すでに絶滅してしまった生物たちの生きている姿は、決して実際に見ることはできません。
では、絶滅した古生物の生態や色はどうやって調べているのでしょうか。ここまで解説してきたように、古生物学ではおもに化石の形と、年代、成分、ほかの産出物など、その化石が掘り出された地層の情報を手がかりにして、どのようなグループに属する生物だったのかを推定しています。
生態はどうでしょう。生物の生態とは、その生物が自然環境のもとで生活している様子を指す言葉です。ですから、古生物の生態を知る手がかりは、化石の形だけでなく、その古生物の種が生きていた環境を復元することだといえます。
環境については、海か、陸かがまず手がかりになります。また、現在では各地層年代における気象環境がかなりわかっているので、これも重要です。
古生物種がもつ性質や特徴については、現在この地球に生きている生物を参考にします。共通の祖先をもつ生物や、同じグループに属し、似かよった環境に暮らす現生生物の生態から、古生物の振る舞いを推察します。
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古生物の色については、最近大きな進展がありました。メラニン色素と関わりのあるメラノソームという構造が、羽毛が残るほど保存状態のよい化石に残っていることがわかったのです。
電子顕微鏡でその形や密度を調べることで、皮膚の色が推察できるようになり、約10種類の恐竜の色がわかりました。
もちろん、これらは仮説に過ぎません。しかし、仮説をひとつずつ積み上げ、矛盾点を議論し、修正し続けることで、絶滅した古生物たちの姿はより鮮やかにわかるようになるのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。