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『らんまん』長田育恵の手腕が凝縮された第10週 時代と伴走する朝ドラだから描けるもの

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 『らんまん』第10週がはじまったときは、突如万太郎が印刷工場に弟子入りし、印刷を学ぶという、ちょっと寄り道週のように見えたが、とんでもない。本質の詰まったエピソードだらけの重要な週であった。新しいことをはじめることのすばらしさを描きながら、こぼれていく古いものへの敬意、歴史があってこその現在であり、未来であるということをなんとか物語に遺そうとしている作家の心を感じるような熱い週であった。

 大畑(奥田瑛二)のセリフ「一番新しい時代の切っ先。その静かな指先から皆の度肝を抜くもんを生み出しているんだ」は絵筆の切っ先かもしれないが、作家の筆の切っ先だと感じた。

 長田育恵は映像作品の脚本はまださほど多いとは言えないが、演劇の脚本を数多く描いていることもあって、達者だと感じる。馬車のくだりは、植物学を極めるまでは寿恵子に会わないと誓った万太郎と、その真意を知らず嫌われたのではないかと気に病む寿恵子の偶然のすれ違いという、わくわく感を作りながら、時代の変化も見せている。まるで時代の変化の濁流に万太郎と寿恵子が揉まれ、引き離されていくようにも見えてくる。テーマ性もしっかり伝えながら、盛り上げ方もじつにみごと。男性主人公ながら、ヒロインの人生も対等に描くのは『エール』(2020年度前期)でも試行錯誤されていたが、それをブラッシュアップしたかのような出来栄えで、これもまた、「新たな場所に根付いて、そして芽吹いていくのじゃ」という形の一例のようにおもう。朝ドラこそ、時代の変化とどう伴走していくか試行錯誤しているシリーズであるのだから。

(文=木俣冬)

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