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名優・金城武の魅力を再認識できる映画「スペーストラベラーズ」

HOMINIS

2000年に公開された映画「スペーストラベラーズ」は、「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督が、お笑い集団・ジョビジョバの舞台劇を映画化した作品だ。ジョビジョバは、明治大学の演劇サークルのメンバーが立ち上げ、舞台を中心にテレビでも活躍するなど当時絶大な人気を博した。

本作は、ジョビジョバの舞台『ジョビジョバ大ピンチ』を原作に本広監督が映像化したエンターテイメントムービーである。銀行に立てこもる強盗団と人質が、いつしか奇妙な絆を結ぶ様子をコミカルに綴った作品だ。被害者が犯人との間に心理的なつながりを築くという「ストックホルム症候群」を題材にしている。

強盗をする金城武

(C)2000 フジテレビ・東映・ROBOT

ストーリーとしては、閉店間際のコスモ銀行に、銃を持った強盗団が押し入る。犯人は、同じ孤児院で兄弟のように育った西山保(金城武)、藤本誠(安藤政信)、高村功(池内博之)の3人組。ところが、彼らの計画は支店長の常田(大杉漣)と警備員の庄田(ガッツ石松)が金庫の中に閉じこもるというハプニングであえなく失敗。金庫のロックが解除される翌朝まで、数名の行員と客を人質に立てこもることになる。人質は、寿退職を目前に控えた女子行員の相田みどり(深津絵里)、同僚の清水(甲本雅裕)、客として来店していた電気屋・倉沢(武野功雄)、離婚寸前の深浦夫妻(筧敏夫・鈴木砂羽)、謎の男・坂巻(渡辺謙)の6人。しかし自分を置き去りにして現場から逃げ出した婚約者・野々村(浜田雅功)への怒りに我を忘れたみどりが功のライフルを撃ち、パトカーを炎上させたことから、事件は日本全土を揺るがす大事件になってしまう。そこで保は、あるアイデアを思いつく。SFアニメ「スペーストラベラーズ」のキャラクターに自分たちを重ね合わせ、人質に協力して自分たちを強大な犯罪組織だと欺いて警察を混乱させるという前代未聞の作戦だった…。

(C)2000 フジテレビ・東映・ROBOT

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奇想天外なストーリーながら、本作の面白さは人質たちが彼らの作戦に協力し、銀行の中に奇妙な連帯感が生まれていくという展開にある。さらに「踊る大走査線」シリーズでも見られたような徹底したディテールの作りこみが素晴らしい。わずか数分の架空のアニメのために本格的なアニメ映像をつくったり、架空のロックバンドのためのCDからコスモ銀行のマスコット、宅配ピザの設定まで、徹底的に虚構の世界を作りあげる手法でリアリティが抜群。視聴者を力強く引き込んでくれる。

俳優陣では、強盗のリーダー役である保を演じた金城武がやはり光っている。香港映画「恋する惑星」(1994年)などで国際スターとして活躍していた金城は、フジテレビ系のドラマ「神様、もう少しだけ」(1998年)の大ヒットで日本でも爆発的な人気を誇っていたが、顔立ちの美しさに加えて独自の色気を放ち、ミステリアスな個性が持ち味だ。本作のようなコミカル作品でもじつに魅力的で演技の上手さが際立っている。また、ライフルを豪快にぶっ放す深津絵里も抜群の存在感を見せつけてくれた。

ほかにも、池内博之、安藤政信といった人気どころに加えて、渡辺謙や大杉漣、筧敏夫、浜田雅功といった豪華な顔ぶれが揃っている芸達者な俳優たちによる演技合戦も大いに見ものだ。

脚本を担当したのはフジテレビ系のドラマ「若者のすべて」(1994年)や「ビーチボーイズ」(1997年)をヒットさせた岡田惠和。本作の翌年にはNHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」を手掛けるなど、当時から大変なヒットメーカーだった。

本作は原作の良さを生かした個性的なストーリーを軸に、俳優陣を巧みにキャスティングし、凝った演出で最後まで飽きさせない一級のエンタテインメントに仕上がっている。20年以上前の作品だが、今見てもまったく色褪せない。そんな「スペーストラベラーズ」は、国際的な名優でありながらも、出演作品が少ないことで知られる金城武の魅力を堪能できる貴重な一作といえるだろう。

文=渡辺敏樹

 
   

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