――初めてプレイしたゲームもそのあたりのタイトルになりますか?
柳:そうですね。あっ、でも広い意味のゲームなら「たまごっち」が最初かもしれません。私の世代は第2世代になるのかな? 大人気でなかなか手に入らなくて。どのシリーズかは覚えていないんですが、発売日に父が行列に並んでくれて、運よく手に入れられたんです。それをいつも2個ぶらさげて同時進行で育てていました。いま考えると、頑張って並んでくれた父に感謝ですね。
――子どものころに1番ハマったタイトル・シリーズと聞かれたら、何を挙げますか?
柳:うーん、悩むけど、やっぱり「ポケモン」ですね。特に『ポケットモンスター ルビー・サファイア』と『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』はよく遊びました。両方のカラーを買ってもらって、姉と2人でわけあうんです。私がプレイしたのは、ルビーとパールでした。
――お姉さんと対戦したりも?
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柳:はい、でも姉とは遊び方がちょっと違って。姉はひとつのパーティーを全力で育てるタイプで、全員をレベル100にしちゃうんです。一方で、私は集めたポケモンたちを分け隔てなく育てたいタイプで、ほとんどがレベル80止まりなんですよね。だから対戦しても絶対勝てない。でもほかに遊ぶ人もいないから、毎日のように姉と対戦し続けるんです。で、負けて不機嫌になるのが私のルーティン(笑)。
――辛い戦いですね(笑)。
柳:そうなんですよ。「図鑑のコンプ率なら負けないのに!」と思いながら、毎日ボコボコにされてました。アンノーンも全種類そろえたのに、全然報われない(笑)。
――お気に入りのポケモンはいますか?
柳:フライゴンが大好きです。最新作の『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』に登場しないと知ったときは、ちょっと悲しかったですね。次の作品では絶対に復活してほしいです。
・「ゲーム実況」『Vainglory』との出会いから、協力・対戦ジャンルに傾倒
――その後、現在にいたるまでずっとゲームに熱中されてきたんですか?
柳:いえ、学生時代には部活動を理由に少し離れた時期もありました。またプレイするようになったのは数年前からです。
――再開にあたって、なにかきっかけのような出来事があったり?
柳:ゲーム実況を観るようになり、情熱が復活しましたね。
――最近はどのようなタイトルをプレイしていますか?
柳:『Apex Legends』や『ホグワーツレガシー』、『Dead by Daylight』などで遊んでいます。
――子どものころにハマったタイトルとは打って変わり、コアゲーマー向けのタイトルが並びましたね。
柳:そうなんです。ゲーム実況で熱が戻ったこともあり、少し選ぶものが変わってきました。大人になってからはオンライン上で別のプレイヤーと協力・対戦するゲームがお気に入りですね。
――お見かけした情報によると、スマートフォン向けのMOBA(※1)『Vainglory』もやっていらっしゃったとか。
柳:かなりハマっていましたね。相当やり込みました。私はローム(※2)というポジションを担当していて。楽しかったんですけど、サービス終了になってしまいましたよね。
――対戦ゲームを好きになったことのルーツは、ここにもあるかもしれませんね。
柳:言われてみればそうですね。人と戦うことの楽しさを覚えてしまったために、協力・対戦ジャンルから抜け出せなくなりました。
――いつもどのようなタイミングでゲームをプレイしていますか?
柳:日によりますが基本的には夜の12時から朝の4時、5時くらいまでが私のゲーム時間になっています。
――では、お仕事から帰宅して一段落してからの時間をゲームに充てているんですね。
柳:そうですね。いつでもプレイできるようにPCを起動しておくのが、帰宅してからの決まりごとです。
――お仕事に支障が出ない範囲という条件はありつつ、割とまとまった時間が取れているんですね。
柳:あらためて振り返るとそうですね。自分でも気づいていませんでした。ゲームしていない時は「はやくコントローラー握りたい!」が口癖になっていますね(笑)。
※1…Multiplayer Online Battle Arena(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)の略語。複数のプレイヤーが2チームにわかれ、味方と協力しながら敵の本拠地の攻略を目指すリアルタイムストラテジーのサブジャンル。
※2…味方のサポートを主な役割とするポジション。後期には「キャプテン」に改称された。
・マイベストゲームは「選べない」。各タイトルに詰まったたくさんの思い出
――ここまでさまざまなタイトルの名前が挙がりましたが、柳さんのゲーム人生すべてを振り返って「マイベストゲーム」を選ぶとすると、どのタイトルになるんでしょうか?
柳:えー、難しい! ひとつだけに絞れない! 『モンスターハンター:ワールド』も、『ARK: Survival Evolved』もやり込んだし……。でも『Apex Legends』も捨てがたいです。ひとりで頑張って、少しずつうまくなった思い出があるので。その3作のうちのどれかになると思いますね。
――『Apex Legends』をずっとひとりでプレイとなると、けっこう骨が折れそうですね。人といっしょに遊ぶより、ひとりでじっくりゲームに向き合うことのほうが多いんですか?
柳:私、自分から人に遊ぼうって言えないんです。「相手も忙しいだろうし、私が誘ったから仕方なく遊んでくれてるんじゃないだろうか」とか考えてしまって。だから誘われなければひたすらひとりでプレイしています。考えすぎだとは思うんですけど、なかなか直らない性格ですね。
――いま周りにいるご友人は、ゲーム好きな方が多いですか?
柳:そうですね、ゲームがきっかけで仲良くなった方がほとんどです。一昔前はゲームというと男の子の遊びというイメージでしたけど、最近は女の子でもゲームが趣味だと公表する方が増えたじゃないですか? そのおかげで私みたいな引っ込み思案でも、ゲームをきっかけに仲良くなれることが増えてきました。
――そうやってできたご友人といっしょにゲームで遊ぶことも?
柳:もちろんあります。『ARK: Survival Evolved』は友人に誘ってもらってプレイしたタイトルですね。いっしょに遊んでいると没頭してしまって、気づいたら12時間くらいプレイしていることもありました。夕方からスタートして、気づいたら朝になっていたり。ヘビーゲーマーの時間の使い方ですよね。
――はっきりとした目的があるゲームではないので、なんとなくずっとプレイできてしまうところが『ARK: Survival Evolved』にはありますよね。
柳:そうなんですよね。私はテイムしたモンスターに変な名前をつけて、ペットみたいにかわいがっていました。友人に「戦いに行くよ!」と言われても、「かわいそうだから絶対に嫌だ!」って(笑)。私にとっては育成シミュレーションでしたね。個体もじっくり選別したりして。
――思わぬところで「ポケモン」シリーズや『たまごっち』とつながりました。
柳:なるほど、私の育成に対する情熱はそこから始まっていたんだ(笑)。ついに恐竜も育てるようになってしまいました。
・配信ではイメージとのギャップを楽しんでほしい
――最近はゲーム配信にも積極的にチャレンジされていますよね。どのようなきっかけで始めようと考えたのですか?
柳:ずっとやりたかったんです。というのも、オンラインで開催されているカスタム大会に出てみたくて。声がかかるのは配信者の方だったりするので、出たいなら自分も配信しないとダメだ、と。
あとは『〈RAGE PARTY 2021〉Apex Legendsベストトリオ決定戦』に出場したとき、私の視点が観たいという声が多くあったことも理由になりました。チームメンバーのゆふなさん、黒田瑞貴さんはそれぞれのチャンネルで自分の視点を配信していて。「私なんかのプレイでも観たいと言ってくれる人がいるんだ」と知れたことが一歩踏み出す勇気にもなりました。
――始めてみてどうでしたか?
柳:すっごく楽しめています。素のリアクションをしてしまっているんですが、視聴者さんからはその姿も新鮮でおもしろいと言っていただけて。第一印象ではクールに思われがちなんですが、配信で見せている姿がほんとうの私です(笑)。そのギャップを楽しんでもらえたらうれしいですね。
――負けても楽しそうにプレイしている姿が印象的でした。
柳:エンジョイ勢なので負けても不機嫌になることはなく、基本的に笑っていますね。カメラがオフでも、身振り手振りをつけてはしゃいでいます。
――ありのままの姿を見せることに周囲から反対意見はありませんでしたか?
柳:まったくありませんでしたね。私も心配だったのでマネージャーさんに相談したんですが、「もっと素の柳美稀を出していくべき、むしろやった方がいい」と背中を押してくれました。
――映像作品や写真ではわからなかった柳さんの親しみやすさが視聴者さんにも伝わるといいですね。
柳:ほんとうにそう思います。実際に配信を始めてからのほうが、いっしょに遊ぼうと誘ってくれる方が増えました。
――楽しいこと以外にもメリットがあったんですね。
柳:はい。最初は仕事にマイナスの影響があるかもしれないと躊躇していましたが、いまでは始めてみて良かったと思っています。
・3月31日公開の『映画刀剣乱舞-黎明-』。原案ゲームの実写映画化第2弾に出演するにあたり、苦労したポイントは
――3月31日には柳さんが出演した『映画刀剣乱舞-黎明-』が公開となります。原案がゲームであることはご存知でしたか?
柳:はい、存在は知っていました。
――情報が解禁されたときには、柳さん演じる「実弦」の独特のポジションやキャラクター、設定などが話題になっていましたね。
柳:「ギャル審神者」や「高速バス」、「はかた号」といった「実弦」にまつわるワードがたくさんトレンド入りしていましたよね。トレンド1位になるのははじめてのことだったので、とても驚きました。
――原案ゲームの映画に出演するにあたっては、さまざまな想いがあったかと想像します。撮影で苦労したポイントなどはありましたか?
柳:刀剣男士のみなさんなど、原案に登場するキャラクターが多いなかで、映画オリジナルのキャラクターである「実弦」をどのように演じるべきか、この点には戸惑いました。けれど、これまでの出演作品で尖った人物を演じさせていただく機会が多かったので、「このキャラクターは私にしかできない!」と、自信を持って撮影に臨みましたね。
また、「実弦」はいつもハイテンションなキャラクターで、シリアスなシーンでも空気を読まずに会話に入っていくんです。でも、普通は場の雰囲気に気持ちが流されてしまうじゃないですか? 特に私は引っ込み思案なところがあるので、温度やタイミングを読まないことが難しくて。それを覆すために、撮影中はカメラが回っていなくても、ずっとハイテンションでいるように心がけました。共演者さんにはいつもハイテンションなやつだと勘違いされていると思います(笑)。
・ゲームがなければ、いまの柳美稀は存在していないかもしれない
――小学1年生から現在まで、約20年間のゲーム遍歴のなかで、プレイしていて良かったと思えた瞬間はありますか?
柳:もちろんあります。ゲームをプレイしていたことで繋がれた友人がたくさんいるので、ゲームにはいつも感謝していますね。最近は現場でご一緒するスタッフさんとゲームについてお話することも増えました。コミュニケーションの面ではゲームに助けられてばかりですね。
――仕事の面ではいかがでしょう。
柳:ゲーム好きだと公言していたことで、『〈RAGE PARTY 2021〉Apex Legendsベストトリオ決定戦』にも出場でき、新しい分野に挑戦する機会をいただけました。
また、ゲームのストーリーや設定が新しい視点をもたらしてくれることもあります。たとえば、『The Last of Us Part II』からは、物事の善悪はどちらか片方の目線からだけでは語れないことを知りました。
私の仕事は別の誰かを演じることです。これまでは尖った役柄が多かったので、そのような経験が演技に直接的に生きることは少なかったですが、これから長く俳優を続けていけば、プラスにはたらく機会も増えてくると思います。仕事、プライベートを問わず、ゲームは自分の人生に欠かせないものですね。
――最後に、「今後こんなことに挑戦してみたい」など、ゲームに関連する目標があれば教えてください。
柳:オフラインのゲームイベントに、プレイヤーとして参加したいです。活躍するたびに歓声を肌で感じてみたいですね。ゲストで呼んでいただけるのも、それはそれでうれしいことではあるんですが、プレイヤーとして参加してみたい気持ちが強いですね。いつでもオファーお待ちしています(笑)。
(取材・文=結木千尋、写真=梁瀬玉実)