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『ファーストペンギン!』で見えてくる、今の日本に蔓延する“おじさん社会”の問題

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 そんな「おじさん社会」に、和佳が果敢に立ち向かっていく姿こそが本作の見どころなのだが、一方で和佳は漁協ともうまくやっていきたいと考えており、だからこそテレビ出演した際にも漁協の嫌がらせを告発しなかった。坪内知佳の原作でも、漁協から受けた嫌がらせについては書いているが、対立する関係ではないと、彼らの立場に理解を示している。

 和佳の考え方は「前向きな諦め」だと、筆者は受け止めている。それだけ「おじさん社会」としての日本は、盤石で揺るがすことのできない現実だということだが、本作が面白いのは、最終回直前で和佳とは違う立場から「おじさん社会」としての日本を揺るがそうとする元官僚のコーディネーター・波佐間成志(小西遼生)を登場させたことだ。

 食品会社「神饌オーガニクス」との間をつなぐことで、和佳たちを救った波佐間は汐ヶ崎の漁師たちをまとめて会社組織にすることを提案。和佳はその提案を受け入れるのだが、農水省の溝口静(松本若菜)から「神饌オーガニクス」は、表向きは日本企業だが、株主は外国人と外国企業で、経済的な侵略を目論んでいると聞かされる。

 そして、漁協は外国から入ってくる怪しい企業を弾く抑止力となっていたという視点が提示されるのだ。外国企業という和佳たちと漁協にとっての共通の敵を描くことで、森下佳子は「おじさん社会」としての日本をどう捉え直そうとしているのか? 最終回が楽しみだ。

(成馬零一)

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