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吉川晃司が『舞いあがれ!』で見せる“余白” 鬼教官の噂の裏に隠された大河内の想い

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『舞いあがれ!』写真提供=NHK

 「じつはあの人◯◯らしい」……人の噂話というのは怖いものだ。話に尾ひれがついて、思ってもみないところに着地する。

参考:『舞いあがれ!』吉川晃司、鬼教官の秘訣は弓馬術礼法小笠原流 「愛があるゆえの厳しさ」

 『舞いあがれ!』(NHK総合)航空学校帯広分校の教官・大河内守(吉川晃司)もまたそんな噂話の話題に挙げられた一人である。元航空自衛隊戦闘機パイロットの彼には、「帯広の雷様」「サンダー大河内」との異名があり、容赦なく学生をフェイル(退学)させてしまうとの噂が……。だが、彼の指導スタイルを見ていると、やはり所詮は、話が大きく膨らんだ“噂話”なんだなと感じた。

 岩倉舞(福原遥)、柏木弘明(目黒蓮)、水島祐樹(佐野弘樹)らのフライト訓練中、彼は厳しくも的確に指導。柏木が自らの飛行に対して自信満々の発言をした際には「最も事故を起こすパイロットの特徴は?」と問いかけ「自分を過信する人間だ」と伝えた。また、あるシーンでは「努力をしてもパイロットになれない学生はいる。私がここにいるのは、そういう学生を落とすためでもあるんだ」と語った。

 大河内は確かに威圧的で、話す言葉にも抑揚がなくてほぼ一定。喜怒哀楽を感じられないため、何を考えているのかも分からない。生徒にとって「難攻不落の城」そのものだ。だが、大河内からすれば、彼ら彼女らが、何百人もの命を預かるパイロットになるために、適切な指導をしているだけ。柏木の件も、情に流されず生徒を退学にするのも、彼自身が命の重さを分かっているからだ。誤解されやすいが、いち指導者として、一人の人間として、生徒に向き合い、成長を促す最高の教官だと思う。

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 そんな大河内を演じる吉川晃司は、ロックアーティストとしても活動。現在もオーディエンスを酔わせる彼だが、鍛え抜かれた抜群のスタイル・年齢を重ねてより魅力が増していくビジュアルも相まって、渋みのある俳優としても重宝されている。

 映画『るろうに剣心』(2012年公開)の鵜堂刃衛、ドラマ『下町ロケット』(2015・2018年/TBS系)の財前道生、『探偵・由利麟太郎』(2020年/カンテレ・フジテレビ系)の主役・由利麟太郎、『DCU』(2022年/TBS系)の成合淳など、彼が演じてきた人物は、まるで吉川のために作られたような役柄が多い。今回の大河内も、視聴者から「待ってました!」といった声が聞こえてきそうなキャラクターだ。そうして「この役は吉川にしかできない」と視聴者にも、キャスティングするスタッフにも思わせる彼なりの向き合い方で、役柄の魅力を最大限に引き出してきた。今回、「鬼教官」と恐れられている大河内を作り上げるべく、吉川はインタビューにてこう語っている。

「最初にいただいたキャラクターの設定では、話す口調ももっとワイルドだったんです。でも私の方から言葉遣いや物腰をものすごく丁寧に礼儀正しい男にしたいと提案しました」(※)

 さらに、武道をしていたという裏設定を決め、『連続ドラマW 黒書院の六兵衛』(2018年/WOWOW)で出会った「弓馬術礼法小笠原流」の所作を取り入れて威圧感を増すことに成功した。もちろん、こうした丁寧な役づくりをするのは俳優として当たり前のことだが、吉川が提案した大河内像が作品に見事にマッチしているのを見ると、彼の俳優としての“勘”の部分が優れているのだと再確認できる。

 静の中にも熱がある大河内の指導。回を重ねるごとに、彼が秘めている生徒への愛情を感じるのは私だけじゃないはず。その中で「大河内が何を考えて生徒たちに指導を行っているのか」、「彼の過去に何があったのか」といった“大河内のことをもっと知りたい”と思わせる吉川の「余白ある演技」が光るーー。

 そうして抜かりなく作り上げた役柄だからこそ、ここまで奥深い人間に昇華できたのだろう。

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