ヒーローの喪失を乗り越える
自分のライター人生の中で、初めて涙目で試写室を後にしました。自然と涙と熱いものがこみあげてくる……それが『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でした。
もちろん、これまでも『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)等、心動かされるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品はありました。しかし今回の涙は、それともちょっと違う。そう、チャドウィック・ボーズマンさんのことです。
我々の友で、インスピレーションであり、永遠の王であるチャドウィック・ボーズマンに心より敬意と哀悼の意を表します。 pic.twitter.com/FwXbGSeCVr
— マーベル・スタジオ[公式] (@MarvelStudios_J) August 28, 2021
いや、正確に言えばボーズマンさんへの涙というよりも、彼の死という哀しすぎる現実を受け入れ、乗り越え、この素晴らしい作品を作り上げたスタッフ&キャストへの気持ちだったかもしれません。
ティ・チャラ亡きワカンダを海の超人ネイモアが襲う!
『ワカンダ・フォーエバー』は、チャドウィック・ボーズマンさんが演じていたティ・チャラことブラックパンサーが突然この世を去り、残された者たちとワカンダの運命を描きます。
マーベルはティ・チャラに対し代役もCG等で蘇らせることもしない、と明言していました。したがってボーズマンさんの死去が、そのまま映画のティ・チャラの逝去と重なるという映画になっています。ただし(ここ言葉選びが難しいですが)、決してボーズマンさんの死を“利用した”映画にはなってはいません。主演俳優の不在と主人公の不在という事情を踏まえながら、堂々たる続編に仕上がっているのです。
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ティ・チャラという強いリーダーと守護神を失ったワカンダ国。これを機会とばかりに貴重資源ヴィブラ二ウムをめぐって様々な国家が干渉してきます。さらに海からネイモアという超人が率いる海底王国タロカンがワカンダに迫ってきます。
事態は複雑化し、ついにワカンダとタロカンの間に戦争が!? ――国家存亡の危機、その時ティ・チャラの母で女王のラモンダ、ティ・チャラの妹で王女シュリのとった行動とは……?『ワカンダ・フォーエバー』は、運命に翻弄される母と娘のストーリーなのです。