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『ホテル・ルワンダ』英雄の釈放に見る、カガメ大統領の巧みな政治手腕

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 映画『ホテル・ルワンダ』のモデルとなったことで知られるルワンダのホテルの元副支配人、ポール・ルセサバギナ(Paul Rusesabagina)は、テロ罪で投獄されていたが先日釈放された。恩赦の判断にみる、カガメ大統領の政治手腕とは。

◆ルセサバギナの釈放
 ルセサバギナがされたのは2020年8月。彼はアメリカのグリーンカードを保持し、テキサス州で家族とともに暮らしていたが、アメリカからドバイ経由で講演先のブルンジに向かう旅の途中で、さらわれるような形でルワンダに移送され、ルワンダにてテロ容疑で逮捕された。彼は、ルワンダでの虐殺後、ベルギーで難民申請し、ベルギー国籍を保持。1996年、彼に対する暗殺の企てがあって以来、ルセサバギナはルワンダを離れていた。

 ルセサバギナは、事実上、独裁政権体制を続けるカガメ大統領を公に批判してきた。当局は、カガメ政権に反対するルワンダ民主変革運動(MRCD:Rwanda Movement for Democratic Change)とその軍部である反政府武装勢力FNL(Forces nationales de libération:National Liberation Forces)への関与、FNLが起こしたとされるルワンダ南部でのテロへの関与にかかわる13の容疑で、ルセサバギナを逮捕。その後、25年の禁固刑が言い渡され、彼は服役していた。今回の釈放の交渉には、アメリカ政府とともにカタール政府が関与した。

◆カガメ大統領の実用主義的アプローチ
 西側の議論の文脈においては、映画『ホテル・ルワンダ』に描かれた人道的な英雄が、不当な容疑で逮捕・投獄され、家族や人権活動家の働きかけによってルセサバギナが釈放されたという勝利の物語かもしれない。一方で、ルワンダ側の視点から見ると、今回の釈放の判断には、カガメ大統領の巧みな外交戦略が見え隠れするとの指摘もある。

 恩赦を求める公式文書において、ルセサバギナは、結果的にFNLの暴力をもたらしたMRCDへの関与を悔いているという表現によって、その関与を認めているが、暴力への関与は否定している。そして、恩赦が受け入れられた場合は、余生をアメリカで静かに過ごし、個人的もしくは政治的な野望は持たず、ルワンダの政治に関する問いも過去に葬るという意思を表明した。これは、ある意味、罪を認めるという行為であり、ルワンダ政府の逮捕を正当化するものとも捉えられる。

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 逆に言えば、カガメ政権からしてみれば、逮捕と投獄は西側が論ずるような「不当な勾留」ではなく、国家の安全保障に対する正当な行為であり、脅威が脅威でなくなれば、当初の判断を覆すということも矛盾したものではない。カガメ政権は、ルセサバギナの一件を解決することで、アメリカとの関係を正常化したいという思惑があったようだ。さらに、虐殺という歴史を経たルワンダにおいて、罪を赦すという原則が根付いていることも、カガメ大統領の実用主義的なアプローチを促すものであったようだ。

 ルセサバギナは釈放されたものの、無罪となったわけではない。ルワンダの司法大臣によると、彼には、2018年に起こったテロの犠牲者に対する補償金の4億ルワンダ・フラン(約4800万円)を支払う責任があるとしている。

 
   

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