そのスピード感と、これまでになかった役どころに、出演者も神経をすり減らしていたという。
「ロケの本番中、見学に来た一般の人が吉田栄作さんの視線の先に入ってしまって『どかしてくれ!』と、スタッフに叫ぶこともありました。私は吉田さんとドラマで共演するのが3作目だったから、なんでもツッコミを入れられる関係だったのですが、あのときばかりは近くにいられなくて……。あとで吉田さんから『お前、何いなくなっているんだよ』って言われたりしましたけど(笑)」
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■心身ともにこたえた“悪を貫く演技”
辰巳琢郎は、田中さんをペットのように扱い、支配する役どころ。クリームシチューを指でぬぐい、田中さんになめさせるシーンが記憶に残っている人も多いはず。
「辰巳さんも悪役は初めてのようだったし、元来、真面目な方なので、このシーンはすごく緊張されていました」
田中さん自身にとっても“悪を貫く演技”は心身ともにこたえたという。
「ちょうど『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』(フジテレビ系)にレギュラー出演していたころ。『もう誰も愛さない』の役を引きずっているからか、内村(光良)さんには『スタジオに入るときは顔が怖くて、話しかけられない』と言われたりしました。でも、ドラマで悪女を演じる一方で、同じ時期にコントのお仕事をすることは、いい気分転換になったんです」
田中さんにとって、演技の幅を広げてくれた作品だった。
「とはいえ、イメージが定着してしまって、その後に来る仕事は悪女役がほとんどという時期も。ちょっと悲しかったですね(笑)」
【PROFILE】
田中美奈子
’67年、千葉県生まれ。多数のドラマ、バラエティ番組で活躍する傍ら、パラオ共和国親善大使、日本RV協会公式キャンピングカーアンバサダーに就任。愛玩動物飼養管理士などの資格を持つ