“もしも”を考えてもキリがないけれど、そうした小さな掛け違いから人は逃げなくてはならない状況に陥っていくもの。栄治は、良介がやめると言うのがもう少し後だったら、自分がやめていたはずだったと涙ながらに話す。結果として今こうしてステージに立っているのは自分だけれど、良介と入れ替わっていた未来も十分にありえたと。そして、やめそこねた自分が今、8LOOMのためにできることは、勉強してその知力を武器にすることではないかと。
有起哉の100は心の底から本気だ。「俺から8LOOMとったら何も残んねぇからさ」と仲間を思ってボロボロとあふれる涙が、1人先走ってしまったダサい自分を悔いるように奥歯を噛みしめる頬の筋肉が、そして本音を語りながら震える口元が、その本気度を物語る。そんな純度の高い熱意が伝わってくるからこそ、良介もメールの返信をしたのだろうし、栄治も「実はやめたかった」という弱さを告白することができたのだろう。
有起哉のようにぶつかっていくことは、弾の言うようにエネルギーのいることで、それこそ少しでもブレるところがあればみんな不幸になってしまう結果になる場合もある。だからこそ、それをやってのける有起哉の熱さは間違いなく8LOOMの武器といえる。そして、再び笑い合えている8LOOMと良介の姿に、長い人生において振り返りたくないほどの“逃げてきた場所”ができたとしても、いつかどこかで誰かの熱い思いに救われる可能性があってほしいと願いたくなった。
それは、あす花にも同様だ。良介と共に“逃げてきた場所”である高校へと向かったあす花。しかし、心の傷はまだまだ癒えていなかったようで、立っていることも苦しくなってしまう。果たして、ここで一体何があったのか。次回、ついに明らかになるあす花の過去に注目だ。(佐藤結衣)