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原氏と比べて“我慢ができない”阿部監督。印象的だった「丸の送りバント」

日刊SPA!

3月29日に開幕して以降、セ・リーグは順位変動が激しく、まさに混沌としている状況だ。なかでも、注目されているのが巨人である。昨年は、永遠のライバル阪神に対し、6勝18敗と大きく負け越し。期せずしてリーグ優勝をアシストする形になってしまった。背水の陣となる今シーズンの巨人は、監督が原辰徳氏から阿部慎之助氏に交代。新監督の采配やマネジメント、さらには試合後のコメントに至るまで一挙手一投足が議論の的になっている。
本記事では、これまでプロ野球から高校野球まで野球関係の記事や書籍を幅広く執筆している野球著作家のゴジキが、「阿部巨人」について考えてみたい。

◆打率1位も疑問符が付く采配が

開幕から2週間ほどが経過し、各チームのメンバーが固定されつつある。巨人はチーム打率と防御率がリーグ1位(4月11日時点)だが、戦いぶりをトータルで見るといまだに苦しんでいるように見える。

その大きな要因は、野手陣の起用を中心とした采配面。新監督の阿部氏が頭を悩ませていることが伺える。印象的だったのは、4月5日DeNA戦の采配だ。1点ビハインドの場面で、先頭打者の門脇誠がヒットで出塁。次の丸佳浩に出したサインは、送りバントだった。衰えを感じるとはいえ、高い打力を誇る丸に“打たせない采配”は、ナンセンスだと感じた。

これ以外でも選手起用について「我慢」ができない部分がいくつか垣間見えた。具体的には、開幕スタメンを勝ち取ったルーキーの佐々木俊輔は4試合目でベンチスタートに。その後、センターを守っていた浅野翔吾も、9試合目で2軍に落ちる憂き目となる。要するに新人を含む若手選手に対して我慢が全く感じられない。

さらに、昨シーズン二桁本塁打を記録した3年目の秋広優人に対しては、キャンプの時点で必要以上に強いコメントを浴びせ、挙げ句の果てに開幕は2軍スタートだった。期待を込めて発破を掛けるのではなく、ただただ厳しく接してしているだけのように感じる。

◆若手を知り尽くした二岡氏の知見を活かすべき

試合後のコメントを見ても、監督としての自責がない発言が多いため、選手のモチベーションに影響しそうである。

今後期待したいのが、ヘッド兼打撃チーフコーチの二岡智宏氏である。彼には、高橋由伸政権時に打撃コーチとして岡本和真を育成した実績がある。その後は、三軍と二軍の監督を経験しているので、現在所属する若手選手の特徴を深く把握している人物。

阿部政権の「参謀役」としてチームを支えているが、いっそのこと野手陣の起用を二岡氏に一任してしまうことで、現状が打破されるかもしれない。

◆「捕手出身」の視点を活かした投手運用は悪くない

野手の起用法は疑問がわく一方で、投手の起用は素晴らしい。まずは、菅野智之と小林誠司の“スガコバ”のバッテリーを復活させたことだ。菅野は全盛期に近いピッチングを見せている。

リーグ優勝を果たした2019年のように小林を上手く使うことで、近年正捕手だった大城卓三を休息を与えられる。この2人をバランスよく運用していくことは、上位を争ううえでのキーポイントになるはずだ。さらに、前年からの大きな課題だったリリーフ陣を整備し、当面「勝利の方程式」の面々は3連投を避ける方針を示している。

オリックスを指揮する中嶋聡氏のように、捕手出身だからこその視点で投手陣が整備されつつある。実績がある投手の負担が軽減され、夏場にベストな形で戦うことができれば、4年ぶりのリーグ優勝も見えてくる。

◆原氏の1年目はどうだったのか

さて、前任の原氏は巨人の歴代監督としては最多となる監督通算1291勝を記録している。原氏の指導者としてのキャリアは、解説者を経て現場に復帰。ヘッドコーチから長嶋茂雄氏の後を引き継ぐ形となった。長嶋氏の感覚的な采配を継承するように就任1年目はアグレッシブなマネジメントを見せていた。

長嶋政権時、対左投手の試合で出番が少なかった清水隆行を1番打者として抜擢。期待に応えた清水は最多安打のタイトルを獲得し、申し分のない活躍ぶりを見せた。

また、阿部氏を正捕手としてスタメンに固定したことも見逃せない。我慢して起用し続けた長嶋氏の意思を引き継いだのだ。結果的に原氏政権下において、欠かせない大黒柱として君臨するようになった。

投手陣も、先発として伸び悩んでいた河原純一をリリーフに配置転換。これがハマり、シーズンを通して安定したピッチングを見せ、キャリアハイとなる5勝2敗28セーブ防御率2.70を記録した。

◆常勝を求められるとはいえ…

昨年の原氏は次世代を見据え動いていた。門脇や秋広、浅野といった新人や若手選手を起用し、阿部氏バトンを渡したのだ。

巨人の監督は常勝を求められる。しかし、結果が出ていないからといって、浅野や秋広のような未来を担う選手に出番を与えなければいずれジリ貧になってしまう。1年目だからこそ、置きにいくような形ではなく、期待されている若手を活かしていきながら、かつての原氏のように「新しい巨人」を作り上げてほしい。

<TEXT/ゴジキ>



【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55
 
   

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