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マイケル・J・フォックスから学ぶ“生き方”のヒント 観るべきドキュメンタリー『STILL』

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『STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー』画像提供:Apple TV+

 映画ファンならずとも多くの観客にいまも愛されている『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ。その主人公マーティ・マクフライを演じていたのが、マイケル・J・フォックスだ。世界中の観客に愛されるようになった彼は、第1作公開の1985年から、およそ10年ほどの間、ハリウッドの大スターの地位で輝いていた。

参考:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが後世に与えた影響 3部作3週連続放送を機に考える

 しかし、あれほど人気を集めていたマイケル・J・フォックスは、映画やメディアなどの出演を極端に減らすことになる。それは、1990年頃より発症したパーキンソン病の症状が悪化し、その事実を公表することになったことが原因である。

 『STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー』は、そんな厳しい状況に追い込まれてしまったエピソードを中心に、彼のこれまでの人生を、本人への直接の取材を基に振り返るドキュメンタリー作品だ。さまざまな苦悩が想像される裏には、実際どのような感情が渦巻いていたのか。ここではそんな本作の観るべきポイントや、多くの人も共有できる生き方のヒントについて考えていきたい。

 本編で本人が語るように、幼い頃は落ち着きがない子どもで、ひとところにとどまっていられず両親を困らせていたというマイケル。現在の彼は「そんな僕が病気のために“STILL(静止)”していられないようになるとは、人生の皮肉だね」と語っている。

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 パーキンソン病の症状の一つとして挙げられるのは、意志に反して身体の一部が震えてしまうというもの。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で大スターとなったマイケルは、その後人気が沸騰して数々の映画に出演することとなるが、病気に気づいて症状が出始めてからは、周囲の人々にその事実を隠し、身体の震えを誤魔化したり、現場の裏で密かに薬を飲んで症状を抑えるなど、じつは孤独な闘病生活を送っていたことを明らかにしている。

 本作では、過去のいくつもの出演作の映像を振り返っていてく。そこでは確かに腕や手が震えてしまうのを隠すため、撮影中に小道具を手に持ってぶらぶらしたり、脇に手を挟んで動かないように耐えるなど、それと知っていれば理解できる、必死の苦労が確認できる。妻となった女優のトレイシー・ポランは、この秘密を共有せねばならず、長年の間苦労をかけたということもマイケルは述懐する。

 このような状況に追い込まれてしまったのには、ハリウッドの魔力が影響していることは言うまでもないだろう。演技で身を立てることを志し、ロサンゼルスに単身乗り込んだものの、20代半ばまで仕事に恵まれずくすぶっていたマイケルにしてみれば、やっと掴んだ大スターの座を手放すことはできなかった。石に齧りついてでも病気を隠し通さねばという思いがあったことは理解できるところだ。その背景には、病気に対する世間の偏見も影響していたことは間違いない。マイケル本人も、「病人を観て笑ったりできないだろ」と考えていたという。

 同時に、『ティーン・ウルフ』(1985年)、『摩天楼はバラ色に』(1987年)、『バラ色の選択』(1993年)などなど、過去作の映像の数々から、マイケルの若き日々の美しさには圧倒されるものがあったことを再認識させられる。子どもの頃から背が伸びず、顔も童顔だったため、地元の学校ではいじめっ子のターゲットになっていたという、まさにマーティ・マクフライのパーソナリティを想起させられる彼が、逃げ場所として入った演劇部で、演技という芸術に出会い、実年齢よりも若い役を巧みに演じられたという“強み”にも納得感が漂う。

 タフガイや背の高いスターの多い環境で、かつての男性的な魅力にはない部分で認められたマイケルは、当時における新時代の象徴でもあったといえよう。現在は60代になって病気の進行と闘っている彼だが、そのチャーミングさや持ち前のユーモアは健在で、取材にも機知に富んだ返答をしているのが嬉しい。

 病気の公表後には精神的重圧から解放され、パーキンソン病の役を演じたり、手に持っているコーラのボトルが病気の震えでシェイクされて、蓋を開けると中身が飛び出してしまうというギャグを作品内で披露するような、その後の活躍や、慈善活動への参加が語られるなど、大スターとしての地位を失ってからの人生も充実していることが語られていく。現在の彼がさまざまな活動をしたり、人生を楽しむ姿を見せることは、病気に対する人々のイメージを変えることにも繋がるはずなのだ。マイケルは、いまも新しい時代を切り拓く存在なのである。

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