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慶大のV阻止へ早慶戦でサヨナラ勝利を飾った早大 必死に汗を流せば神宮で活躍できる土壌

週刊ベースボールONLINE

早慶戦は「別もの」



早大・松木大芽は慶大1回戦[11月5日]で1点を追う9回裏二死満塁から逆転サヨナラ打。4年生の意地を見せた

 早大は待つ身であった。第6週を終えて6勝2敗、勝ち点3。慶大は同時点で8勝3敗、勝ち点4。第8週で明大が立大に連勝し、9勝2敗、勝ち点4とした。早大は第9週の早慶戦で連勝しても、明大に勝率で及ばず、リーグ制覇の可能性が消滅した。

 小宮山悟監督は言う。

「優勝がなくなった。ややもすると、気持ちが切れる1週間を過ごさないといけなかったんですけど、春負けているので(慶大に2連敗。チームは5位)、何が何でも意地を見せるという練習をしてくれた」

 早慶戦は「別もの」。神宮の杜はいつの時代になっても、伝統一戦への情熱は変わらない。2万2000人の観衆で埋まった慶大1回戦(11月5日)。慶大は勝ち点(2勝先勝)を奪えば優勝という状況で、早大はV阻止へと全力で立ち向かった。

 早大は3点リードの8回表に追いつかれ、9回表にはソロで勝ち越されるも、9回裏の驚異の粘り。二死満塁から松木大芽(4年・金沢泉丘高)が、1ボール2ストライクと追い込まれながらも、慶大のリリーフエース・橋本達弥(4年・長田高)の変化球をしぶとく右前に運ぶ逆転サヨナラ打を放った(5対4)。

「何とか、執念で打てた」

 松木は開幕から2カードは、ベンチを温める時間が多かった。だが、準備を怠らず、東大との3カード目から先発に定着。規定打席不足ながら20打数9安打、打率.450と二番打者として打線を活気づけている。

一般入試で早大へ


 練習の虫だ。

 今夏の新潟・南魚沼キャンプでも、一心不乱にバットを振っていた光景が目に浮かぶ。

 松木は金沢泉丘高では3年夏、石川大会1回戦(対鵬学園高)で敗退した。松木は四番・一塁で出場して4打数1安打。投手として救援したが、力を出し切れなかった。

「大学でも頑張りたい、と思った試合。中学時代からテレビ中継を見ていた早慶戦にあこがれがあり、早稲田を志望しました」

 夏休みから猛勉強を開始し、一般入試(現役)でスポーツ科学部に合格した。1年時は練習補助が中心の下積み生活。だが、手伝いの中でも外野でアピールを続け2年春の東大1回戦、守備固めとしてリーグ戦デビューを飾った。3年春、秋も各1試合、守備のみの出場。迎えた今春、明大3回戦でリーグ戦初安打を記録し、11試合に出場した。「一般とか、スポーツ推薦とか関係なく、実力で評価される世界。入ってしまえば土俵は一緒です」。松木は不屈の精神で自らのポジションをつかんだ。

大学卒業後は野球から離れる


 松木が殊勲打を放った慶大1回戦は、西武からドラフト1位指名を受けた蛭間拓哉(4年・浦和学院高)が中越え2ランなど3安打の活躍。早大の4年生は卒業後もプロ、社会人で野球を継続する学生、一般就職する学生に分かれる。松木も大学卒業後は野球から離れる。小宮山監督は、父親のような顔で言った。

「競技を続ける者、続けない者が同じ熱量で慶應と戦える幸せ。大学卒業後、彼らが昔話として、思い出の1ページを自分たちで作り上げられたのは良かった」

 早大は高校時代に甲子園などで実績があるスポーツ推薦組がレギュラーの中心だが、松木のようにコツコツと努力を積み上げた選手が花開くケースも多々ある。早大学院高出身の2年生・山縣秀はこの秋、鉄壁の守備力を武器に遊撃の定位置を手にし、慶大1回戦の9回裏には好機を広げる絶妙なプッシュバントを決めている。また、3年生右腕・加藤孝太郎は下妻一高から指定校推薦で入学し、今春から主戦となると春はリーグ2位の防御率1.67、今秋も慶大1回戦を終えて防御率1.41でトップに立っている。

 小宮山監督は今年1年間、空位となっていた早大のエース番号「11」を、来春には加藤に託したい意向を持っている。

「いろいろな巡り合わせもあるかと思いますが、加藤はチャンスをつかんで、それをものにして、一人前になった。ほかの学生たち、高校生にも良い影響があるのかと思います」

 小宮山監督自身も早稲田にあこがれ、芝浦工大柏高から2年の浪人を経て入学。4年間、猛練習を重ねて、ドラフト1位指名を受けた。早大には誰よりも必死に汗を流せば、神宮で活躍できる土壌がある。伝統の早慶戦でプレーするというモチベーション。いつの時代も学生たちのマインドは変わらない。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
 
   

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