本作は注意深く作られた映画で、たとえばエルヴィスやプリシラを怪物のように、あるいは単なる犠牲者のように描いて構図を単純化することを避けているが、内面に踏み入らず事象を並べるに留とどめたことで空疎さばかりが強調されることになった。
もちろん、それは意図してそうしていると思うが、結果としてエルヴィスもプリシラも魅力と奥行きを欠いた、空っぽな人間にしか見えなくなってしまった。
そのことで生じる「フェアリー・テイル感」こそがこの映画の目指したところだとすれば、それは成功していると言わざるを得ないが、おとぎ話は何かのメタファーとして機能するのであって、「現実にあった『おとぎ話』の中心はただただ空疎だったのでした」だけでは物足りさが残る。
STORY:エルヴィス・プレスリーの元妻による自伝の映画化。14歳の少女プリシラはエルヴィス・プレスリーと恋に落ちる。両親の反対を押し切りエルヴィスと暮らし始めたプリシラは、スーパースターの色に染まることにすべてを注ぐが……。
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ、ダグマーラ・ドミンスクほか
上映時間:113分
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