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美輪明宏が映画「黒薔薇の館」で表現する神性と人間性の切り替えと「愛とは?」の答え

HOMINIS

歌手、俳優、声優とさまざまな分野において全て一流の結果を残し、人々に鮮烈な印象を与え続けている美輪明宏。その美貌と美声、唯一無二の存在感で数々の文化人から支持を得ており、中でも三島由紀夫が美輪とのキスシーンがあるという理由で映画「黒蜥蜴」への出演を決めたというのは有名な話だ。そんな美輪の”魔性”が存分に楽しめる作品が、改名前の「丸山明宏」として主演を務めた映画「黒薔薇の館」(1969年)だろう。

妖しげな雰囲気の美輪明宏と田村正和

『黒薔薇の館』©1969 松竹株式会社

同作品は、舞台や映画で人気を博した「黒蜥蜴」に続く、”監督・深作欣二×主演・丸山明宏”の第2弾で、黒薔薇の館に君臨する謎の美女と、組織と警察の両方から追われる青年との死をも恐れぬ”絶対の愛”を描く。

藤尾竜子(丸山)は、佐光(小沢栄太郎)が経営するクラブ「黒薔薇の館」で純愛至上の愛を歌い、男たちを陶酔させていた。崇拝者たちは、種々の手段を講じて竜子に近づこうとしたが誰一人、彼女の気に入る者はいなかった。そんな折、竜子のかつての男たちが次々と竜子を追って現れるようになる、というストーリー。

丸山は男たちを惑わす謎の美女・竜子を演じているのだが、その存在感たるや”人外”といっても過言ではない。ビジュアルの美しさはもちろん、佇まい、雰囲気、口調、セリフ回し、所作、オーラなど全てにおいて人の域を超えており、神話や伝説の生き物のよう。まさに”竜”子だ。加えて”妖艶さ”や”魔性”を纏い、底知れぬ恐ろしさすら感じてしまうほど。芝居といういわばテクニックでは語れない領域にある、その人の持つ存在感が半端なく、そしてそれが竜子のキャラクターにピッタリとマッチしているのだ。

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『黒薔薇の館』©1969 松竹株式会社

もちろん、芝居も素晴らしい。神性なる佇まいを損なわないように細部までこだわりの詰まった言動やけっして焦らない落ち着き、動じなさなどは特筆すべき点だ。同じ場所、同じ時間の中で、大勢で芝居をする場合、どうしても周りのスピードに合わせてしまう。それが自然で当たり前であるし、一人だけスピード感が違うとちぐはぐになってしまい悪目立ちしてしまう。しかしながら、丸山は自然と竜子の周りだけ時間の進む速さが違うような動きで、”同じ場所にいるはずなのにそうは見えない”という効果をもたらす芝居を披露。特に動きに関しては、常にダンスを踊っているかのような流麗な動きで、男につかみかかられるようなシーンでは美しくいなすことで竜子の謎めいた部分を表現している。

だが、この作品での丸山の本当の”凄さ”は前述した神性ではなく、”人外が人になるさま”をしっかりと表現していることだ。

『黒薔薇の館』©1969 松竹株式会社

妖艶で謎めいた魅力で男たちを虜にする竜子だが、誰にも心を許さない。それは、彼女が”絶対の愛”を求め続ける求道者であるから。そんな中、佐光の次男・亘(田村正和)と出会った竜子は、命を投げうってでも手に入れたい”絶対の愛”を見つけてしまう。

この瞬間、丸山が演じる”人外”は”人”となり、急に生気を帯び始め、気品の高さは人間らしさへと変化する。その切り替わりによって、作品のテーマである「愛とは何か?」という答えを浮き彫りにしてくれている。この作品を通して、俳優としての美輪明宏の存在感と表現力に魅せられてみてはいかがだろうか。

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