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『リバオケ』と『のだめ』、『星降る夜に』と『silent』 比較を見事に払拭した1月期ドラマ

Real Sound

 同じ時代に同じ題材を扱いながらも、『silent』と『星降る夜に』のアプローチは真逆のものとなっていた。それは脚本家の個性に寄るところが大きい。

 『silent』の脚本を手がけた生方美久は、2021年にフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した新人。本作が連続ドラマデビュー作となる新鋭で、『silent』の世界観には彼女の作家性が強く反映されている。タイトルの通り本作は余白の多い静かなドラマで、音がない世界を生きる佐倉想(目黒蓮)の内面を映像化したような作品となっている。また、恋愛ドラマとしての本作の独自性は登場人物がみんな優しく常に相手を心配するのだが、それゆえ相手を傷つけてしまうという優しさの中にある残酷さが繰り返し描かれていた。

 一方『星降る夜に』の大石静は、1980年代から活躍するベテラン脚本家で、それだけにストーリー展開は練られており、バリエーション豊かだ。本作は産婦人科医の雪宮鈴(吉高由里子)と聴覚障害者の柊一星(北村匠海)のラブストーリーで、手話とスマートフォンなどを用いたコミュニケーションによって二人の仲が深まっていく展開は『silent』とも共通する。だが、柊は『silent』の若者とは真逆で、好きになった雪宮に対して積極的にアプローチする青年だ。

 彼は「遺品整理のポラリス」で遺品整理士として働いているのだが、同僚とも積極的にコミュニケーションを取りながら働いている。この職場で働く描写が実に見事で、途中から一星が聴覚障害というハンデを抱えていることはあまり意識しなくなる。

 おそらく聴覚障害者を弱者として別枠にするのではなく、AVも観るような普通の青年として描いた上で、仕事や恋愛で健常者と関わる様子を自然に描くことが『星降る夜に』のテーマだったのではないかと思う。

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 この2作を見比べると、テレビドラマは脚本家次第で大きく変わるのだと改めてわかる。一見、似たような設定に思えても、作り手や時代背景が変われば、全く違う魅力が生まれるのだ。

(成馬零一)

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