なるほど、これそまさに、入れ子構造と円環構造で書かれた『ドグラ・マグラ』という“奇書”の形が、一目でわかる秀逸なヴィジュアルであるといえよう。
また、無理矢理、魚豊と夢野久作というふたりの異才を結びつけてみれば、『チ。』も『ドグラ・マグラ』も、(「天体」と「脳内」というモチーフの違いこそあれ)“いま見えている世界に疑問を持った男たちの物語”という意味では、共鳴し合う部分がある、といえなくもない。
いずれにせよ、今回の期間限定カバーで、魚豊の存在を初めて知った夢野久作ファンがいたとしたら、ぜひ『チ。』も併せて読んでいただきたいと思う。