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『舞いあがれ!』赤楚衛二が紡ぐ言葉が桑原亮子脚本の肝に 舞と貴司の対比を考える

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『舞いあがれ!』写真提供=NHK

 NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』を観ていると、人生は失敗と挑戦の繰り返しだということをつくづく実感させられる。そして、失敗を恐れず、自分の意志を貫くことこそが肝要なのだということを。

参考:『舞いあがれ!』福原遥と目黒蓮に早くも恋の予感? 正反対の舞と柏木に見えた共通点

 福原遥演じるヒロイン・舞は、真っ直ぐすぎるほど真っ直ぐに、脇目もふらず一心に「空を飛ぶ」ことを夢見続ける。まるで、初回冒頭で描かれた、幼少期の舞(浅田芭路)が見た、未来の自分(福原遥)が操縦する旅客機に家族で乗っている夢の光景に突き動かされ続けているかのように。

 そして彼女は、オープニングのアニメーションそのままに、久留美(大野さき)、貴司(斎藤絢永)との友情を繋いだ紙飛行機から始まり、五島列島で「ばらもん凧」と出会い、模型飛行機を作り、大学での人力飛行機サークルでのパイロット経験を経て、「旅客機のパイロットになりたい」と航空学校を志すに至った。第7週で描かれた世代を越えた2人の娘による大学中退宣言を巡る2人の母親、めぐみ(永作博美)と祥子(高畑淳子)の、反対せずにはいられない思いは、娘を心配する母親の立場として全くもって当然のことである。だが、その思いを拒んでもなお、意志を貫くことの大切さを、本作は伝えているのだろう。

 それぞれが、こうと決めた人生をしっかり生きさえすれば、めぐみと祥子のように、その時は袂を分かったとしても、やがては互いを認め合い、成熟した人間同士、理想の関係を築くことができる。方向性は異なるが、それぞれの夢を持ち、目標に向かって邁進する父・浩太(高橋克典)、兄・悠人(横山裕)、妹・舞、そして彼らを見守る母・めぐみの、完全には分かり合えないながらもそれぞれの意志を尊重しようとする家族の在り方は、観ていて心地がよい。

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 だがその一方で、ヒロイン・舞が空高く「舞いあがる」眩しいぐらい澄み切った快晴の空だけでなく、ちょっと風変わりな「寂しくてきれい」な景色をも見せてくれるのが、本作の大きな魅力ではないだろうか。赤楚衛二演じる梅津貴司が見る景色のことである。

「生きていくゆうのはな、大勢で船に乗って旅するようなもんや。みんなが船の上でパーティーしてる時、おっちゃんは、息苦しなる。それで、冷たい海飛び込んで、底へ底へ潜っていって、そこに咲いてる花必死で掴み取って、船の上へ戻ってくる。そしたらしばらく息できんねん。その花が、詩や」

 第13話において、古本屋「デラシネ」の主人・八木(又吉直樹)が、貴司に言った言葉だ。八木の詩集に共鳴し、そこに「寂しくてきれい」な光景を見た貴司もまた、同じ気持ちだったのだろう。「その“普通”が僕には難しい」貴司という存在のあるがままの肯定。さらに、詩や短歌という形で、彼が心の奥底からポツリポツリと紡ぎ出す言葉に、思わず耳を傾けずにはいられない本作の構造こそが、「人一倍繊細な」少女・舞の心の機微を約3週分かけて丁寧に描いてきた桑原亮子脚本(桑原をメインに、嶋田うれ葉、佃良太が脚本を担当している)の良さを言及する上で、最も肝となる部分なのではないだろうか。

 舞が「空を飛ぶことができる」人なら、貴司は「その空を見つめる」人だ。第3週で、久留美と舞が模型飛行機を空に飛ばそうとソワソワしている時、彼は「空、きれいやなあ」とただ見つめていた。人力飛行機で大空を飛んで、その魅力に取りつかれた舞は、第28話で果てしなく広い琵琶湖の夕焼け空を見る。一方の貴司は、第33話において五島列島の大瀬埼灯台の夕焼け空を見に行く。そしてその美しさを、3日かけて言語化することで、自分自身を取り戻していく。

 貴司と幼い頃の舞は似ている。「舞は人ん気持ちば考えられる子たい、じゃばってん自分の気持ちも大事にせんば」という、第9話の舞に向けた祥子の言葉は、そのまま、「人に合わせて自分のほんまの気持ち、心の奥にしまい込んで、自分が何やりたいんか、何好きなんか、わからんようになった」今の貴司にも届けたい言葉である。奇しくも同じ「五島列島の絵葉書」が呼び水となって、幼い舞は五島列島に行くことになり、祥子と出会い、原因不明の発熱を乗り越え、「変わる」ことができた。だから彼も、自分も変われるかと思い、舞からもらった「五島列島の絵葉書」を頼りに、島を訪ねた。でも、そこで祥子からもらったのは「自分の言葉知っちょる人間が一番強かけん。変わりもんは変わりもんで堂々と生きたらよか」という、彼自身を肯定する言葉だった。「変わらなくてもいい」という答えだった。                                                                                                 

「失敗ばすっとは悪かことじゃなか」

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