「爆弾を作ってノーベル賞か?」(グローブス)「アルフレッド・ノーベルはダイナマイトを発明したじゃないか」(オッペンハイマー)という皮肉っぽいせりふのやり取りがあったが、学者としての研究開発への欲望と、結果的に大量破壊兵器を作ってしまった後悔という二律背反するジレンマが、オッペンハイマーという人物を描く上での根幹になっている。
そして、原爆の開発は、対日本というよりも、対ナチスドイツを念頭に置いたものだったこと。だからこそユダヤ人であるオッペンハイマーは必要以上にのめり込んだ。あるいは、戦後のソ連との冷戦構造による反共、赤狩りの犠牲者としての側面など、知られざるエピソードが描かれ、興味深いものがあった。
また、オッペンハイマーは、ある意味、変人であったという点では、“コンピュータの父”と呼ばれたイギリスの数学者、アラン・チューリングを描いた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14)とも通じるものがあると感じた。
原爆を投下された日本では、“原爆の父”を描いた映画だけに公開が危ぶまれたが、一方的にではなく、多面的な要素から原爆開発を捉えたこうした映画こそきちんと見せるべきだと感じていたので、公開は喜ばしい。
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『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』(3月29日公開)
真夏のニューヨーク。大勢の人々が海水浴を満喫する中、海の向こう側から突如として巨大な氷柱が大量に現れ、街は一瞬にして氷に覆われる。
ゴーストバスターズとしてニューヨークの人々をゴーストたちから守ってきたスペングラー一家は、その元凶が全てを一瞬で凍らせる「デス・チル」のパワーを持つ史上最強のゴーストであることを突き止め、戦いを挑むが…。
1980年代に一大ブームを巻き起こした「ゴーストバスターズ」シリーズの第3作として製作された『ゴーストバスターズ アフターライフ』(21)の続編。
『モンスター・ハウス』(06)のギル・キーナンがメガホンを取り、前作で監督をしたジェイソン・ライトマンがキーナンとともに脚本を手がけた。そんなこの映画は、前2部作を監督したジェイソンの父でもある故アイバン・ライトマンにささげられている。
舞台を、前作のオクラホマの田舎からオリジナルのニューヨークに戻し、前作からのポール・ラッドをはじめとするスペングラー一家と、オリジナルメンバーのビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、アーニー・ハドソンという新旧のバスターズが一丸となってのゴースト退治が見どころになる。
つまり、日本のドラマ「不適切にもほどがある!」と同じように、80年代と現代が交錯しながら時代を超えて合体しているところが面白いのだ。
オリジナルで憎まれ役の役人を演じたウィリアム・アサートンが市長に出世していたのには笑ったが、どうせならリック・モラニスにも出てほしかったと思ったのは望み過ぎか。
(田中雄二)