた。丸太はきしみ、揺れる。

“平均台作戦”と名付けられ、両腕を広げて、バランスをとりながらゆっくり歩を進める。ゆらり、ふらり……。と思ったらば、バランスを崩した堀田が、ズリっ。股をうちつけそのままぐるり。

逆さま状態で宙吊りになりながらも何とか両足で丸太にぶら下がる。そして川へ綺麗にドボン。「我々は今素晴らしいものを見せてもらった」というナレーション通り、流れるようなアクションに息を呑んだ。出川ガールズ3年だった堀田は以降、“伝説の平均台作戦”の名誉ある失敗者として記憶されることになる。

◆本質的意味でのアクション俳優ではないか

同放送以来初となる出川との共演回「俺の金メダルinイタリア」では、冒頭で師匠・出川からじきじきに丸太アクションをほめられる。どうやら一皮むけたらしい堀田は、当時専属モデルを務めていた『CanCam』の編集部で、「茜良くやった!」と早速話題が広まっていることを報告した。

これだけ身体を張れるというタレントの存在はとても貴重だし、揺れる丸太アクションは、もはや師匠超え認定していいと思う。でもそれがバラエティ番組の笑いのためには何でもやるという貪欲さというより、むしろその身体から繰り出される運動そのものに身を委ねる潔さだから素晴らしい。

それが堀田をアクション俳優とする最大の理由なのだけれど、ここでアメリカ映画に目を向ける。ジョン・カーペンター監督の傑作ホラー映画『ザ・ウォード/監禁病棟』(2010年)でとにかくキレの良いアクションを基本所作としていたアンバー・ハードと比肩すべきではないかとぼくは思う。

同作のハードが冒頭から走る状態でひときわ輝くように、堀田もまた揺れてることで傑出した存在となる。別に派手な動作だけがアクションではないのだ。堀田は、より本質的意味でのアクション俳優といえる。『好きなオトコと別れたい』では、浩次とダラダラ過ごした週末から迎えた月曜日の朝、急いで出勤準備をするとき、これは次の場面で郁子が外を全速力で走るかなと思いきや走らない。そんな堀田を見て、なるほど、これは第2話以降、かの平均台作戦を上回るだけのアクション的きらめきを密かに温存しているのかもと思ったのだが、どうだろう?

<TEXT/加賀谷健>



【加賀谷健】
コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
 
   

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