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「トー横で取材した子が亡くなり、小説の結末を変えた」橋爪駿輝と呂布カルマが歌舞伎町の闇を考える

日刊SPA!

 トー横が社会問題になって5年以上が経過。トー横キッズたちの振る舞いに眉をひそめる向きは多いが、一方でトー横は〝そこにしかいられない子供たち〟が流れ着く居場所として機能している面もある。この異質なコミュニティをどう考えればよいのか。
 トー横を舞台にした小説『愛しみに溺レル』を上梓した作家の橋爪駿輝氏とラッパーの呂布カルマ氏が、ここトー横で対面。忌憚なき意見を交わしてもらった。

◆居場所がなくても、子供がここに来ていい理由にはならない

橋爪:小説を書き終えてからしばらくぶりに来ました。平日の夕方でも人が集まってますね。

呂布:子供が歌舞伎町の中心ではしゃいでるなんて嘆かわしい。どうしても親目線で拒否反応が出てしまいます。

橋爪:呂布さんは、トー横に否定的なスタンスですか?

呂布:がっつり否定的です。

 市販薬などのオーバードーズや売春が周知されてるのに、野放しの現状が続いてるなんてまったく理解できないです。橋爪さんはいかがですか?

橋爪:トー横の是非は一言では言えないのですが、小説の取材を通してわかったことは、若者にとって間違いなく〝一つの居場所〟になっているという事実。親との折り合いが悪いコや虐待されているコとか、複雑な家庭環境を持ったコが多かったんですよ。

呂布:家庭環境が複雑な点は、もう純粋に同情します。でも、居場所がないからって、子供が歌舞伎町に来てもいい理由にはならない。未成年がクラブに入れないのと同じで、大人の街にガキが来んな!って話です。

◆小説執筆中に、取材していた女のコが亡くなってしまった

橋爪:実は、小説を執筆していた途中で、取材で話を聞いていた女のコが亡くなってしまって。自殺だったらしく。本当にショックな出来事でしたし、救いなんてないんだなって痛感しました。これで救いがある話にするのは、不遜なんじゃないかと、結末を変えました。

呂布:単純に居場所がない若者が集まる場所自体は、あっていいと思うんです。それに、こういう退廃的なものに若者が憧れることって今に始まったことじゃない。

 20年前にも池袋ウエストゲートパークみたいなカラーギャングが集まる場所はありました。でも、トー横は人が死んでるし、深刻な事情が隠れている気がします。

橋爪:そうですね。行政は真剣に取り組んでないなと感じます。東京オリンピック前に、ホームレスを一掃しようと施設に泊まらせて〝隠す〟ことをしていました。トー横の封鎖も同じで、根本的な解決にはならないです。

◆「一回ハマるとなかなか抜け出せない」

呂布:たまに人が死ぬぐらいどうってことないっていうような態度ですよね。……そう考えると、問題はさらに根深いことに気づきました。きっと、社会での子供たちの優先順位が低いんでしょうね。

橋爪:悲しいですが、そんな気がしてきますね。さらにいえば、歌舞伎町のような刺激的な街は、一回ハマるとなかなか抜け出せないじゃないですか。若者ならなおさらです。

 無知な子供を利用するような悪い大人も少なくないですし、居場所を求めてトー横に来ても、結果的に救いのない状態になってしまうんですよね。

呂布:なんでよりによって治安が最悪の歌舞伎町の中心で集まるんだよって思いますね。

◆「トー横」に強い思い入れがあるわけではない

橋爪:ただ、話を聞いてると、トー横という場所に強い思い入れがあるかっていうと、そうでもないんです。

「ここにいたい」というより、「ここにしかいられない」という感覚のほうが強かった。別の居場所があれば、多分みんなすぐそっちに行くと思うんですよね。

呂布:それなら、まずはトー横から遠ざける。家に帰れない原因があるなら、戻らないようにする。

 補導もそうですけど、家に問題があったとしたら原因がある場に戻しても意味がない。そうなると、もう施設とかしかないんじゃないかと思います。

◆「自尊心を身につけてほしい」

橋爪:施設ってどんなイメージですか?

呂布:自分が小さいときは、悪いことしたら親に「戸塚ヨットスクール入れるぞ」ってよく言われてましたけど(笑)。

 トー横にいるような家庭環境が複雑なコは、自尊心が育まれてないと思うんですよ。だから自尊心がつくような、労働や資格を取らせるのがいいんじゃないですか。

橋爪:たしかに、人から頼られてやりがいを見つけられたら、そこが自分の居場所になりますしね。自尊心でいえば、親でなくても、誰か一人でも自分のことをわかってくれてる人がいるかどうかで変わってくる気がするんですよ。そんな場があってほしいです。

◆「トー横にいる10代の若いヤツらって〝宝〟だから」

呂布:なんやかんや言いましたけど、トー横にいる10代の若いヤツらって、ああ見えて〝宝〟じゃないですか。

「お前は日本の宝なんだ」ってことを全然わかってない。ただでさえ子供が減ってるのに何してんだよって。ちゃんと働いて納税してくれよって。

橋爪:「宝」ってすごくいい言葉だと思いました。トー横には、誰からも大事に思われてないと感じている人がかなりいる気がしますし、実際それに近い現実もあったりする。

 どうしても過激な報道ばかりが目立ちますが、トー横のコたちがどんな感覚で生きているのか、これからも注視していきたいです。

【呂布カルマ】
1983年、愛知県名古屋市生まれのラッパー。JET CITY PEOPLE代表。「フリースタイルダンジョン」に出演後、多くのメディアで活躍。昨年、トー横の支援団体主催のイベントに登壇

【橋爪駿輝】
1991年、熊本県生まれ。フジテレビ勤務時代、小説家として’17年『スクロール』でデビュー。’21年に退社。Amazon Originalドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』で長編初監督

取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/ヤナガワゴーッ! 日本駆け込み寺

―[[トー横キッズ]の深い闇]―

 
   

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