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『らんまん』で知る近代化政策の陰と陽 タキの物悲しい背中に感じる“時間”の的確な描写も

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『らんまん』写真提供=NHK

 近代化政策が進む一方で生まれ出した、陰と陽。『らんまん』(NHK総合)第42話では、「峰屋」が増税に苦しむ様子が描かれた。

『らんまん』を成立させた神木隆之介の愛され力

 西南戦争による財政悪化、地租改正もうまくいっていない。政府がそういった背景で嗜好品の酒の課税を重くすることに対し、「心配ない」と口では言う万太郎(神木隆之介)だが、その表情には心配が表れていた。土佐の実家、そして当主の役割を担う姉の綾(佐久間由衣)と祖母のタキ(松坂慶子)に想いを寄せる。

 しかし、「峰屋」の実情は万太郎が想像するより遥かに悪かった。これまで酒が出荷された時点で課せられていた税金が、今度は酒を造った時点で課税される「造石税」に変わってしまったのだ。横暴な役人は峰屋に踏み入り、古酒を密造酒と難癖をつけ、料理酒までも没収する始末。味が決まらないと売れ行きがわからない酒蔵にとって、「造石税」そのものがひどい話になのに、今年作った酒を今年中に売り切らなければいけなくなるのだとしたら、寝かせた美味い酒も作れなくなる。この事態に綾は頭を抱えていた。それに加え、タキの様子も彼女の気がかりだった。

 以前のタキなら、役人があんな態度でやってきたら怒って何かしら抵抗をしていただろう。ところが、さらに歳をとった彼女は税金の改めで役人がやってきたことも「そう」の一言で済ませてしまう。それより、東京にいる万太郎から届いた手紙の方に関心があった。友達ができたこと、ビフテキを食べたこと、東京大学の植物学教室に出入りを許されたこと。万太郎が毎日忙しくしている様子に、心底喜ぶタキ。彼が当主を継ぐ、継がないで揉めていた時を振り返ると、本当はタキもこんなふうにただ孫が幸せな日々を過ごすことを一番に願っていたのだと改めて実感する。あの頃より幾分か小さくなった彼女の背中を、さすってあげる綾。「峰屋」の話に興味を持てないタキに、「おばあちゃん」と声をかけて茶屋に誘う。『らんまん』は、こんなふうに作品の中で経過した“時間”がしっかり感じられるからこそ、そこに物悲しさもある。

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 一方、万太郎は政府が酒屋から金を搾っても国の力を外国に示せるわけではないと熱弁。自分の使命は改めて、自信が植物学者として精進し、雑誌で世界の度肝を抜かせることだと、そのことの方が遥かに国力を示すことになると実感する。姉から届いた手紙には、タキの心臓が悪くなっていることは触れられていない。ただ、みんなが息災であると、そして万太郎たちの健康を願う内容だった。万太郎も教室で感じた孤独は手紙で教えていない。お互いが苦労を隠しあう様子は、だからこそ互いに心配をかけ合わないようにする相手への気遣いの表れだ。切ないが、綾が苦労を隠すからこそ万太郎は自分の道に満身することができるし、万太郎もただ無邪気に自分の興味のためだけではなく、母との思い出を通して“他に向けて何かをする”ことへの重要性に気づき、成長している。その成長は、田邊(要潤)との会話を通しても実感できるものだ。

 植物学雑誌創刊の許可を得るため田邊(要潤)と話す機会を伺っていた万太郎は、教授が機嫌の悪い時を避けるだけではなく、彼が興味を持つ西洋美術を話題にすることで逆に気分を良くさせた。自分の要望を押し通すのではなく、相手の心、望むものや興味に寄り添って距離を詰めるやり方は、ある意味彼がいやいややっていた当主時代に培ったコミュニケーション能力とも言えるだろう。そんなところからも、万太郎にとって「峰屋」が意味のある場所だったことが伺え、両者が体現する陰陽をより切ないものに感じさせるのであった。

(文=アナイス)

 
   

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