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災害時の車中泊…注意すべき点は?お父さんの車の趣味が“ノアの箱舟”に大変身!?

テレ東プラス




誰にも迷惑をかけず、お小遣いの範囲でささやかに休日を楽しむ――。
中年サラリーマンの週末旅を描いたドラマ「絶メシロード」で人気に火がついた車中泊だが、主人公の民生(濱津隆之)のように、奥さんや子どもからはその趣味を理解されない…というお父さんは、きっと多いはず。

ところが、先の能登半島地震では、この車中泊が大きな注目を浴びることに。その背景とは? 車中泊で必要なもの、注意すべき点は? 日本で唯一の車中泊専門誌『カーネル』の大橋保之編集長を取材。災害時の車中泊について、前後編にわたってお届けする。

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自分のクルマについて、車中泊の視点から知っておくことが重要


――能登半島地震で注目を浴びている災害時の車中泊は、いつ頃から行われるようになったのでしょう。

「我々のような車中泊愛好家の間では、新潟県中越地震(2004年)あたりから話題になっていましたが、一般的にクローズアップされたのは、2016年に発生した熊本地震の時でした。
本震後も大きな余震が続いたため、怖くて自宅でも避難所でも寝られない。自宅ばかりか避難所も倒壊した…などの理由で、クルマでの避難生活を余儀なくされた被災者が大勢いらっしゃいました」

――熊本県の調査によると、避難者の6~7割の方が車中泊を体験したそうですね。

「『グランメッセ熊本』という巨大な産業展示場の駐車場が、避難するクルマ2000台以上で満車になったそうです。他の大型スーパーやホームセンターなどの駐車場もしかり。その総数は膨大なものだったと想像されます」

――クルマが一家に2~3台あるのが当たり前という地方の特性もあるとは思いますが、それにしても相当な数です。

「他にもプライバシー面での懸念、乳幼児や体の不自由な方が家族にいる、ペットがいる…といったさまざまな理由があり、“被災者の大半が車中泊避難を選択した”と、熊本地震後の現地取材で聞きました。
地震や台風、洪水などの災害が多発している昨今、クルマで避難生活を送ることは選択肢の一つになってきたと思います」

――能登半島地震のニュースを見ていると、避難所が足りず、整備もなかなか追いつかない。そうなると車中泊避難を選択せざるを得なくなります。

「だからこそ、車中泊について知り、事前に準備しておくことが重要です。まずは自分のクルマについて“車中泊の視点”から知っておくことが必要となります。
実際、ホームセンター『カインズ』さんの駐車場で、参加者に避難生活を想定した車中泊を体験していただくイベントに参加した時も、シートアレンジや災害時に必要なアイテムなど、“実際に体験することで初めて知ることがたくさんあった”という感想を数多くいただきました」
――イベントで伝えたかった重要なポイントは?

「一番は“クルマで避難する”のではなく、“避難生活でクルマを活用する”ということです。避難生活で車中泊をしなくてはいけない状況とは、どんな時なのか? 心身ともにストレスの少ない車中泊を続けるにはどうすればいいのか? ただ寝られればいい、雨露がしのげればいいというわけではなく、“命を守ることが重要”。そんなことをお伝えしようと講義しました。

『カーネル』では車中泊の楽しみ方を提案していて、実は災害時にクルマで避難するということは推奨していないのですが、都心で地震などが起きた場合、どれだけの数の避難所があって、何人収容できるのかといえば、まったく足りていないのが現状です。
実際問題として車中泊を選ばざるを得ない方が大勢いるのであれば、クルマで寝るための正しい技術と知識をお伝えしましょう、というのがイベントの趣旨でした。

“クルマで避難行動を行う”ことに関しては、国や各自治体からガイドラインが出されています。まずは安全第一で、それらを参考にしていただきつつ、いざ避難生活をする際にクルマを活用してくださいということです」

――“避難生活でクルマを活用する”際に、注意すべき点はどこでしょう。

「体が疲弊することはもちろんですが、心にかかる負担がレジャーでの車中泊とは大きく異なります。災害時の車中泊では、先の見通しがつかないことが大きなストレスになるからです。
加えて、狭いシートに座ったまま、長時間同じ体勢で過ごすと足の血液に血栓ができ、エコノミークラス症候群を発症する危険性もある。
熊本地震では、エコノミークラス症候群を発症する人が続出して、亡くなった方も1名いましたが、そうしたことが起きないよう車中泊の技術と知識を身に着けていただきたいです」

――エコノミークラス症候群の予防法は?

「できるだけ足を上げて心臓と同じ高さにして寝ること。就寝時の体勢をまめに変更すること。適度な運動や足のマッサージ、定期的な足の曲げ伸ばし。災害時なので貴重なものではありますが、なるべく水分補給をすることも大切です」

――先ほど「自分のクルマについて、車中泊の視点から知っておくことが重要」と。まずはどんなところを知るべきですか?

「車種にもよりますが、どういうシートアレンジができて、どこに、誰が、何人まで寝られるのかということは、最低限知っておく必要があります。

クルマがセダンのような車種の場合、寝られるのは基本的に運転席と助手席のみ。シートを前に倒してラゲッジルームで寝られるクルマでは、比較的フラットになるものの、今度は荷物の移動するなど、工夫や作業が必要になってくる。

そのため『カーネル』では、まずは実際に車内で寝てみて、就寝人数を把握することをオススメしています。体格差などがありますから、どんな状態になるのか? 実際にやってみないとわかりません。他にも、思ったよりシートの段差が気になる、音や明かりが気になる…など、細かな点も体感できます」


「ちなみに、キャンピングカーの就寝スペースと同様に、大人一人が快適に寝るためのスペースは、横幅は55cm+α、長さは身長+15~20cmが目安です。先のイベントでも“寝られる人数が案外少ない、車内が狭く感じる”という感想が多く聞かれました」

――実際にやってみなければとわからないこともある。車種とともに、家族構成によっても状況が変わりそうですね。

「両親と小さいお子さんならばコンパクトカーでも就寝可能なクルマもありますが、例えば、両親と高校生の長男、中学生の長女という家族構成の場合、ワンボックスカーやミニバンでない限り、4人は寝られません。車内で寝られない家族については、避難所へ行くか、テントやタープなどを用意することを考える必要があります。

我が家もそうですが、年頃の娘がお父さんと並んで寝る…というのもなかなか難しいでしょうから、車内の配置も想定する。より防犯やプライバシー対策が重要になる女性がクルマで、男性がテントというように、事前に振り分けを考えておくことも大切です。

こうしたさまざまな事前準備が、災害時の心の余裕やストレスの緩和につながります。普段から車中泊をキャンプやレジャーとして楽しみ、合わせて、災害時のシミュレーションもしておくといいでしょう」

備えあれば患いなし――。来る災害に備え“避難生活でクルマを活用する”べく、車中泊の正しい技術と知識を学んでおくことが大切ということがよく分かった。

3月30日(土)正午に公開する後編では、必要なアイテムや季節ごとに注意する点など、具体的な車中泊の技術や知識をナビゲートする。

【大橋保之 プロフィール】
1972年生まれ。愛知県出身。「カーネル(株)」代表取締役社長。車中泊を楽しむ雑誌『カーネル』(年6回発行)の編集長。アウトドア情報メディアサイト「SOTOBIRA」も運営。車中泊、キャンピングカー、キャンプ、登山など、アウトドアに関するオリジナル記事を展開中。著書に『やってみよう! 車中泊』(中公新書ラクレ)などがある。

(取材・文/橋本達典)


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