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ハルカトミユキ、10年目の十字路に立つ。彼女たちの未来を照らし出すような一夜

DI:GA ONLINE

『ハルカトミユキ 10th Anniversary Live “十字路に立つ”』
2022年11月19日(土)渋谷PLEASURE PLEASURE

11月19日、ハルカトミユキがデビュー10周年を記念したワンマンライブ『ハルカトミユキ 10th Anniversary Live “十字路に立つ”』を渋谷PLEASURE PLEASUREで開催した。今年の元旦に事務所からの独立を発表し、新たな道を歩み始めた2人にとって、この日は10年という節目に十字路に立ち、もう一度これまでを振り返ることによって、これから先の未来を照らし出すような一夜となった。

青い照明の中、黒を基調としたハルカと、白を基調としたミユキというコントラストのはっきりした衣装の2人がステージに登場すると、この日の一曲目に選ばれたのは2枚目のEP『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』の収録曲で、ファーストアルバム『シアノタイプ』にも再録された「ドライアイス」。ハルカの愛する短歌調のタイトルを据え、サウンドはオルタナティブで、言葉の切れ味は鋭く、それでも曲調はポップというハルカトミユキの登場時のインパクトは大きく、同時期にデビューをしたきのこ帝国や赤い公園などとともに、新たな女性ボーカルのバンドの台頭に興奮を覚えたことは今でもよく覚えている。デビュー時の期待と不安の入り交じった心情を〈ああ 少しだけ未来のこと期待してしまうから/ああ できるだけ気づかれないように笑った〉と歌う「シアノタイプ」は「さとり世代」というワードとも関連して語られ、「世代の代弁者」という印象もあった。

ハルカ(Vo./Gt.) ミユキ(Key./Cho.)

そこから一転、次に演奏されたのはこの日会場限定でCDが先行リリースされた3曲入りの新作『十字路に立つ』の収録曲「恋に気付くのは」で、この曲はアコギとピアノによる軽快なアレンジと、大サビの転調が印象的なラブソング。昨年独立前ながら自分たち主導の活動スタイルへの移行期に発表したアルバム『明日は晴れるよ』は、「ラブソングと応援歌」をテーマに、ハルカトミユキが初めて「J-POP」と向き合った作品でもあり、この日演奏された「RAINY」もやはりポップス的な一曲。衝動的に曲を作っていたデビュー時から、ある種職人的にポップスを手掛けられるようになったことは、この10年の変化だと言える。

ここで一旦ステージ上にハルカトミユキの2人だけが残り、オーディエンスを座らせ、ミユキのピアノのみで歌われたのは〈青いままの春 今も続いてる〉と歌う「宝物」。この曲を2人きりで披露することには大きな意味があるし、個人的にハンドマイクで歌うときのハルカの歌の表情や表現力にはとても惹かれることもあって、序盤のハイライトだったと思う。バンドメンバーを交えて披露された新曲のピアノバラード「アイリス」もとてもよかった。

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MCではミユキが「この10年は正直苦しい思い出や辛かった時期もあるけど、そういうときに作った曲も今では浄化された」と話したが、3rd EP『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』の制作は非常に困難だったことを、2人は過去のインタビューで明かしている。〈ねえ、君は知ってる?/世界はもうすぐに終わるってこと。〉という歌い出しで始まる「その日が来たら」はそんな時期を象徴する一曲だと言えるが、その次に演奏された「奇跡を祈ることはもうしない」も含め、こういった重厚でヘヴィな曲も今では彼女たちの大きな魅力になっている。さらには、ここから再びオーディエンスを立たせると、「プラスチック・メトロ」、「近眼のゾンビ」と攻撃的な曲を立て続けに披露し、中でも「ニュートンの林檎」はバンドの演奏も含めて圧巻。2019年に発表したベストアルバムで「Madness」というサブタイトルのDISC2に収録されていた、こういったマッドな曲もやはりハルカトミユキの真骨頂だ。

ミユキ作曲による80’sポップスの傑作「インスタントラブ」、初のアニメ主題歌としてリスナーの幅を広げた「17才」、ハルカトミユキの始まりの一曲である「Vanilla」と様々な曲を披露していき、次に披露されたのは「LIFE2」。2015年に開催された日比谷野音でのフリーライブ「ひとり×3000」のラストで初披露された「LIFE」に、その後加筆して完成された一曲だ。ハルカトミユキの10年の歴史を振り返ったときに、3度の野音ワンマンは無視することができず、特に12ヶ月連続リリースを行いながらフリーライブとして開催した一度目の野音は、自分たちでも制御できていない状況に必死に食らいつこうとするようなライブだったことをよく覚えている。あの時期も彼女たちにとっては辛い時期だったかもしれないが、そんな中だったからこそ生まれた大事な曲があるのもまた事実で、それが「LIFE」であり、その次に演奏した「肯定する」もそうだろう。〈肯定するよ 生きてく君の全てを〉〈誰にも君を裁かせるなよ 君にしかできない君を〉と歌うこの曲は、自分で自分のことを肯定し、「生きる」ということを実感するための一曲だ。

途中のMCでハルカは「今までここより大きい会場でライブをした経験は何度もあるけど、自分たちの力でそこを満員にできた実感が正直ずっとなかった」と話し、「今日この会場をソールドアウトできたことは、私たちにとって当たり前じゃない」と、オーディエンスへの感謝を伝えた。そう、この「実感」こそが、今多くの人々が求めていることのはず。それはこのコロナ禍の3年弱でライブができない時期があったり、できても未だに声を出せないことも関係があるだろうし、あらゆる分野のデジタル化/リモート化が進んだことも大いに関係があるだろう。そして、画面を通して入ってくる知らない誰かの表面的な幸福と自分自身を比較して、自分のことが嫌いになり、落ち込んでしまうこともあるかもしれない。

そんな中で大事なのが「実感」であり、ハルカトミユキは事務所から独立したこの一年弱で多くの人のサポートを実感し、変わらずついてきてくれるファンの存在を実感し、この日のソールドアウトという結果を受けて、自分のことを以前よりも肯定できるようになったのだと思う。だからこそ、それを気づかせてくれたオーディエンスに対しても、その重要性を伝えたいと思ったのではないか。とにかく必死さが伝わってきた一度目の野音以降、3年連続で行われた公演では一年ごとにたくましさを増していったのも印象に残っているが、その時期もまだ「実感」は薄かったのかもしれない。それでも、2016年と2017年の野音でともに一曲目を飾っていた「世界」がこの日の本編ラストに演奏され、ハルカトミユキの2人とオーディエンスがお互いを肯定し合うような、祝福のエンドロールに変わっていたのは、とても感動的だった。

アンコールでは「ここからさらに進むためには、今まで以上の覚悟が要る。そんなつもりで、このタイトルを付けた」という新曲の「十字路に立つ」を初披露。心の内をさらけ出し、恥ずかしさも惨めさも赤裸々に歌詞に詰め込んだ上で、〈本気で生きるなら 戦うと決めたなら 惨めなくらい孤独で当たり前だ〉〈誰かじゃないんだ 自分のためにやるんだ〉と歌うこの曲は、デビューから10年を経た今だからこそ説得力を持って歌える一曲。醒めた視線で世界を斜めから見つめるハルカトミユキはもういない。10年目の十字路には、自分を肯定することに希望を見出そうとするハルカトミユキが、凛とした眼差しで立っていた。

SET LIST

01.ドライアイス
02.マネキン
03.ヨーグルトホリック
04.シアノタイプ
05.恋に気付くのは
06.RAINY
07.宝物
08.アイリス
09.その日がきたら
10.奇跡を祈ることはもうしない
11.プラスチック・メトロ
12.近眼のゾンビ
13.ニュートンの林檎
14.インスタントラブ
15.17才
16.Vanilla
17.LIFE2
18.肯定する
19.世界

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