人生を大きく変える幸運と不幸が、人生の若い時期にやってきたマイケルの境遇は数奇なものではあるが、よく考えてみればそれは、多くの人にとって“ひとごと”ではない。誰もが予想外のことが起き得るのが人生なのだ。われわれもまた、人生のなかでさまざまな浮き沈みを経験する。マイケルの若い時代のキャリアは、そんな一つの縮図となっていたともいえるのではないか。
われわれもマイケルと同じように年を重ねて、以前のような活躍ができなくなっていくことは避けられない。しかし、人生はそれでもまだ続いていく。それなら、その範囲で精一杯やれることをやって充実した日々を送っていけばいい。マイケルが短い時期に辿った喜びや悲しみ、苦悩や決断などから得た考え方や発言の中身は、そういう意味では誰にとっても有益なものになり得る。そんな彼の姿を正面から映し出した本作『STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー』は、多くの人にとって観る意義のあるドキュメンタリー作品になっているといえるだろう。
(文=小野寺系)